「多数人による同時的一斉加害行為にかかる不法行為における損害論を手がかりとした、手続負担的損害論の試み」

大量懲戒請求に対する訴訟提起のニュースに関連して考えた自分用の試論まとめ。なお、個人的な立場としては、北・佐々木原告団にカンパした弁護士であることを念のため付記しておきます。
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penben @penben2020

それからもう一つ、本件に関連して、「訴訟(提訴応訴)負担を含む手続負担の損害論」というものをもっと正面から議論していく必要があるのではないかということを今回改めて考えた。 twitter.com/SakawaH/status… 等に萌芽があるのだが

2018-05-18 10:24:51
penben @penben2020

(続)ただしそれを弁護士費用という枠で考慮するのは疑問があって、そもそも弁護士費用が損害として認められる類型は多くないのに対して応訴の負担はどの訴訟でも共通だし、慰謝料が発生する事案なら慰謝料での調整も考えられるけど弁護士費用と同じ問題があるし、(続)

2015-01-16 10:34:19
penben @penben2020

これは例えば猪野弁護士、高島弁護士らによる損害論に関する批判に応答するものである。確かに、「比較的小規模の加害行為の積み重ね」に損害論として一種の逓減性が生じることは認められようが、加害行為自体による損害論と、その存否内容を確定するために必要な手続コスト論は本来別である。

2018-05-18 10:32:16
penben @penben2020

確か北先生が平手打ちの例を出していたが、一対一の加害行為を考えたとき、例えば1回の平手打ちで5万円の慰謝料が認められるとして、(少なくとも一つの機会で)100回平手打ちすれば500万円になるかというとそういうことにはならない。これは一種の被害逓減ということであろう。

2018-05-18 10:37:07
penben @penben2020

しかし、100人が1人に対して一つの機会に1回ずつ平手打ちしたらどうか。加害行為は1個ずつバラバラと考えれば総額は500万円になる可能性はあるが、「1人100回」と「100人1回」で損害総額が違うというのも、加害行為「だけ」に注目すると違和感は確かにある。

2018-05-18 10:40:22
penben @penben2020

では、どこが違ってどういう結論に至らせるべきなのかというと、「100人1回」の場合は、加害行為として「大勢でやったこと」自体に威圧的効果を認め、「1人100回」より悪質だとして一種の加重責任を負わせるという方向もあり得る。

2018-05-18 10:43:22
penben @penben2020

しかし、この筋でいうと、100万円の損害を倍にも3倍にもするような加重の仕方が損害の現実と対比して適当かという疑問は残る。逆に、例えば3割増しとか5割増しとか程度の加重だと、集団行為に対する抑止効果にはなりにくいのも確かである。

2018-05-18 10:45:14
penben @penben2020

では(現在の解釈実務とは必ずしも一致しない提言的見解であることを前提として)どこを捕捉すべきかというと、やはり「その損害を填補させるのに必要な手続の負担」ではないのか。「1人100回」の場合は、訴訟は一対一で1回で済むのだから、「本体100万円+1割」でいいといえば、いい。

2018-05-18 10:50:01
penben @penben2020

しかし、「100人1回」の場合、100人に対して訴訟しないといけない。これは仮に併合訴訟で回数を1回にまとめるとしても、対1人の訴訟と比べれば手続は重くなるし、さらに強制執行となれば個別にならざるを得ない以上トータルの手続負担は対1人と比べて全く次元が違ってくる。

2018-05-18 10:52:36
penben @penben2020

逆に、加害者側からみても、仮に総損害が逓減した上で頭割りになれば加害行為そのものの賠償額は下がる(100人1回で100万円を100人で割れば1人1万円で、もとの仮定5万円の5分の1だ)。が、裁判には個別に起こされるし、執行も個別に受けなければならない。これは手続コストだ。

2018-05-18 10:55:44
penben @penben2020

早期の示談に応じるというのは、この手続コストの節約という意味がありその点で加害者にとってもメリットがある。例えば今回の弁護士1名あたり5万円という示談金額は、そういう意味合いで理解すべきものといえるだろう。

2018-05-18 10:59:09
penben @penben2020

そう考えると、そもそも現在の実務は大筋「不法行為に基づく損害賠償のときだけ、弁護士を選任していれば、弁護士費用として損害額の1割加算」なのだが(多少の調整はある)、これはいろいろおかしくて、「手続損害論」として拡大すべきではないかとおもう。

2018-05-18 11:01:21
penben @penben2020

だいたいが、弁護士を頼めば弁護士に金を払う必要があることは確かなのだが、これは本人としては何をしているかというと「時間とノウハウを金で買った」のである。逆にいうと弁護士を頼まずに裁判をしても、時間とノウハウさえあれば同じ結論が出せる(それが非現実的だから弁護士をつけるのだが)。

2018-05-18 11:03:53
penben @penben2020

つまり、権利者本人からすれば、自分の権利Aがあるとして、それを実現するためにの手続負担Bとして「自分の時間・ノウハウB1」を投入するか、「他人の時間・ノウハウを買う金B2」を投入するかだけの違いであって、AとBはもともと別もんなのである。

2018-05-18 11:05:57
penben @penben2020

これは別に「不法行為に基づく損害賠償請求」に限られた話でもないし、債権物権にかかわることでもない。要はあらゆる意味での権利実現コストであって、それは本来、金銭に換算して(価値の移動には金銭しか方法がないのであるから)、あらゆる訴訟で付帯してよいものではないのか。

2018-05-18 11:08:19
penben @penben2020

債務不履行(契約責任)で弁護士費用がなんで認められないのかという論点があるが、これはむしろ原則と例外を反対にすべきで、契約責任の場合はあらかじめ取引時点で手続コストを織り込んだといえる状況があって初めて手続費用の請求を否定するという方向でいいのではなかろうか。

2018-05-18 11:11:23
penben @penben2020

このあたりに通底する問題でもあるのだが twitter.com/SakawaH/status… 、とかく本邦では法制上も社会通念上も手続負担という観念が薄いように思うわけである。これをもう少し正面切って議論し、負担が重い者には政策的に軽減措置をとるという方向性を考えたほうがいいのではなかろうか。

2018-05-18 11:19:45
penben @penben2020

少額の債権(権利)の保護、というのをどう考えるのかはわりと難しいと思うけどなあ。権利実現のコストは無視できないし、すべきじゃないと思いますけどね。

2013-05-05 09:19:51