日向倶楽部世界旅行編第47話「My story mystery」

夜のブルネイ泊地、満月が照らす中、二つの人影が対峙する。
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三隈グループ @Mikuma_company

ちなみに他のメンバーは、三隈は大会の事で用事が、あきつ丸は自主訓練、足柄は艤装の調整、金剛は部屋でゆったり等、各々やる事があった。 「んー…ふぁぁ!ゲームボーイアドバンス…」 なお、日向は昼過ぎになっても寝ていた為、置いて来た。 よって、二人で焼肉屋だ。

2018-05-15 21:33:03
三隈グループ @Mikuma_company

(そういや初霜の事、扶桑さんに言ってねえな…昨日の夜あの人どっか行っちゃってたし、日向さんアレだし、いつ言うかな…) と、最上がぼんやり歩いていると、初霜の大きな声が聞こえた。 「どうしたの初霜」 「むぅぅ…」 初霜は眉間にシワを寄せ、店の方を指差している、最上はそこをよく見た。

2018-05-15 21:34:07
三隈グループ @Mikuma_company

そこには五文字が 「本日定休日…」 あー…と最上が横に目を向けると、初霜が心底口惜しそうに扉を見ていた。 「う、うん…どうする?」 「むぅ……」 突然消えた昼食、二人とも朝ごはんは食べていないのでお腹は減っている、皆さんも一度は経験した事はあるであろう困った事態に、二人は陥った。

2018-05-15 21:35:10
三隈グループ @Mikuma_company

困ったなぁな状況、すると初霜が少し先を指差した。 「あっ、上村あるじゃない!」 上村とは、名店蕎麦屋上村グループの蕎麦屋である。 「上村なら美味しいけど、蕎麦で良いのかい」 「肉食べられないなら蕎麦でもなんでも同じよ、行きましょっ」 初霜はそう言って最上の手を引き、店へ向かった…

2018-05-15 21:36:28
三隈グループ @Mikuma_company

やって来た蕎麦屋「上村」 ランチタイム故、店内はブルネイ泊地で働く人々などで賑わっていた。 「いらっしゃいませー、少々お待ち下さいー」 片付けに少々時間がかかる為、二人は待ち椅子に座って待つ事に。向かった待ち椅子では、一人の小柄な女が座っていた。

2018-05-15 21:37:34
三隈グループ @Mikuma_company

その女は小柄な体格にツインテール、服装は少し変わったもの、その姿に最上達は見覚えがあった。 すると、女の方が彼等の視線に気付いた 「…なんじゃ?我輩をジロジロと…む?お主は…」 古風で特徴的な話し方、最上達は完全に気が付いた。 「もしかして、利根さんですか?親衛隊の…」

2018-05-15 21:38:32
三隈グループ @Mikuma_company

最上が訊ねると、利根と呼ばれた女はゆっくり立ち上がる 「如何にも…そしてそういうお主は、トラックの最上じゃな?そっちは同じく初霜」 女は、横須賀鎮守府親衛隊長利根は、二人の顔を交互に見て言った。 それは、意外なエンカウント。 〜〜

2018-05-15 21:39:31
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〜〜 利根、横須賀鎮守府親衛隊長の航空巡洋艦娘である。妹の筑摩と同様、優れた晴嵐の波紋使いでもあり、その戦闘力は非常に高い。人は彼等を、横須賀利根姉妹と呼ぶ。 そして最上にとって彼女は、横須賀鎮守府巡洋艦杯三回戦にて激闘を繰り広げた相手、要するに知り合いであった。

2018-05-15 21:41:43
三隈グループ @Mikuma_company

と、そんな彼女と蕎麦屋にて出会った最上達は、同じ席で食事をする事となったのである。 「でも良いんですか?相席で…」 「構わんよ、店も混んどるし、この方が良いじゃろう」 利根は穏やかに言うと、メニューを向かいの最上達に渡す。

2018-05-15 21:42:39
三隈グループ @Mikuma_company

「ああ、ありがとうございます、どうしよっかな」 渡された日本語のメニューから、最上達はさっさと注文を決める。 「うーん、ボクは大もりで良いや」 「私冷やしたぬきにするわ、大盛りで」 決め終わると、二人は利根にメニューを渡す 「おお、すまんの」

2018-05-15 21:43:42
三隈グループ @Mikuma_company

彼女はそれを開き、まじまじと中を見る、メニューに写真はなく、文字だけだった。彼女は周りを見つつメニューを閉じ、店員を呼んだ。 「ご注文お決まりでしょうか?」 若い日本人の店員に、最上は大もりそば、初霜は冷やしたぬき大盛りを頼む。

2018-05-15 21:44:52
三隈グループ @Mikuma_company

そして利根は、少し離れた席を指差す 「うむ、我輩はあれと同じものを」 指差す先では、若いスーツの男が冷やしたぬきを食べていた 「はい、冷やしたぬきですね。」 「ああ、それで頼む。」 利根の注文を聞き終えると、混雑もあり、店員は足早にその場を離れた。

2018-05-15 21:45:44
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注文を終えると、利根が切り出した。 「ふぅ、お主達と会うのは、トラック泊地へ書簡を届けたとき以来かの」 「そうですね、まああの時は、本当に顔合わせただけって感じでしたけど…」 お冷を飲みつつ最上は思い出す、当時はまだ扶桑にも会っていない頃、あれから随分と色々あったものだ。

2018-05-15 21:46:58
三隈グループ @Mikuma_company

利根も同じように懐かしむ 「フフッ、あの時は那珂殿と手合わせ願ったのう…流石は帝王、完敗じゃった。」 最上達が旅立つ前、トラック泊地へ書簡を届けに来た利根姉妹は、那珂に演習を持ちかけた。 姉妹は那珂と組んだ山城を難なく退けた、しかしその二人でも、那珂本人には敵わず降参したのだ。

2018-05-15 21:48:00
三隈グループ @Mikuma_company

と、ここで初霜がふと気付く 「そういえばあいつ…あの人、筑摩さんは?」 最上達が利根と出会う時、その側にはほぼ確実に妹の筑摩がいた。だが今日は珍しく影も形もない、その事を訊ねられると、利根は笑って答えた。 「うむ…今日は我輩が一人が良いと言ったのじゃ、あの娘は今頃鍛錬しておる」

2018-05-15 21:49:06
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その答えに、最上達は意外を思う 「そうなんですか、いつも一緒だった覚えがあるのに」 「フフッ…そうじゃな。しかしあまりくっ付き過ぎるのも、あの娘の為にならんのでな。」 利根がそう言うと同時、一人の客が席を立ち、別の客が店に入って来る、店は入れ替わり激しく繁盛していた。

2018-05-15 21:50:20
三隈グループ @Mikuma_company

その中で彼女は、遠くを見つめながら呟く 「人はいつか一人になる…フフッ、慣れておかねばなるまいよ」 彼女はそう言って、小柄な容姿に似合わぬ溜息を吐いた。その遠い目をした姿は、最上達の知る親衛隊長利根とは、また違った表情をしていた。

2018-05-15 21:51:21
三隈グループ @Mikuma_company

やがて利根はふと気付き、目線を最上達へ戻す 「おっと、辛気臭いのを見せてしまったの、忘れてくれ」 「いえそんな」 「一人に慣れぬのは我輩も同じでな…あの娘がおらぬと、どうにも調子が狂う、しゃんとせんとな。」 利根はこめかみをトントンと叩き、八重歯を見せて笑った。

2018-05-15 21:52:27
三隈グループ @Mikuma_company

そんな事を話しているうち、蕎麦が来た 「いただきまーす!」 三人は割り箸を割り、各々食事を始める 「やっぱ上村の蕎麦だね…」 「本当ね、ここの食べちゃうと他で日本蕎麦食べられないわ。」 最上と初霜はするすると蕎麦を食していく、美味しい蕎麦が良い感じに空腹へ注がれた。

2018-05-15 21:53:35
三隈グループ @Mikuma_company

利根も同じく食事を進める 「うむ…美味いか筑摩?…おっと」 小声でそう呟くと、彼女は空いている隣から目を逸らし、一人肩を揺らして笑う。 「いかんな、フフッ…」 笑いつつ、ずるずると蕎麦を食していく。上村の冷やしたぬきは、美味い。

2018-05-15 21:54:43
三隈グループ @Mikuma_company

そんなこんなで食事を進めつつ、今度は最上たちが訊ねる 「そういえば、利根さんも出るんです?闘技大会」 「うむ、そのつもりじゃ。今回は二人故、筑摩とな。そういうお主は?」 「多分出ますね…まだエントリーはしてませんけど。」 最上のパートナーは他の仲間次第故、色々未定である。

2018-05-15 21:55:52
三隈グループ @Mikuma_company

その事を聞くと、利根は八重歯を見せて微笑む 「そうか…我輩を倒したお主なら、良い戦いが出来るじゃろう、出ぬのは勿体無いぞ。」 「は、ははは…出るには出ると思うんですけどね、ええ…」 照れるような気圧されるような、彼女の放つ独特のオーラに最上は苦笑いする。

2018-05-15 21:56:44
三隈グループ @Mikuma_company

そんな彼女の様子を見て、利根は愉快そうに笑った 「フフッ、戦場(いくさば)におらぬお主は、そういう顔もするのか。人間分からぬものじゃな」 「アハハ…それ色んな人に言われますよ…困っちゃうなぁ」 以前会った黒潮にも同じ事を言われている、最上は箸を止め、参ったように頭をかいた。

2018-05-15 21:57:42
三隈グループ @Mikuma_company

利根はそれを見てまた笑う 「うむ、もし戦う事があれば、その時はよろしく頼むぞ」 「ええ、よろしくお願いします」 最上が笑って答えると、利根は割り箸を袋に収め、丼の下に置く。 割り箸の先端が、袋を突き破っていた。 〜〜

2018-05-15 21:58:47
三隈グループ @Mikuma_company

〜〜 そんなこんなで三人は食事を終え、蕎麦湯を飲んでゆったりしていた。 「ふぅ、美味しかったね」 「そうね、焼肉はダメだったけど、これはこれで満足だわ。」 混雑どきが過ぎたのか、慌ただしさのあった店も徐々に落ち着いてきた、もう少しゆっくりしていられそうだ。

2018-05-15 22:00:45