[R-18]魔女シリーズ4~たたら場で使い潰されそうな少年を拾った女剣鬼がおもちゃにする話

火妖グラウすなわち赤烈火のグラウルドと剣の魔女ジャジャすなわちジャズィランテの物語 ほかのお話は以下 魔女シリーズ一覧 続きを読む
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帽子男 @alkali_acid

「あれにも臍がない。卵から孵ったのだ。火妖の王家は皆そのようにして生まれるらしいが」 差配が淡々と語るのを、剣士は退屈そうに横目で見やる。 「臍があれば、そこに孔をうがっ、神鋼の鉱石を流し込めるが、ないのでほかの孔を使う」

2018-07-22 15:22:16
帽子男 @alkali_acid

獣人が大きな盤に手を伸ばして複雑な模様を指でなぞると、神鋼の管が何本もうねりながら伸びて、火妖の少年の口と尻の孔を強引に押し広げ、もぐりこむ。 生きた炉は鱗をくすませ、ついで明々(あかあか)と輝かせると、臙脂の双眸から涙を流してうめき、痙攣し、助けを求めるように腕を伸ばした。

2018-07-22 15:24:46
帽子男 @alkali_acid

だが管は炭と鉱石とを容赦なく上下の穴からそそぎ、妊婦のように腹をふくらませる。ついで風が吹き込み、人間であれば臍のあるべきあたりが内側からまばゆく輝いて、たたら場に熱波が広がる。 離れて見守る獣人がさらに手元の盤を操作すると、やっと管が抜ける。

2018-07-22 15:28:14
帽子男 @alkali_acid

火妖の男児は、口から液状になった灼熱の鉱滓を吐き、朱砂の上に湯気のたつ小水をこぼしながら、蹲踞(そんきょ)の姿勢のまま丸々した腹を抱えてわなないた。 「こちらに見せろ」 差配が命じると、鱗でおおわれたあどけない面差しが、いやいやと首を振るが 神鋼の鎚があらわれると怯えて従う。

2018-07-22 15:30:40
帽子男 @alkali_acid

「ひり出せ」 牙を打ち鳴らし、尾をくねらせながら、蜥蜴と人間の合いの子は、菊座をいっぱいに広げ、粘膜をめくらせつつ、橙に輝く神鋼の塊を産み落としていく。一つ、二つ、三つと。

2018-07-22 15:32:28
帽子男 @alkali_acid

「出じ…まじだぁ…」 懇願するように子供の声変わり前の喉からかすれた報告があふれる。 だが大人は鎖をあやつって両手両足を広げさせると、むきだしになった腹に鎚を打ち込んだ。 「ぎゃぅうううっ!!?」 連続した打撃のあとで、さらに奥に残っていた神鋼がこぼれ落ちる。

2018-07-22 15:34:35
帽子男 @alkali_acid

差配は後ろをかえりみる。 「はらわたの中に神鋼が入ったままだと身の毒になる」 侠客は隻眼を半ば伏せたまま短くあくびをしただけだった。

2018-07-22 15:36:08
帽子男 @alkali_acid

◆◆◆◆ 新しい籠手ができるまで、半月ばかりたたら場に逗留することになった。 羅刹は左腕を欠いた中途半端な格好で鍛錬に打ち込み、ひまができるとあたりをうろついた。だが塔につないだ黄の翼の老婆達、風魔も、水盤につないだ青い透き通った肌の男、海霊も怯えて口を利こうとしなかった。

2018-07-22 15:38:32
帽子男 @alkali_acid

火妖の男児は、最初あったとき鎖で尾を吊り上げ、両足を広げ、神鋼の鉗子で直腸を限界まで開いて、点検を受けているところだった。 ひょいと覗き込んだ女に、少年はおののいて首を振る。 「見ない…で」 「こいつ、喋るね」 「もとは野良だ。王家の末裔とかで、同族がかくまっていた」

2018-07-22 15:41:47
帽子男 @alkali_acid

神鋼の金具が、酷使し尽くした粘膜の内側をつつきまわして刺激する。触診にいそしんでいた獣人はしばらくしてから告げた。 「もう使えん。神鋼を製錬するのには耐えられんだろう」 「へえ」 「よく働いたが、廃棄だ」

2018-07-22 15:45:34
帽子男 @alkali_acid

差配はつぶやいた。 「労役人種の淫売宿にでも売るか」 侠客はせせらわらう。 「は。こいつにつっこんだら焼け焦げて死ぬだろ」 「違いない。では神仙のまねごとをして不老長生を得たがっている連中に食用として払い下げる手もある」

2018-07-22 15:48:53
帽子男 @alkali_acid

少年は涙を流して首を振る。隻眼の女は尋ねた。 「お前。命が惜しいのか。こんなになって」 「…余は…死ねぬ…王家の…再興を…」 「王家ね…おい。こいつの枷を外してやんなよ」 義手義足の剣士の呼びかけに、毛むくじゃらの鍛冶は首を傾げた。 「何を言う」 「はなしてやれってのさ」

2018-07-22 15:51:21
帽子男 @alkali_acid

獣人はしばらく羅刹を凝視してからうなずいた。 「好きにするがいい」 拘束が解けると、鱗ある少年は生まれたての仔鹿のように足を震わせながら、かろうじて二本足で立った。 「ほら。かかってきな」

2018-07-22 15:52:53
帽子男 @alkali_acid

剣士は金属の右腕で差し招いた。 「あたしを殺せたら、自由にしてやる。魔女の森でもどこへでも逃げて、王家の再興とやらをやってみなよ」 「…な…」 「かかってきな」 「よ、余は…女性(にょしょう)に手をあげることはできぬ」 「ぷ、あっはっはっは!こいつはたいした王子様だ」

2018-07-22 15:54:48
帽子男 @alkali_acid

とまどう男児に、隻眼の女は歯を剥いて笑った。 「あたしは、お前の仲間を何匹も斬ってきたよ王子様。男も、女もねえ」 「…っ」 「あんたの身内もいたかもしれないね」 「…その…ような」 「かかってきな!こないならこっちからいくよ!!」

2018-07-22 15:56:31
帽子男 @alkali_acid

神鋼でできた義足の回し蹴りが蜥蜴に似た未熟な肢体を宙に跳ね飛ばした。 潰れるように地面に落ちた標的へ、剣士はすかさず間合いを詰める。 「どうした。生きて王家の再興をするんじゃないのかい」 「うう…」 「戦う気がないならさっさと死にな」 「う…」

2018-07-22 15:59:26
帽子男 @alkali_acid

侠客は舌打ちするとかかとから先を刃に変えて、高く振りあげる。一気に下ろそうとした刹那、男児の開いたあぎとから火が迸り、熱波が噴出して、鱗が輝く。 「ぐおおおお!!!!」 矮躯が何倍にも膨らんだかのように見え、しなやかな尾がたたら場の踏み固めた土を叩いてひび要らせる。

2018-07-22 16:01:54
帽子男 @alkali_acid

隻眼の女は着流しの縁を焦がしながらにんまりした。 かたわらで獣人があわてる。 「おい!おとなしくさせろ」 「ああ?」 「…尻を痛めつければおとなしくなる!そいつはそう仕込んであるはずだ」 「くだらないね」 「ここが壊れたら義手もできんぞ」

2018-07-22 16:03:46
帽子男 @alkali_acid

剣士は舌打ちすると、ゆらめくように動いて、二本足で立つ真紅の蜥蜴の裏へ回り込み、尾の付け根のあたりに金属の拳を打ち込んだ。 「ぎゃううんん!!!」 「おおいやだ…」 縮んで震える男児の狭い肩を抱きすくめて捕えると、なおも後孔をほじる。たちまち尾がくねる。 「ひぅ…ひぐっ…」

2018-07-22 16:06:06
帽子男 @alkali_acid

すでに神仙が開発し尽くした火妖の括約筋は一本、二本、三本とたやすく神鋼の指を飲み込み、最後は拳ごと受け入れてしまう。 「王家の再興がなんだって」 「ひっ…ひっ…余…余はぁっ…んっ」 「もとが野良だかなんだか知らないが、もうすっかり家畜だね…」 「ちが…ちがぁ」

2018-07-22 16:09:26
帽子男 @alkali_acid

羅刹は片方だけの瞳を煌めかせた。 「だがさっきのは多少面白かった。いいよ。あんたはあたしが引き取ろう」 「んっ…抜い…」 「文句はないね」 「ぎぅ!!なぃぃ!ないからぁあ…手ぇえ!!おぐやだ…やっ…ぎぅ!!」

2018-07-22 16:10:40
帽子男 @alkali_acid

◆◆◆◆ 新調した義手のおかげでまた四肢それぞれに刃を得た羅刹は、幼い火妖を連れて旅を再開した。向かうところ剣の嵐が吹きすさび、血煙がのぼった。 江湖にはいまだ侠客が腕を振るう機は十分にあった。

2018-07-22 16:14:29
帽子男 @alkali_acid

天下は、不可思議な力を持つ神仙の支配のもとで徐々に治まりつつあったとはいえ、逆らうものは多かった。 神仙は、不老長生を保つ薬の材料として、山野に隠れ住む火妖、海霊、風魔、樹精の四族を食用人種としてとらえ、牧場で飼いならそうとしたが、どれも容易には従わなかった。

2018-07-22 16:17:28
帽子男 @alkali_acid

また火妖、海霊、風魔、樹精のなかだち、巫(かんなぎ)をつとめてきた戎牙(じゅうが)、すなわち獣人にもまつろわぬ民が多かった。 さらには神仙と同じ出自でありながら、道を外れた魔女の生き残りも暗躍していた。

2018-07-22 16:20:06
帽子男 @alkali_acid

はるか辺境では、いちどは滅びかけた樹精と結んだ魔女によって、常枯の野に森が生まれ、あやしき術によって霧がたちこめ、岩と土の巨人が徘徊し、血に飢えた猛禽と野獣、大魚とが跋扈する不入の地が広がりつつあった。

2018-07-22 16:22:56
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