日向倶楽部世界旅行編第47話「My story mystery」

夜のブルネイ泊地、満月が照らす中、二つの人影が対峙する。
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三隈グループ @Mikuma_company

やがて軽く世間話などをすると、三人は会計に向かった。 「我輩が出しておこう、先に出ていて良いぞ」 「えっ、それはちょっと…」 最上達は戸惑うが、利根は長財布からカードを取り出す。 「何、気にするでない。旅というのは金のかかるものであろう」 「うーん…」

2018-05-15 22:01:51
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彼女は既に会計の用意を整えている、ここまで来ると断ったら逆に悪いと思い、最上達は外に出た。 「ラッキーね、こんな事ならもっと食べちゃえば良かったわ。」 「初霜…」 にんまりしてあんまりな事を言う初霜の頭を、最上は苦笑いしながら撫でた。

2018-05-15 22:02:38
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とその時、すぐ近くで怒鳴り声が聞こえた 「ッゾゴルァァッ!」 「ンノカノヤローッ!」 それは野太い男女の声、最上達は声のした方を見る。 「昼間から喧嘩なんてヒマそうだなぁ」 「ねえねえ、見に行ってみましょうよ」 呆れる最上の手を引き、初霜は喧嘩の方へ向かう。

2018-05-15 22:03:44
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すると案の定喧嘩があった。 「てめえ此の期に及んでまだ楯突く気か!」 片方は大柄な男 「るせえよクソボケ!」 もう片方は同じく大柄な女だ。 「痴情のもつれかな?」 「見た目はお似合いのカップルじゃない?」 「人相の悪さは似てるね」 かなり近くで見物しつつ、二人は言いたい放題。

2018-05-15 22:04:41
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そこへ、上村を出た利根がやってきた 「どうした?」 「あっ利根さん、喧嘩ですよ喧嘩」 「なんと迷惑な…」 利根が顔をしかめると、一際大きな怒号が響く 「俺ァ艦娘だぞテメェ!」 「こっちもそうじゃアホンダラ!忘れたか!」 衝撃の事実、なんと彼等は艦娘らしい。

2018-05-15 22:05:39
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無論、最上達もちょっと驚く 「あれ艦娘なんだ、名前が身内と同じだったらイヤだなぁ」 「海外だと男でもカンムスってなるらしいけど、本当にいるのね…」 二人はやっぱり言いたい放題、そんな事を話していると、なんと利根が喧嘩の方へ歩いて行った!

2018-05-15 22:06:40
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「利根さん?何するんだろう」 「コテンパンにしちゃうのかしら?」 二人は利根の背中を見ながら話す。最上も初霜も利根の強さは知っている、彼女の並外れた徒手空拳は、互いに艤装をつけてる方がまだ勝ち目を感じられるものだ。陸のチンピラ風情では、相手にもならないだろう。

2018-05-15 22:07:47
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二人が見守っていると、利根は喧嘩に割って入る 「やめんか、白昼に艦娘がみっともない」 「あ…?」 その言葉に、睨み合っていた二人は彼女を見下ろす。利根は彼等よりふた回りほど小さかった、故に彼等は、彼女を侮って罵る 「なんだお前…今取り込み中なんだよ」 「すっこんでなクソガキ」

2018-05-15 22:08:46
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汚い罵倒とうるさい怒鳴り声、だが利根は鼻で笑う 「フン、お主らの様な狼藉者を放っておくのは、同じ艦娘として恥ずかしいのでな。喧嘩ならせめて別のところでやるが良い。」 それは穏便な提案、しかし! 「艦娘か、小せえガキ…駆逐艦娘か?」 艦娘という言葉に反応し、彼等は突っかかる!

2018-05-15 22:09:52
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そして女の方が、利根に蹴りかかった! 「雑魚艦娘がナマ言ってんじゃねえ!」 キック!が!空振り!利根が僅かな動きで避けたのだ! 「威勢の割に遅い動きじゃな」 「んだと…!?」 女は激昂!今度は殴りかかる!しかし利根、これも最低限の動きで回避!殴る!回避!殴る!回避!エンドレス!

2018-05-15 22:11:04
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やがて女は息切れする 「て、テメェ…」 対する利根は汗の一滴もない 「無駄な動きばかりする拳じゃ、振りは大振りなのに勢いがついておらぬ、基礎体力の足りぬ証拠じゃ。」 それどころか怒る女に対し、まるで添削するかの様なコメント!これには頭血した喧嘩者達も、力量差を悟らざるを得ない!

2018-05-15 22:12:21
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「…クソッ、行くぞ!」 「誰だか知らねえが、海で会ったら叩きのめしてやるからな!」 喧嘩者達は捨て台詞を吐くと、すごすごとその場を去って行った… 「フン…艦娘もピンキリじゃな、あんなのでもなれるとは。」 去って行く彼等の背中を、利根は侮蔑の眼差しで見送った。

2018-05-15 22:13:47
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そんな背中を見送る彼女の背中を、最上達は感心して見ていた 「手を出さずに追い払っちゃった」 「すごいわね」 そう、彼等の物騒な予想とは裏腹に、利根は指一本出さずに喧嘩を収めたのだ! 二人、というより初霜は激しい殴る蹴るを期待していた為、感心しつつも少し残念がった。

2018-05-15 22:14:54
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そこへ利根は振り返り、最上達へ言った 「…お主らは、あんなのにならぬようにな。」 彼女の短いが気迫のある言葉に、最上達は気圧されるように頷く。それを見ると、利根は穏やかに微笑んだ。 「ま、要らぬ心配じゃろうな、フフッ」 そう言うと、彼女は身を翻す。

2018-05-15 22:16:29
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「さて、我輩は泊地へ戻る。お主らとはまた、夜の立食会で会うじゃろう」 「立食会?」 何ですかそれな最上に、利根は眉をハの字にする 「なんじゃ聞いておらんのか…昨日の懇親会だかなんだか、とにかくパーティじゃ。那智大佐なども来る故、顔を出すと良い。」 「なるほど…分かりました」

2018-05-15 22:17:35
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最上達の返答を聞くと、利根は深く頷いた 「うむ、ではまた後ほどな」 彼女はそう言い残すと、腰布を靡かせながら立ち去った。 その背中は小柄であり、決して迫力のあるものではなかったが、実力を知る最上達には、それがむしろ恐ろしく思えた。

2018-05-15 22:18:44
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やがて彼女の背中が見えなくなった頃、最上は呟く。 「…ボクが誰と出るにせよ、あの人は強敵になるんだろうな…」 かつての勝利は最早意味を成さぬことを、最上は既に理解していた。再び現れた強敵を前に、最上の脳裏を激闘のビジョンがよぎった。 第47話 「My story mystery」 おしまい

2018-05-15 22:20:59
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【那智戦闘大隊】 那智大佐率いる戦闘大隊、横須賀鎮守府の中核を担う。 個々の実力そのものは平坦だが、戦略と戦術、そして数を駆使した連携主体の戦いを得意とする。

2018-05-15 22:23:00
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【横須賀鎮守府親衛隊】 親衛隊長利根率いる、横須賀鎮守府の近衛部隊。 同じく横須賀所属の那智戦闘大隊に比べ規模は小さいが、頭一つ抜けた実力を持つ精鋭で構成されており、数と連携の戦闘大隊とは真逆の特徴を持つ。

2018-05-15 22:24:05
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【親衛隊長利根】 横須賀鎮守府親衛隊の隊長を務める航空巡洋艦娘、妹に同じく親衛隊の筑摩を持つ。古風な喋りや小柄な体格は一見道化だが、その実力は極めて高く、達人的徒手空拳、優れた晴嵐の波紋等により、肩書き相応かそれ以上の力を持っている。 しかし、彼女の持つ本当の強さはそれらではない。 pic.twitter.com/tjFid1M0Z0

2018-05-15 22:25:46
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