農業は、海と山の物質循環のおこぼれにあずかる産業

農業を「儲けるための産業」の視点だけに限定されれば、生態系を破壊し、人類を存亡の危機に追いやる恐れがある。
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shinshinohara @ShinShinohara

地球の表面の7割は海。だから水産資源は無限にあるようにどこかで感じてしまう。しかし日本人が消費するだけで、世界中のウナギもタコも絶滅の危機に追いやっている。別に日本人も毎日ウナギやタコを食べるわけじゃないのに。そのくらい、水産資源は実は限界が低い。

2018-07-18 23:42:07
shinshinohara @ShinShinohara

私もそんなに昔に知っていたわけではないから偉そうにいえないが、実は魚は陸地の近く(沿岸)にしか住んでいない。あの、広い広い大海原に魚はほとんどいない。このこと、知っている人はあまり多くない。大海原を泳ぐ魚はいるが、あれ、渡り鳥と同じで、陸地から陸地へと渡っているだけ。

2018-07-18 23:43:53
shinshinohara @ShinShinohara

なぜ陸地のそば(沿岸)にしか魚がいないのか。海には基本、養分がなく、養分を供給してくれるのは陸だけだから。陸から流れ込む川の水には、土を溶かし出した養分が含まれる。これをエサに藻が増え、それを食べるプランクトンが増え、肴が増える。だから沿岸は水産資源が豊富。

2018-07-18 23:45:45
shinshinohara @ShinShinohara

つまり、水産資源は陸地のそばにほぼ局限される。だから、水産資源は実は意外と限られている。戦後の世界では、日本が突出して水産資源を消費していた。世界人口の50分の1しかいない日本人が消費しただけで、タコやウナギは絶滅を危惧。水産資源はかようにか細い。

2018-07-18 23:48:28
shinshinohara @ShinShinohara

魚をよく食べることで知られる日本人だが、摂取カロリーの5%程度しか水産資源から摂取していない。世界中の水産資源を枯渇させるのに貢献した日本人なのに。だから、米麦などの「陸地から得る食糧」がなくなっても魚を食えばいい、というのは無理筋。

2018-07-18 23:51:12
shinshinohara @ShinShinohara

では、食糧資源として大して魅力がないから、水産資源を全部食い尽くしてよいかというと、そうではない。水産資源が滅べば、陸上の食糧も得られなくなる恐れがある。きちんと証明されていないが、海が陸地を肥やしている可能性が大いにあるからだ。

2018-07-18 23:54:08
shinshinohara @ShinShinohara

海と陸地の境界である干潟に住む鳥は、山に移動するとフンを落とす。川を遡上する魚は、熊やキツネなどのエサとなり、それらがフンを落とす。海辺の海草を食べた昆虫がトンボに食べられ、山に戻ってフンを落とす。こうして、海の幸が山のてっぺんに上る。

2018-07-18 23:56:29
shinshinohara @ShinShinohara

物質は必ずしも山から海への一方通行ではないはず。海から山のてっぺんへ、物質を運んでくれる生き物は、鳥、魚、虫などがいて、それらを食べる生き物が山全体へ分散させる。こうして物質が海から山へ運ばれ、再び山から海に注ぐ。こうした物質循環が、かなりあるはず。

2018-07-18 23:59:09
shinshinohara @ShinShinohara

もし海の生物が滅べば、海の資源を山に運ぶ生き物はいなくなる。そうなれば、山の土壌はやせほそり、森林を養う力を衰えさせ、結果的に陸上の生物を養う力を失うだろう。そうなれば、有形無形の恩恵を受けている田畑の農業も果たして成り立つかどうか。

2018-07-19 00:00:50
shinshinohara @ShinShinohara

農業では、限られた肥料しか与えない。ほとんどの場合、窒素、燐酸、カリくらい。たまにカルシウム、マグネシウム程度。そのほかのミネラルを供給することはまずない。土壌がそれらを提供してくれると信じ込んでいるからだ。だが、海が山を養わなければ、果たしてそれは可能だろうか?

2018-07-19 00:02:40
shinshinohara @ShinShinohara

海からの物質流入が失われれば、やがて山の土壌は枯れていくだろう。そうなると、人間の田畑に供給されていた微量要素を、果たして誰が供給してくれるのか?微量要素の鉱山は限られている。陸上での食糧生産が極めて危うくなる。

2018-07-19 00:04:44
shinshinohara @ShinShinohara

いまのところ、仮説に過ぎないが、海と山はつながっていると考えたほうがよいように思う。海から山へ物質を運んでくれる鳥、魚、虫が減少すれば、それは陸上生物全体の危機につながる。それは人類の存続にも影響することと考えるべきではないか。

2018-07-19 00:06:11
shinshinohara @ShinShinohara

海水温の上昇のためか、「磯焼け」が日本沿岸で常態化している。海草・海藻が死滅し、その結果、魚などの大型生物も大量に死に、水産資源が激減する現象だ。 私が中学生の頃まで、海岸から1キロ離れていても感じられた「磯の香り」は、海辺に立ってようやくかすかに感じる程度。海が死にかけている。

2018-07-19 00:09:15
shinshinohara @ShinShinohara

磯のにおいは、ジメチルスルホキシドという、生物に含まれる硫黄が変質して発生するもの。海藻・海草が腐ると発生しやすい。昔は大量に海岸に打ち上げられ、強烈な磯のにおいを発していた。それがまるでない。海辺でかすかににおう程度。

2018-07-19 00:11:01
shinshinohara @ShinShinohara

私が中学生になる頃まで、10センチ近いフナムシが岩肌全体を無数に覆っていた。釣りえさの店に入ると、床にびっしりフナムシがいて、そろりと足を下ろすと足の形にだけよけた。そんなにいたフナムシがいない。岩に小さなフナムシを1匹見かけるくらい。

2018-07-19 00:13:34
shinshinohara @ShinShinohara

海は、確実に死にかけているように思う。私が定点観測している和歌山のすさみ町の海は、近隣に人家なく、町なく、人工的な影響を受けていない場所。そこでも磯の香りはかすかで、フナムシはおらず、ヤドカリもニナも小エビもいない。恐るべき海の砂漠。

2018-07-19 00:15:46
shinshinohara @ShinShinohara

山に物質を送り込む海の力は、着実に失われているように思う。その影響が山に現れるのは、数十年のタイムラグがあるだろう。土壌がくわえ込んだバッファーが残っている間は、影響が見えてこない。しかしそのバッファーが枯渇したとき、山の生命は維持できるのか。実に心もとない。

2018-07-19 00:17:24
shinshinohara @ShinShinohara

山が生命を維持する力を失ったとき、人間は農地を果たして無事に維持できるだろうか?少し雨が増えるだけで大規模な山崩れが起きる恐れもある。そうなれば、農地を維持することは困難だ。そして何より、山が枯れれば農地は作物を育むことができるのか?

2018-07-19 00:19:16
shinshinohara @ShinShinohara

農地はもしかしたら、海と山の間で行われていた物質循環の「おこぼれ」を頂いて成り立っていた可能性がある。肥料としてまかれるNPK以外の微量要素を、海が山に送ってくれていた可能性がある。しかしもし海が死に、山が死んだら、農業は本当に成り立つのか?

2018-07-19 00:21:44
shinshinohara @ShinShinohara

人類は生態系のピラミッドの頂点に立つ。これはちっとも「偉さ」を意味しない。ピラミッドの裾野が狭くなれば、支えられる頂点の高さは低くなる。もしピラミッドの裾野が広いどころか狭くなれば、ピラミッド全体が崩壊する。もしかしたら人類は、その局面を迎えているのかもしれない。

2018-07-19 00:23:27
shinshinohara @ShinShinohara

農業でも、スマート農業だのAIだのという目新しい技術がもてはやされている。しかし農業は、生態系と対峙する最前線の産業だ。そして生態系の豊かさの分け前を頂く産業だ。もし生態系の存在のありがたみを忘れたら、それは人類の死を意味する。

2018-07-19 00:25:11
shinshinohara @ShinShinohara

日本農業の未来を拓くはずの農研機構は、今後、スマート農業とAIに研究資源を絞るという。民間企業からトップが来たことによる大改革だ。改革そのものは結構だが、農業は「生態系のおこぼれ」で成り立つ産業であり、それを直視する研究をやめたらどうなるか。考えるだけで恐ろしい。

2018-07-19 00:27:08
shinshinohara @ShinShinohara

工業系の人は、生態系がどれだけ破壊されているのか、農業が、その破壊されつつある生態系にどれだけ依拠しているのか、いまだに想像の域を出ないということにさえ、気づきにくいのかもしれない。AIやスマート農業を推進しても、生態系を直視する研究をおろそかにすれば、必ずしっぺ返しが来る。

2018-07-19 00:29:19
shinshinohara @ShinShinohara

農業は、儲ける産業である前に、人命を支える営みでもある。人命を支えるには、地球が、生態系がどのように営まれているのかを直視しながら、無理のない食糧生産を模索する試みが必要だ。AIやスマート農業など、「人の営み」だけに視野が狭くなったとき、これらが台無しになる恐れがある。

2018-07-19 00:31:55
shinshinohara @ShinShinohara

私は農業研究者として、現状を強く憂う。しかし、現在のトップは政府肝いりらしく、逆らえば首が飛ぶとして、直言できるものはいない。しかし事は、「日本の国土に人が生き続けられるか」どうかに直結している。どうか、陰に陽に、日本の未来を憂う声を、みなさんに挙げていただきたい。

2018-07-19 00:34:25