blue leaves

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❥blue box @sweetblue818

【26】 ** (バチッ!) 閃光と轟音に目が覚める。 手探りで部屋のスイッチを探す。 (カチッ、) え…。 (カチカチッ) 点かない。 ちょっと待って…。停電? …大丈夫、大したことはない。しばらく待てば復旧するはずだ。 暗闇の中鼓動が響く。

2018-03-08 22:10:59
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【27】 そうだ、携帯! ちょっとした明かりでもないよりはいい。 (ピコッピコッ…) う、そ…。 画面から放たれた弱々しい光。 誰にも連絡することはない、そう思って充電器なんて持ってこなかった。 何の明かりもない生活をわたしは知らない。闇雲に携帯を振る。 轟音と共に家が揺れた。

2018-03-08 22:12:28
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【28】 !! 大丈夫、きっと誰かが。 そうだ!安巣さん! 胸をなでおろして携帯を握りなおす。 もう少し持って。 少しずつ弱くなる光。 どうしよう。電話番号のメモが見えない。 待って…! ーーーーーーー 完全な闇になった。

2018-03-08 22:13:52
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【29】 ** ベッドに潜ってどのくらい時間がたったんだろう。 (ガシャン!) 窓が割れる大きな音。部屋に風が吹き込むのがわかった。メシメシと家が軋む。 怖い…! (バキバキ!) 枕に顔を埋めて布団をかぶる。あんなに一人になりたかったのに。 お願い、誰か来て!

2018-03-08 22:17:51
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【30】 (バリッ…バリッ…) ガラスが割れる音。何かが近づいてくるような。 助けて! 「おいっ!」 「っっ!!」 眩しい明かり。被ってた布団がはがれされた。 「、」 「大丈夫…おわっ!」 「ふえっ…ヒッ…うわーん!」 「おぉおぉ。怖かったなぁ。遅なってごめんなぁ。」

2018-03-08 22:21:07
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【31】 ポンポンと背中を叩く。 「もぉ大丈夫やから。とりあえず、窓も割れてもーてるし。こっから出よ?な、落ち着いて。」 泣きじゃくるわたしをそっと胸から離すと肩を抱く。 「破片、踏まんように気ぃつけや。」 そのまま身体を包まれるように家を出た。

2018-03-08 22:21:53
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【32】 *** 「えーとこんなもんでええかなぁ。」 家に着くと安巣さんは身の回りのものを手際よく準備してくれた。 「足りんもんあったらゆーて。」 「…すみません。」 「ごめんやけど服こんなんしかないわ。濡れとるよりましやろ。」 蛍光迷彩のジャージ。 「大丈夫です…すみません。」

2018-03-08 22:23:09
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【33】 「ほんじゃ、俺向こうの部屋で寝るから。何かあったら起こしてくれてええし。ただ、俺一回寝てもたら、目覚ませるかわからへんけど。」 自信なさそうに頭を掻く。 「あの…本当にすみません。」 「いーえ。何のお構いもできなくてすんません。」 安巣さんはおかしそうに笑った。 pic.twitter.com/mVFeu7Z7IK

2018-03-08 22:24:03
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【34】 *** 「この大雨でいろんなとこ壊れてしもうたらしくてなぁ。役場さん、てんてこ舞いみたいやねん。」 翌朝、安巣さんは申し訳なさそうに言った。 「そうですか。」 「せやで、このままあの場所で移住体験続けられるようにどうこうしてもらうこともでけへんし。

2018-03-08 22:25:43
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【35】 とりあえず本人に話を聞いてみます言うてんけど。帰るやろ?」 「え、」 「返金手続とかどうなるかは話してみるわ。」 「あの、」 「払ったものどれだけ戻って来るかわからへんけど、掛け合ってみる。体験募集しといて環境整ってへんっていうのもどうかと思うし。」

2018-03-08 22:26:23
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【36】 わたしの家には朽ちた大木の枝がぶつかっていたらしい。 「とりあえずは荷物まとめて…」 「あの、安巣さん!」 「ん?」 「ここに、置いてもらうわけにはいきませんか。」 「え?」 「返金があるんならそれをここにお支払します。足りない分はちゃんと払いますから。」

2018-03-08 22:27:17
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【37】 「ここにって。自分わかっとる?俺、一人暮らしやねんけど。」 「使ってない部屋、どこでもいいんです。居間の端っこでも構いません。玄関の近くでも。」 「いや、あんな?俺が言うとんのは、」 「お願いします!帰りたくないんです。」 「そんな言うても、」

2018-03-08 22:28:00
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【38】 「わたし、何でもします!ここにいさせてください!お願いします!」 誰もわたしのことを知らない場所で静かに暮らしたい。 安巣さんはわたしをじっと見た後言った。 「…俺の生活に合わせてもらうで。」 「はい!」 こうしてわたしと安巣さんの同居生活が始まった。

2018-03-08 22:28:51
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【39】 ** 「とりあえず遅なったけど、朝ごはん食べるやろ。」 台所に向かう安巣さん。 「あの、わたし朝食は食べな…」 「アカンで。ゆーたろ。俺の生活に合わせてもらうって。」 「あ、」 「飯は一日3回。食べたら動く。一日動いたら、夜ははよ寝る。これ第一のルール。」 「…はい。」

2018-03-11 16:29:06
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【40】 *** 「あ…おいしい。」 安巣さんが作ってくれた朝食。 「お料理お上手なんですね。」 「ありがとぉやけど。そんな料理してへんよ。」 「でも、」 「野菜、まんまの味がうまいんやろな。味が濃いゆーか。とれたてやし。卵もさっき生まれたやつ。」 「そうですか。」

2018-03-11 16:29:51
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【41】 「てか、届けてたんと同じやで。あれやろ?ただ口に運ぶだけで味とか考えずに食べてたろ。」 「…。」 安巣さんが言うとおりだ。 「飯は味わう。これ、第二のルールな。」 「…はい。」

2018-03-11 16:30:27
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【42】 *** 朝食が済むと安巣さんはわたしを外に連れ出した。 「あの…どこに?」 「食べたら動くってゆーたろぉ。散歩。」 「はぁ、」 とぼとぼ歩くわたしを気遣ってか安巣さんの歩くスピードは遅い。 「…やっぱり静かですね。」 人が住んでいないところってこんななんだ。

2018-03-11 16:31:29
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【43】 人が住んでいないところってこんななんだ。 「んー、そぉでもないで。耳すましてみて?」 「…あ、」 「な。山の中って意外といろんな音聞こえんねん。鳥の声とか風の音とか。」 「…この音」 「うん。この辺にも小川あるで。てか自分が住んでたとこにあった川と繋がっとんの。行く?」

2018-03-11 16:32:21
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【44】 ** 「ホントだ。」 「結構遠いとこから流れてきてんねん。」 澄んだ水を掬う安巣さん。 「第三のルール。」 「?」 「どこに行って何してもええ。俺は干渉せーへん。でも部屋に閉じこもるのはなし。ちゃんと太陽さん浴びて、おいしい空気吸って、生きてる感を満喫すること。」

2018-03-11 16:33:07
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【45】 「…。」 「追い出すで?」 「……わかりました。」 わたしにとって一番難しい、三つ目のルール。

2018-03-11 16:33:32
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【46】 *** 安巣さんと暮らし始めて10日。 「これ…食べられるんですか。」 「食べられへんのん食卓に出さへんよ。」 安巣さんは時々見たことない食材を持ってくる。 「安巣さんはどこかの国の部族の中でも生きていけそうだから。虫も平気で食べてそう。」

2018-03-11 16:35:08
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【47】 少しずつわたしは安巣さんとこんな話ができるようになった。 「俺は野生か(笑)?」 「どうやって食べるんですか。」 「そのままでもええし。塩かけたら甘味増すで。」 指先でつまんだ塩をかけて恐る恐る口に運ぶ。 「あ、」 「せやろぉ?」 「すごい、おいしい…」

2018-03-11 16:36:14
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【48】 「おし。おいしい思たもんは身体が求めとるもん。たくさん食べ。」 「はい。」 「…え?」 こっちを見ている安巣さん。 「んや、何でもない。おいしそうに食べとるから。」 「、」 うれしいわ、安巣さんは呟いた。 pic.twitter.com/UtlKZv3X1f

2018-03-11 16:37:28
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【49】 *** 「何やろなぁ。」 散歩中見た小鳥を説明しているときだった。 「絵描いてみて?」 スケッチブックを差し出す。 「絵、ですか。」 たしか…。 ** 「地球外生物…」 わたしが描いた絵を見て安巣さんは絶句した。 「違います。今日見た小鳥。」 「一応やけど…これ何?」

2018-03-11 16:40:27
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【50】 「脚。四本足ってどうやって書くんですっけ。」 「鳥…ゆーたよな。」 「あ…、」 ** 爆笑する安巣さんに拗ねて、スケッチブックを閉じかける。 あれ、いっぱい描いてある。 「安巣さん、これ。」 「雲の絵。こんなふうに見えてん。」 「すごい…。こっちは?」

2018-03-11 16:41:24
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