[R-18]魔女シリーズ7~ヘドロめいたババアがかわいい少女に惚れるが悲恋で終わる百合・中編
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「先々々代の大魔女みたいに、ヘドローバ様の恋人になるだ!」 泥の塊は震えた。笑っているようだった。 「…あれはわらわの恋人などではなかったわえ…幼馴染の島の男と結ばれ、幸せに暮らしたのだわえ…汝もいずれよい連れ合いを見つけや」
2018-08-16 23:28:01「島にろくなものがおらぬなら、どこかよそででも。それまでに、海でも陸でもどこへでも行けるよう、わらわが始末をつけておくわえ」 怪物は告げおくと、祠の塩辛い泉に潜り、もう浮かび上がってこなかった。
2018-08-16 23:29:55◆◆◆◆ 明るい地上とは縁なき、はるか深みにある海の牢獄で虜囚がうめいていた。 もとは獣人、すなわち戎牙の民だったが、醜く膿み腫れたすがたはもはや不気味なうみうしに似ていた。 そばには看守たる魚人、すなわち蛮鰭の民が、魚骨の吹き矢をつまんで立ち、新たに突き刺す部位を探っている。
2018-08-16 23:32:39「ダゴ。吐いたかえ」 濁った肌の媼が入って来ると、拷問役は振り返った。 「はいヘドローバ様。神仙どもは間もなく大軍を率いて攻め寄せて参ります。魔女の森を攻める際に地上の軍勢のほとんどを失いましたが、軍船(いくさぶね)と、虹の浮橋とかいう空飛ぶしかけは残っているとか」
2018-08-16 23:35:13「おおそうかえ。見込んだ通り。こやつは獣人の中でも位の高いものであったわえ」 虜囚は白目をむきながら懇願する。 「死なせて…くれ…」 「あわれな。わらわは汝を傷つけはせぬわえ」 ヘドローバは優しげにさとしてから、またダゴに向き直る。 「五十七州の諸族に触れを出しや」 「はい」
2018-08-16 23:37:57魚人は宜ってからためらう。 「しかしまこと…神仙は強大です。ヘドローバ様の仰る通り…あるいは…」 みなまで言わせず、海霊は抑揚を欠いた声音で返事をする。 「かなうなら戦は避けるがよいわえ。だが、もしするなら…必ず皆殺しにする…神仙が二度と蘇れぬよう、一匹残らず始末するわえ」
2018-08-16 23:43:58