[R-18]魔女シリーズ7~ヘドロめいたババアがかわいい少女に惚れるが悲恋で終わる百合・中編

泥婆(どろばばあ)こと青海嘯ヘドローバと 見習いのドゥドゥすなわち飾の魔女ドゥニドゥニエンヌの物語 ほかのお話は以下 魔女シリーズ一覧 続きを読む
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まとめ [R-18]魔女シリーズ6~ヘドロめいたババアがかわいい少女に惚れるが悲恋で終わる百合・前編 泥婆(どろばばあ)こと青海嘯ヘドローバと 見習いのドゥドゥすなわち飾の魔女ドゥニドゥニエンヌの物語 ほかのお話は以下 魔女シリーズ一覧 https://togetter.com/li/1257731 [R-18]魔女シリーズ1~少年期に魔女に犯された男が成長後も搾取を受ける話 https://togetter.com/li/1257715 [R-18]魔女シリーズ2~食用人種なのに貧相で出荷されない少年がお姉さんに世話してもらう話 https://togetter.com/li/1257724 [R-18]魔女シリーズ3~少年放牧場における躾、お姉さんの趣味と実益を兼ねた妙技 https://togetter.com/li/1257726 [R-18]魔女シリーズ4~たたら場で使い潰されそうな少年を拾っ.. 2958 pv 1
帽子男 @alkali_acid

◆◆◆◆ ドゥドゥが目を覚ますと、傷は手当を施してあった。海藻の精髄を取り出した薬の匂いがあたりにたちこめている。 横になっていたのは柔らかな寝台。本に出てきたお姫様の部屋そっくりだった。 周囲を見回すと、飾りものでいっぱいだった。自分が作ったものもあればそうでないものも。

2018-08-16 00:37:36
帽子男 @alkali_acid

大きな硝子の丸窓が壁に並んでいて、そのむこうから不知火の明かりが差し込んでいる。覗き込むと灯の向こうは闇だが、どうやら海が広がっているらしいのは分かる。 「…どこだべか。ここ」 水中のようだった。水中にある部屋。

2018-08-16 00:39:00
帽子男 @alkali_acid

「目が覚めたかえ」 しわがれ声が尋ねる。ぎょっとしてそちらを向くと、上げ蓋を開いて、泥の怪物があらわれたところだった。 「ひっ…」 「静かにしや。子供の泣き声は頭に響くわえ」 「…っ…」 「騒ぐなら、すぐ、うなぞこに捨ててやろうかえ。蟹の餌にちょうどよいわえ」

2018-08-16 00:40:59
帽子男 @alkali_acid

「おめ…なんだ…」 「海霊に決まっておるわえ」 「海霊は!もっときれいで!青くて透き通ってて…だども…おめは…なんか…あの…違う」 「こにくらしいちびだわえ」

2018-08-16 00:42:07
帽子男 @alkali_acid

泥の怪物は尋ねた。 「名前は何というのだわえ」 「ドゥドゥ…」 たちまち濁った塊はあとずさった。 「魔女らしい名前だわえ…もし魔女なら…」 察した少女はぶるっと震えた。 「お、おら魔女じゃねえ!」 嘘ではないつもりだった。まだ見習いだから。

2018-08-16 00:43:55
帽子男 @alkali_acid

「おら…あの飾りもの作りの見習いだ」 「見込んだ通りだわえ。いつも海に飾りものを投げ入れていたのは汝かや」 「…んだ…じゃ…あの…色々おらにくれたのは」 「知らぬわえ」

2018-08-16 00:45:24
帽子男 @alkali_acid

ドゥドゥは疑わしげに老婆をにらんでから、やがてこわばりをとく。 「間違いね…いい人そうだし、海霊様だべ…」 近づいてひざまずく。 「助けていただいてありがとごぜます。おら…おら…ずっと海霊様にお会いしたかっただ」

2018-08-16 00:46:58
帽子男 @alkali_acid

媼はまたあとずさった。 「おぞましや!やはり魔女だわえ!わらわは魔女と絆を結ぶつもりはないわえ。愚かな樹精や火妖、風魔の轍は踏まぬわえ」 「え…なんだべ?」 「まかり間違っても汝と恋になど落ちぬと申しておるわえ!こにくらしいちびの魔女!」 「な…な!なんていやなばあさんだべ!」

2018-08-16 00:48:46
帽子男 @alkali_acid

ドゥドゥは涙ぐんで、痛む体を縮めて歯を剥きだす。 「お、おらだって、おめみてえないやなばあさんが好きになったりしね!」 「望むところだわえ。傷が治ったらさっさと…これ」 貧血を起こして倒れ込もうとする少女を老婆は慌てて泥の腕でとらえる。

2018-08-16 00:50:29
帽子男 @alkali_acid

「…まったく…なんともろい…魔女というのはいつも世話の焼ける…わえ…」 溜息をついて子供の軽い体を寝台に戻してやりながら、年経た女は呟く。 「わらわは…もう二度と…魔女と…かかわりあいになど…」

2018-08-16 00:52:21
帽子男 @alkali_acid

「…海霊様…お師さま方…おっかあ…助けて…おっかあ」 意識を失いながら、うなされて腕で敷布をまさぐるドゥドゥの指に、そっとヘドローバの濁った掌が包んでおさえる。やがて静かな寝息が聞こえ始めた。 「このちびは…魔女らしくはないわえ」 老婆は言い訳するようにぽつりとつぶやく。

2018-08-16 00:54:41
帽子男 @alkali_acid

◆◆◆◆ はるか海を離れた仙境に、神仙が集っていた。不老長生の薬を求め、火妖を風魔を、樹精を、家畜として食用人種として馴らした牧場主達が。 さざめくように超常の民は話し合っていた。 “最後の魔女を得ねばならぬ” “急がねばならぬ” “空(うつほ)舟が待っている”

2018-08-16 00:58:07
帽子男 @alkali_acid

雲と霞の取り巻き、輝く影が言葉をぶつけあう集会所からはるか下層、暗がり蟠る畜舎では、鎖につながった魔女が丹薬に酔い痴れ、淫らに腰を振って雄を誘っていた。 黄金の羽毛を生やし、乙女のような姿態を備えるが、辛うじて男であるらしい若者。蔦の髪と緑の皮膚を持つ母娘。

2018-08-16 01:02:17
帽子男 @alkali_acid

そして肌にうっすらと緋の鱗を浮かばせた、鋼の四肢を持つ女。 それぞれ、元は意志の強さをうかがわせる顔立ちをしていたが、終わりなき責苦によってとうに崩れ、ただ惚(ほう)けたような媚びの笑みを浮かべ、まわりを囲む銀髪銀眼、銀の肌を持つ少年の群に孔という孔で嬉々として奉仕している。

2018-08-16 21:12:49
帽子男 @alkali_acid

下腹にはいずれも、神仙の不可思議な技で作り出した不壊の金属、神鋼を極細の繊維として埋め込んだ模様が描いてあり、どれもが情欲の昂りにあわせ燃えるがごとく輝いていた。

2018-08-16 21:13:28
帽子男 @alkali_acid

狂宴にふける雄と雌の頭上にいんいんと声が響く。 “最後の魔女を” “青の魔女を…” “水の魔女を” “飾(かざり)の魔女を” “得ねばならぬ” はるか高みでは神仙がなお論じ合っていた。煌めく影の集う場には、大きな盤がしつらえてあり、そこに海霊の領するわだつみと、ぽつんと浮かぶ島が映っていた。

2018-08-16 21:16:17
帽子男 @alkali_acid

◆◆◆◆ 不知火の明かりが照らす部屋で、海草の包帯を巻いた少女がもぐもぐと海ぶどうや生の貝をむさぼり食っていた。 「うんめ!うんめ!あ、んっ…おみ…おみず…」 真水でふくらんだ鰾(うきぶくろ)を掴んでごくごくと飲む。 「海霊様!ごちそうさまだべ」

2018-08-16 21:25:02
帽子男 @alkali_acid

上げ蓋が開いて、泥の塊が部屋に這い込んでくる。 「こんなうめえもん食ったのはじめてだ…だども、海霊様はなんでいつもいなくなるだで」 濁った肌の媼はうっとうしげに答える。 「わらわの臭いは常人には耐えられるものではない。吐き戻されては迷惑だわえ」 「おら、気になんね」

2018-08-16 21:27:28
帽子男 @alkali_acid

「そうかえ」 ヘドローバはどうでもよさそうに身をゆすってからまた語句を継いだ。 「陸で汝の身に何があったか、わらわにはかかわりなきこと故、尋ねようとも思わぬ。傷が癒えたらはよう戻りや」 すると少女は縮こまりつつ、うなだれる。 「おら…あの…しばらく…ここにいてえ…だども…」

2018-08-16 21:29:57
帽子男 @alkali_acid

「いじのわるい老婆など好かぬと申しておったではないか」 「あ、あれは…恋だとか…変なこというだから…あの…海霊様はおやさしい方だ…おらわかるもの…」 年経た女はねばつく笑いを発した。 「やさしいとみてつけこもうというのかや。わらわも甘く見られたものだわえ」 「…ぅ…」

2018-08-16 21:31:57
帽子男 @alkali_acid

ドゥドゥは寝台にもぐりこみ、掛布のあいだから丸っ鼻だけを出して、涙目でじっと見つめる。 「…だども…だども…」 うんざりという態で腐れた海霊は幼い客に背を向けた。 「よいわえ。そのかわり、ここにいるあいだは、寝る間も惜しんでわらわのために飾りものを作りや」 「…ほんとだか?」

2018-08-16 21:34:22
帽子男 @alkali_acid

「島にいた方がよかったと悔いるほど働かせてくれるわえ」 「夢みてえだ!ずっと飾りもの作ってていいだなんて!海霊様ありがとうごぜえますだ!!」 「ふん…こにくらしいちびだわえ」

2018-08-16 21:35:38
帽子男 @alkali_acid

だがヘドローバは口先ほどドゥドゥを働かせなかった。 外から戻ってくると色々な土産物をくれてやり、根を詰めていると水出しの海草茶を持ってきたり、沈没船から集めてきた玩具を与えたりして気をまぎらわせた。 「部屋にこもりきりで飾りものばかり作っていてはそのうちくたばるわえ」

2018-08-16 21:37:26
帽子男 @alkali_acid

「だども、ずっと作ってても、ええて」 不満げな少女は、媼の沈黙に会うとすぐしゅんとした。 「分かっただ…」 「汝を喜ばせても癪だわえ。ほれ、わらわの襞に入りや」 「わ!ええだか!」 「臭くて汚い泥の中に入って喜ぶとはもの狂いの類だわえ」 「おら、気になんね」

2018-08-16 21:39:50
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