「ア・ラナウェイ・スリーピング・ビューティ」

J刑事のnjslyr風ガン藤二次創作ツイッタ-ア-連載まとめです
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Genba Graham @BOREZET

「ア・ラナウェイ・スリーピング・ビューティ」#1

2018-07-03 22:58:13
Genba Graham @BOREZET

複雑怪奇に絡み合ったハイウェイ。LED照明がざらついたコンクリートを無表情に照らす。空はおよそこの世のものとは思えないコバルトブルー。星や太陽、月は見えず、ただ一面の青がブルーシートのように上空を覆い尽くしている。それもそのはず、ここは現実の空間ではない。

2018-07-03 22:59:26
Genba Graham @BOREZET

灰色の道路の上、ブレイブポリス開発主任シュンスケ・トウドウはその真っ青な空と、絡まり合ったハイウェイを交互に見やる。「ここが…ガンマックスのローカルコトダマ空間なのか」トウドウは誰に言うでもなく呟く。完全なる無人のハイウェイには人はおろか車すらも走っていない。

2018-07-03 23:00:42
Genba Graham @BOREZET

「…やるしかねえな」トウドウはその場に彼の愛車、オースチン・ヒーレー・スプライトを構築し始めた。0と1の粒子が舞い上がり、一瞬のうちに車体を形成する。「初めてにしちゃ上出来か」彼の『目的』を追うために、トウドウは愛車へと乗り込む。エンジンの調子は良好。滑るように発進する。

2018-07-03 23:03:00
Genba Graham @BOREZET

肌に0と1の風を感じつつ、トウドウは思考する。ローカルコトダマ空間。それは超AI内部に発見された精神世界めいた電脳空間。以前にある超AIが人間と脳を繋いだ際、副次的に発見されたサイバースペース。現在コトダマ空間について分かっているのはコンピュータのOS上で動作するものであるということ…

2018-07-03 23:04:16
Genba Graham @BOREZET

…現実の物理法則とは異なる空間であること、そしてプログラミングのように空間の定義情報を書き換えられることなどだ。トウドウが愛車を構築できたのも定義情報の書き換えによるものだ。コトダマ空間内のイメージは、そこに存在するコードから引き出されて視覚情報としてニューロンに投写される。

2018-07-03 23:05:04
Genba Graham @BOREZET

周囲のハイウェイめいたコトダマ・イメージは勿論、この空間を定義しているコードの持ち主によるものだ。その相手こそが、トウドウの『目的』でもある。「どこにいる、ガンマックス…?」彼は焦れたようにアクセルを踏み込み、加速する。そう、ここはガンマックスのローカルコトダマ空間なのだ。

2018-07-03 23:05:41
Genba Graham @BOREZET

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2018-07-03 23:06:12
Genba Graham @BOREZET

事の発端はガンマックスのかつての相棒、キリサキの脱獄だった。海上プリズンから逃げ出した彼は再び元相棒を破壊するため、エクセレント社に近しかった元・子会社からロボットを盗み出し、ガンマックスの単独行動時を狙って襲撃、ほとんどスクラップにまで追い込んだ。

2018-07-03 23:06:59
Genba Graham @BOREZET

しかしデッカードたちブレイブポリスが間一髪で間に合い、超AIの破壊という最悪の事態は免れ、キリサキも再度逮捕されることとなった。だが、機体を完全に修復したにもかかわらず、ガンマックスは目覚めなかった。原因は全くの不明。どこをスキャンしても異常は見つからなかった。

2018-07-03 23:07:31
Genba Graham @BOREZET

ボディに異常がないのなら、超AIが起動を拒否しているとしか考えられない。そう言ったのはジュウゾウ・サエジマ…警視庁総監にしてブレイブポリス・プロジェクトの発案者。超AIは人間の脳と同じく、未だ解明できていない部分が多い。ショックで一時的に心を閉ざしているのではないかと彼は推測した。

2018-07-03 23:08:09
Genba Graham @BOREZET

もしそうならば外からは手が出せない。その時トウドウはふと、ローカルコトダマ空間のことを思い出した。そこにアクセスすればガンマックスの心を引っ張り出せるのではないか、と。サエジマは渋っていたが、別の超AIと人間が接続に成功している実績もある、と主張してなんとか首を縦に振らせた。

2018-07-03 23:08:49
Genba Graham @BOREZET

ただし、危険が迫った場合はすぐにログアウトせよ。との命令つきだ。何せコトダマ空間のことはまだほとんど分かっていないのだから。だがトウドウもそんなことは百も承知だ。彼はブレイブポリス開発主任。そしてそれだけではない。「アイツは俺の息子だからな。俺が迎えに行ってやらにゃならんのさ」

2018-07-03 23:09:26
Genba Graham @BOREZET

トウドウはさらにアクセルを踏み込み、0と1の風が吹きつける無人のハイウェイの中心部へと向かっていった。息子を探し出し、現実へと連れ戻すために。

2018-07-03 23:10:14
Genba Graham @BOREZET

「ア・ラナウェイ・スリーピング・ビューティ」 #1終わり#2に続く

2018-07-03 23:10:39
Genba Graham @BOREZET

「ア・ラナウェイ・スリーピング・ビューティ」#2

2018-07-04 21:24:01
Genba Graham @BOREZET

ハイウェイは完全に無人だ。建造したてで一般開放されていない道を走るというのはこんな気分なのだろう。いささか現実空間とは異なる走り心地だが、トウドウはそれも悪くないと感じていた。だが目的はドライブを楽しむことではない。ガンマックスを見つけ出すことだ。

2018-07-04 21:24:45
Genba Graham @BOREZET

側に何本も並行するハイウェイに目をやる。どれも人の気配はなく、静まり返った道路に愛車の走行音だけが響いていた。前方遥か遠くには立体的に交差するジャンクションめいた構造が見える。おそらくあそこが中心部。単純構造のここは言わば周縁部なのかもしれない。

2018-07-04 21:26:55
Genba Graham @BOREZET

ハイウェイの外側は首都高速めいている。ハイウェイパトロールの管轄下にある場所だ。自らが通過するにつれて照明がチカチカと瞬く以外はほとんど現実のそれらと変わりないが、生きた者の気配は全くと言っていいほどにない。この仮想空間内の生者は、ガンマックスを除けば自分のみだ。

2018-07-04 21:30:18
Genba Graham @BOREZET

現実でこんな風に無人の首都高を走ることは不可能だ。せめてガンマックスを発見するまでは、少しドライブを楽しみたい。そう思った時、突如後方に違和感を感じた。振り向くとそこには、バイク、バイク、メガバイク…先程までは存在しなかったバイカー集団が追ってくる!

2018-07-04 21:34:54
Genba Graham @BOREZET

「誰だ!」トウドウは即座にwhoisコマンドを実行する。IP反応なし。それが意味するのは…「擬人化されたプログラム、か?」追いすがるバイクのフロントガラスに一斉に「排除」という威圧的な赤色ドット文字が表示された!ガシャガシャと音を立ててミサイルランチャーがバイク側面に現れる!

2018-07-04 21:37:35
Genba Graham @BOREZET

擬人化された…防衛プログラムだ!「おいおい、こっちには防御なんて…!」即座にアクセルを踏み込み、速度を上げる。すぐ後方では連続して爆発音とコンクリートが吹き飛ぶ大音響が響き渡る。これを食らえば一体自分はどうなるのか?バイカー集団を振り切るため、トウドウはさらにアクセルを踏む。

2018-07-04 21:41:27
Genba Graham @BOREZET

加速したトウドウの目の前に大きな影が落ちる!落下物か!トウドウはこれを咄嗟の右ハンドルで回避!落ちてきた物体はこれもまたバイク。しかしそれはあまりにも巨大だ!人ほどもある前輪が不吉な摩擦音を立てて着地する。そのオーバーサイズな白いボディに、トウドウは見覚えがあった。

2018-07-04 21:44:15
Genba Graham @BOREZET

「ガンマックス!」想像以上に早い邂逅だ。出向く手間が省けたと言うべきか?ガンマックスはトウドウの横を並走する。「俺だ、トウドウだ!お前を連れ戻しに来た!」ガンマックスが無言でこちらを向く。そのバイザー上にはwhoisの文字。「ガンマックス…?」バイザーの文字列が、緑から赤へと変わる。

2018-07-04 21:47:23
Genba Graham @BOREZET

「不明なアクセス」「侵入者」の赤ドット文字がバイザー上に流れる。ガンマックスはぞっとするほど無表情な顔でショットガンを構えた!「ガンマックス!」まさか自分を撃つつもりなのだろうか?本当にこれはガンマックスなのか?whoisコマンドを実行するが、やはりガンマックス本人らしい。

2018-07-04 21:48:36
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