成漢建国記 第1部 野望惹起編

ツイッターで連載している『成漢建国記』のまとめです。中国西部の略陽から南下し、益州及び漢中に割拠した李一族を中心とした物語です。 李一族が略陽から南下し、その代表者・李特が流民らの人心を得て、その頭領となるまでをまとめました。
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ああだこうだ @ryoushin_16

成漢建国記 53 「頭を一つにせねばならぬには理由がある。バラバラであれば御しやすい。各勢力に取り込まれ、いいように使われる。しっかと確固たる意志を示し、それを示すに足る力示せば、相手も侮らぬ」李特の意見に、おおっという声が上がる。そこに肯定派が援護射撃を行う。 #成漢建国記

2018-07-27 00:05:06
ああだこうだ @ryoushin_16

成漢建国記 52 肯定派は閻式、王達、上官晶、否定派は楊褒、上官惇、王懐、中立派は任蔵、夕斌、任回、何巨、趙粛、上官琦という区分けとなった。中立派を引き込んでいくか、反対派を屈服させて中立派を従わせるか。彼らは必要な人材であり、全て手中にしたい。李特はそう考えていた。 #成漢建国記

2018-07-24 19:32:50
ああだこうだ @ryoushin_16

成漢建国記 52 李特は心中、参加者に対する主導権をどう握ろうかと考える。喫緊の事案は自分に近い者、対抗する者を明確にすることである。参加者は十数名、賛同者を取り込み、対抗者をどう処するか。国は無くとも、権力争いは大小関わらず起こる。彼らの動きに李特は目を光らせる。 #成漢建国記

2018-07-22 22:27:17
ああだこうだ @ryoushin_16

成漢建国記 51 「よくはない。頭がいくつもあり、バラバラである。集団である以上、頭は少ない方がよい。でなくば、後へ続く者たちが迷う」「で、それの頭に貴公がなろうてか?」トゲのある物言いをしたのは、楊褒という人物だった。「貴公がこの群れの主となりたい。そう聞こえる」 #成漢建国記

2018-07-22 20:10:44
ああだこうだ @ryoushin_16

成漢建国記 50 「あなたの名は知られていました。ここで会えたも何かの僥倖。こちらこそよろしくお願いいたします」そう言ったのは閻式という人物である。「我もその名は知っている。智に長けた才人であると」「では、お聞きします。今の我らはどのように見えますか?」閻式が尋ねた。 #成漢建国記

2018-07-22 20:01:37
ああだこうだ @ryoushin_16

成漢建国記 49 李特は先行の流民らを束ねている者らと会合を持つ。いずれも一癖も二癖もある顔つきをしている。力で押さえつけた者、智で納得させた者、話術で騙した者などなど。李特は穏便にカタをつけるつもりである。「よく集まってくださった。我、新参者なれど、よろしく頼む」 #成漢建国記

2018-07-16 19:31:18
ああだこうだ @ryoushin_16

成漢建国記 48 南鄭に着いてから、李特は忙しさに追われた。南鄭城に出向き、太守に流民への配慮を願い出る。そして、李特が最大の課題としているもの。それは流民たちの領袖となることだった。これは早ければ早いほどいい。その処置のやりようによって、流民が李特を見る目が変わる。 #成漢建国記

2018-07-16 19:24:31
ああだこうだ @ryoushin_16

成漢建国記 47 「そりゃあさ、ダンナが流民の頭領になって、まとめ上げればと思うけど、どういう人がいるか分かんないし、埋もれちまうかもしれないし」「奥よ、我が埋もれると思うか?埋もれるために略陽を離れたわけではないぞ」「ああ、アンタは大人物さ。必ずいい方にまとまるさ」 #成漢建国記

2018-07-13 07:52:11
ああだこうだ @ryoushin_16

成漢建国記 46 「伯起はどう思うか?」「先におる者らはしっかと漢中にて生活してるので、先に来ておる者らとどう接するかでしょうか」「なら、父上が流民の首領になればいい。そうすれば」「仲儁、そんなお気楽に事が運ぶわけないだろ」「母上もそうお考えだと思ったんだけどなあ」 #成漢建国記

2018-07-13 06:59:51
ああだこうだ @ryoushin_16

成漢建国記 45 「そうだな。仲平はよう見ておるな」李雄が言う。「どうにかなりますよ。どうにもならなかったら、お手上げしてしまえば」「仲儁、お前ふざけてんのか?」「いえいえ、重く考えすぎない方がいいんじゃないかってことです父上」「父上、仲儁の言うことも一理あるかと」 #成漢建国記

2018-07-13 06:46:27
ああだこうだ @ryoushin_16

成漢建国記 44 李蕩の言葉に李特は思わず箸を止める。「どういう意味だ?」「受け入れ側は流民が来るのを嫌がってるし、既に来ている流民たちも、同胞とは思ってないかもしれない。必ずしも歓迎されてない中で、自らの居場所を確保するなら、争いは避けられない。と、私は思いますが」 #成漢建国記

2018-07-12 07:46:33
ああだこうだ @ryoushin_16

成漢建国記 43 李特の子は男子3人、長子が李始、次子が李蕩、末子が李雄である。食事の用意ができたので、家族は一緒に食事をとった。「あんた、まずはお城のお偉方と交渉かい?」「ああ、まずはまともな生活できるかどうかを聞いてからだな」「父上、ここに来ても争いがありますね」 #成漢建国記

2018-07-11 23:44:12
ああだこうだ @ryoushin_16

成漢建国記 42 漢中の中心・南鄭に人々はたどり着いた。城外に置かれた人々は、野営の態勢をとる。李特らも幕舎を立てる。李特が一息入れたとこへ一人の女性がやってきた。李特の妻・羅憮である。「あんた、メシの用意するけど、食べれそうかい?」「ああ、食べる。子供らの様子は?」 #成漢建国記

2018-07-11 23:07:29

第3章 漢中入部編

ああだこうだ @ryoushin_16

成漢建国記 41 難所を越えて、目指す場所が目の前に現れれば、自然と歩みは速くなる。歓声も上がっていた。李特兄弟も心の浮わつきを隠せない。漢中には先だって移入している者らがいる。これらも統べねばならない。どう動くか、李特の頭の中には今後の課題が山積みされていた。 #成漢建国記

2018-07-07 17:21:26
ああだこうだ @ryoushin_16

成漢建国記 40 さらには略陽からやってきた人々も口々に李特らの賛辞を声高らかに話す。こうした話は思うより早く、周囲に伝播する。同じ略陽から来た人々の話である。そこから徐々に李特らを慕う人々が増える。やがて、先の景色が変わり、人々の前に異郷の姿を目のあたりにする。 #成漢建国記

2018-07-07 10:39:08
ああだこうだ @ryoushin_16

成漢建国記 39 人々は秦嶺山脈を越える。快調に越える者らもあれば、体調不良により、越えていけぬ者らもいる。李特らはこれらを救い、声をかけて一緒に難所を越えていく。人々はその姿に、李特らに特別な感情を抱く。それが信頼から信愛に変わるまで、そう時間はかからなかった。 #成漢建国記

2018-07-07 10:10:03
ああだこうだ @ryoushin_16

成漢建国記 38 散会し、李特だけがその場に残る。パチパチ燃える火を見つめ、李特は呟く。「人なくば地を占めても意味はない。地に恵みや豊かさを作るは人。我は仁者の皮をかぶり、我が野望のために人を動かすのだ。良い悪いなどどうでもいい。そのためには我の命など意に介さぬ」 #成漢建国記

2018-07-07 10:03:46
ああだこうだ @ryoushin_16

成漢建国記 37 「分かりました。我らはよく民を見つめ、心を掴むこと。しっかと尽くしてまいります」「玄序がそう言ってくれると助かる。玄龍、お前は剛健屈強の者、腕に覚えある者を見つけ出せ。いずれは自衛を目的にした自衛団を編成する。それがいずれ、我が手足となる軍勢となる」 #成漢建国記

2018-07-07 09:52:59
ああだこうだ @ryoushin_16

成漢建国記 36 李庠は李特を見つめる。全く迷いのない目をしている。兄は本気であると、この困難時を自らの基盤にしようとしている。父祖代々の基盤を捨て、無から新たな地に自身の理想を確立する。自惚れではないが、自身の才にいくばくかの自負を持つ李庠も脱帽せざるを得ない。 #成漢建国記

2018-07-07 09:47:03
ああだこうだ @ryoushin_16

成漢建国記 35 「兄者は困難時にそのようなことをお考えか。人々は飢えや病気で苦しみ、明日を生きるのに必死。それを利用するやり口は酷くはありませんか?」李特は言う。「人を苦しめているのではない。必要の等価交換だ。我らは人々の力、人々は現状の救済、それが必要なのだ」 #成漢建国記

2018-07-06 21:59:18
ああだこうだ @ryoushin_16

成漢建国記 34 「偽善ですか」李庠が李特を見据えて言う。「下心あっての善意、それを人々が見過ごしますか?」「そんなことは些末なこと。たとえ偽善であれ、助けられ、安堵してるのは事実。偽善のどこが悪い?この者らを頼れば、この者らに従えば大丈夫という経験を重ねさせる」 #成漢建国記

2018-07-06 21:50:45
ああだこうだ @ryoushin_16

成漢建国記 33 李特は語る。「今の群れはただの流民の流れ。我はこれを国の流れにしたいのだ。我らを頼り、従い、他の群れを呑み込み、潰して一個の群れを成す。南下したものらを統べれば、万を優に超える。これを整え、まさに国が動く形を創りたいのだ。そのための善意なのだ」 #成漢建国記

2018-07-06 21:38:08
ああだこうだ @ryoushin_16

成漢建国記 32 李流は李特に問う。「何をお考えですか?」「切羽詰まれば人の視野は狭くなる。そこに水を与えれば、人はそれをありがたがり、言うことを聞きやすくなる。そして、人は我らを頼り、従うようになる」「それでは、この人らを我が意のままにしようと?」李特は頷いた。 #成漢建国記

2018-07-06 21:31:36
ああだこうだ @ryoushin_16

成漢建国記 31 秦嶺山脈を前に、人々は一夜を過ごす。李特は兄弟を集め、火を囲んで語り合う。「まずは民の心を掴む。見れば、皆は思い思いに民に尽くしていた。あれでいい。しっかと援けてやれ」「それは当たり前のこと。わざわざ言わずとも」「意識してやれということだ。玄通」 #成漢建国記

2018-07-06 21:26:02