ハート・オブ・ダウントロッデン・ソウルズ ＃４

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

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【ハート・オブ・ダウントロッデン・ソウルズ】#4

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錆びたフェンスのゲートをスーサイドは蹴り開け、ぬかるみの中に踏み入った。その表情は険しい。ここはフジミ・ストリート外れのスクラップ場。廃車や廃モーターヤブ、安心できないマークがラベルされたドラム缶などがそこかしこに。不快そうに咳き込み、バンダナで口元を覆って進んでゆく。　1

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ニンジャであろうと、こんな場所に長く滞在すれば不調を来たし、最悪死ぬ。だからこそ……「連中」は潜伏地点に選んだのだ。ある意味でそれはスーサイドの警戒の不行き届きともいえる。いや、サイオー・ホースとも言えようか。ここを拠点にソウカイ・シンジケートがシトカに陣を張ろうというのなら。2

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「アッテメッコラー？」「不法侵入許さんぞオラー！」ネオサイタマ・アクセントのヤクザスラングと共に、歩哨ヤクザが銃口を向ける。「どっちが不法侵入だ」スーサイドは無慈悲に片手をかざす。「「アバーッ！」」ナムアミダブツ！白いコロイド光が彼らの命を吸い取る！「ッたくクソが」　3

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無惨なクローンヤクザを踏み越え、スーサイドはぬかるみの先、廃ガレージに踏み入った。高い天井の下、蛍光ブルーの光で照らされるその空間には、数機の廃モータードクロ。床には太いパイプが這い、奥に不穏な代物と、パイプ椅子に規則正しく座ったクローンヤクザ達の姿があった。　　4

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「アッ？」「ダッテメッ」クローンヤクザ達が一斉に立ち上がり、身構えた。「イヤーッ！」それとは別方向、モータードクロの陰から回転ジャンプでアンブッシュを仕掛けてきたニンジャあり！スーサイドは側転で回避し、アイサツで返す！「ドーモ。スーサイドです」「……ドーモ。イルストーンです」　5

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「フジミの住人の許可なく、ここで何してやがる」スーサイドは言った。「アタマ呼んで来い」「ヴァニティ＝サンらは忙しく働いておられる。過冬とのイクサだ！」イルストーンは見下すように言った。「まったく田舎ヤクザめ。さっきの抗争で多少存在感を見せた程度で調子に乗るな……！」　6

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「イヤーッ！」「グワーッ！」ノーモーション接近からの頭突きがイルストーンの額を割った。「オジギが強すぎたか？ア？」スーサイドはイルストーンの首を掴み、持ち上げた。「グワーッ！」もがくイルストーン！「ザッケンナコラー！」「ヤッテミンゾー！」チャカを向けるクローンヤクザ！　7

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「イヤーッ！」スーサイドはイルストーンをそちらへ投げつけた。KRAAASH！「「グワーッ！」」パイプ椅子とクローンヤクザを巻き添えに倒れるイルストーン！「テメェじゃ話にならねえな。シックスゲイツを連れて来い」「何か用か」入り口方向から声。スーサイドは振り返る。逆光のニンジャが一人。　8

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「面倒くせェなあ」スーサイドは踵を返し、逆光者に向かって歩いた。着流し姿のサイバネ・ニンジャがアイサツした。「ドーモ。シガーカッターです」「スーサイドです」二者は名刺を交換した。「さっきの助太刀ありがたく思えよ。だが早速俺は気に入らねえ。ここはフジミだ。アジト遊びは他所でやれ」9

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「フン」シガーカッターは名刺ケースに名刺を納め、不敵に目を細めた。「ちょうど話も早かろう。フジミ・ストリート。ソウカイヤに今後恭順するならば、この地の安全は……」「俺は誰にも尻尾は振らねえ。そういうのは飽きたんでな」スーサイドはしかめ面で睨んだ。「お願いするのはテメェらだ」　10

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「威勢がよいな」「これでもそこそこ年季は入ってンだよ」スーサイドは睨み顔を近づける。シガーカッターも怯まない。やがてスーサイドは顔を近づけたまま言った。「望みを言え。お願いして見ろ」「交渉か。いい度胸だ」「あのまま過冬に多勢に無勢で圧し潰されても楽しかったろうな？」　11

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「恩を着せるか」「決まってら」と、スーサイド。「ここでお前らに居場所はねえんだよ、ソウカイヤ。ここで過冬と戦っていくなら、フジミに仁義を切れ。お前らラッキーだぜ。俺も過冬の事は潰すつもりでな」「……」「オトウサンに確認しに戻る必要アリか？シックスゲイツ＝サン」挑発を重ねる！　12

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「成る程、中々だ」シガーカッターは既に親指をカタナの柄にかけている。だがイアイで襲いはしなかった。「よかろう。もとより我々の敵は貴様ではない。だが立ち退きはせん。海賊ポータルの構築はUNIXの引っ越しのようにはいかんからな」「……」「その上で、条件を言え」「ストリートに敬意を払え」13

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「敬意？」「ここでポータルを動かし続けるなら、フジミに過冬の兵隊を近づけるな。尽力しろ。それがテメェらの義務で、俺らにとっての恩でも何でもねえ。ここはソウカイヤの植民地じゃねえし、俺は貴様らと盃もかわさねえ。……条件は以上」「よかろう」シガーカッターはカタナから手を離した。　14

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「ア？いいのか？」スーサイドは訊き返した。多少、拳でものを言わせることを期待していたようでもあった。だがシガーカッターはシンプルに頷いた。「お前はなかなか悪くない。俺がそう思ったのだからそれでいい。ボスが四の五の言ってくるなら、俺がケジメすればいいだけの話だ」「ハ！」　15

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もとよりラオモト・チバは現地支配を目的としてはいない。短期的な足掛かりが確保できるならば、それでよい。そして、どちらにせよ、その足掛かりとなる地域の防衛は必要となる。ならば同意に躊躇は要らない。シガーカッターは合理的に判断したのだ。スーサイドは満足し、その場を去ろうと……。　16

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ZMZMZMZM……ZANKZANKZANKZANK。耳障りなノイズを発したのは、奥にある剥き出しのポータル施設だった。蛍光ブルーの光が明滅し、0と1のノイズ・パーティクルが周辺に生じ始めた。クローンヤクザが戦闘隊形で待機。イルストーンはカラテを構え、シガーカッターに目配せする。「……」　17

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011……01011……「と！とと、と、と！」現出したのは、前のめりによろめくダスターコート姿の女だった。「ヤクザじゃねえな！？」イルストーンは叫び、クローンヤクザに指示した。「カマエ！」「ザッケンナコラー！」「スッゾオラー！」「ドカマテッパダラー！」女は目を白黒させた。「あ、マズ！」18

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「ゲーッ！」カラスの鳴き声！そして、BLAM！先走ったクローンヤクザの銃撃は逸れ、廃モータードクロの頭部装甲を撥ねた。ブーメランめいて低く飛翔したカラスがクローンヤクザの指先を破壊したのである。「グワーッ！」「最悪……！」女は呟いた。「でも、そりゃその可能性も充分あるッスよね」　19

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女の肩には手が置かれていた。ZMZMZMZMZANKZANKZANK。一呼吸も置かず、その全身があっという間に具現化した。黒橙の装束を着たニンジャが女の傍らに立っていた。そのメンポには決断的書体で「殺」「伐」の漢字が刻まれている。「……」ニンジャはソウカイヤのニンジャとクローンヤクザを見渡した。　20

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「ドーモ。サツバツナイトです」黒橙のニンジャは一同にアイサツした。「急ぎの用ゆえ、オヌシらのポータルを拝借した」　21

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「ザッケンナコラー！」「スッゾオラー！」BLAM！BLAM！BLAM！BLAM！クローンヤクザが一斉にチャカを発射！だが！「イヤーッ！」中腰姿勢を取ったサツバツナイトが橙色の軌跡を描く得物を奮うと、銃弾はあべこべの方向へ弾かれ、無力化された！その手には……ゴウランガ！神秘的なヌンチャクがある！22

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「イヤーッ！」イルストーンが襲いかかる！サツバツナイトはその目をギラリと輝かせた。「イヤーッ！」ヌンチャク一閃！チョップ手を弾き、顎に一撃加える！「グワーッ！」怯み、後ずさるイルストーン！「待てい！」一喝したのはシガーカッター。サツバツナイトを既にイアイの間合い内に捉えている！23