ストレイトロード:ルート140(36周目)
- Rista_Bakeya
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動かなくなった車を路肩に残し、ハイウェイの先に見える町まで歩いた。電波の届かない荒野に藍を残すことも、一人行かせることも出来ないから仕方ない。他に方法がないと自ら決断した為か道中で彼女の文句は聞こえなかったが、助けを求めた町の人々に非難された。「何故そんな場所に子供を連れ出した」
2018-07-07 19:00:12町を脱出したはいいが、次の指示が来ない。藍に言われるまま後部座席に乗せた女性をどこに移送したらいいのか。目の前の道に障害物がないのでアクセルを踏み込むと、後ろから悲鳴が聞こえた。「止まって!」急ぎ停車してから振り向くと、丘の上に自転車が現れた。怪物から助け出す対象が増えたようだ。
2018-07-08 21:29:26「午前二時にお店を閉めて」普通の子供は寝ている時間だ。「あの偉そうな店長が売上を抱えて外に出て」細かい観察に感心している場合ではない。「監視カメラの死角に入って」藍は黄色のテープで封鎖された路地裏で足を止め、「謝りに来た元店員を殴って強盗に仕立ててた」警察の話と違うことを言った。
2018-07-09 19:36:02駅に到着したはいいが、ここに列車が来る保証は全くなかった。各地で人も車体も動力も足りず、時刻表は今や飾りでしかない。どこへ行くつもりなのか。「まさかここから線路を走るなんて」「言わない」藍は車の窓を全開にした。「地図とペンを用意して」数分後、砂の色をした小さな竜巻が駅を出発した。
2018-07-10 18:59:27交差点の隅に異様な集団がいた。派手な服装の女達は少し前、私達の車が別の角を曲がる時にも近くにいたはずだ。こちらには見向きもせず、ある建物を見張っている。「本当に追っかけってどこにでも来るんだ」藍が振り向き、後部座席の荷物に被さった毛布にささやいた。「もう少しだからじっとしててね」
2018-07-11 18:49:17港へ向かう怪物の檻を見ようと街道沿いに人々が集まった。彼らに危害を加えた個体ではないので興味本位だろう。「怪獣はどこに行くの?」「遠い国ですって」隣の親子の会話につられて藍が私を見上げた。「船の中でも見世物になってるかも」「客船には載せないのでは」今の輸送を見る限りは貨物扱いだ。
2018-07-12 18:54:55テーブルに地図を広げ、通過したい地点に指貫を並べた。「貴女の計算ではこのような順で回ることになります」「そうね」計算が苦手と公言する藍でもさすがに距離と道程の違いは解るだろう。「確かに各地点の距離は最短ですが、ここに走る道はありません」「道路じゃなきゃダメ?」すまし顔で言われた。
2018-07-13 19:08:29助手席の窓から身を乗り出した藍が、車の屋根を見上げて顔をしかめた。「これがわたしの指示通りやったことだって言うの?」後部座席に収まらない荷物を屋根に括るよう言ったのは藍に違いない。上に載せる物は強度や耐熱性を考えて選んだはずだが、彼女は別の想定を前提にして計画を練っていたようだ。
2018-07-14 19:32:46通行止の原因は三叉路に進入したトラックの立ち往生だった。積荷は何かの建造に使う資材のようだが、行き先が分からないらしい。「普通は届け先ぐらい聞くものでは」「言い出せないのよ」藍が車窓から手を出して軽く振ると、砂埃がトラックの前にいる人々を散らした。「みんな横取りしに来た人だから」
2018-07-15 22:23:40港の前に巨大な船の看板があった。建造予定の客船だという。「本当にこの大きさで作るつもり?」藍の冷たい視線は昨日の出来事のせいか。遠い街から運ばれてきた鋼材の送り先を巡り、口論に巻き込まれた私達は海と山のどちらに味方するか執拗に問われた。海路の強化も橋の再建も必要故に争いは激しい。
2018-07-17 18:48:11140文字で描く練習、1760。鋼材。 昨日の投稿予定が失敗していたので今上げました。今日の分は後程。 テキレボ当日のポンコツエピソードがまた一つ増えた。
2018-07-17 18:49:42「車を出して。さっき通った道は覚えてる?」藍は追いすがる男を振り切り助手席に飛び乗った。ドアを閉めた際の異音はドレスの裾でも挟んだか。気にせず彼女が指示したコースは、先程とは全く違う道と目標だった。「あいつはきっと先回りしたくなるから、その裏をかくの」私は黙ってハンドルを傾けた。
2018-07-17 18:59:08廃村の一角に重機が群がる姿は怪物の残骸を食らう虫のようだった。流れ着いた誰かが奇怪な屋敷を造ったと聞いた時は、ただその外見に驚いた。今は半分壊れた壁を見てその所業に呆れている。「何がそんなにすごいの」「近隣の家や納屋を丁寧に解体して材料にした辺りが」説明すると藍の顔がひきつった。
2018-07-18 18:47:24日射しが強い中、子供達もその連れの犬も素足で砂浜を走り回っている。眩しさから受ける印象に反して大した暑さでなければ良いが、残念ながらそうではないという現実が私の全身にのしかかっていた。「じっとしてて。崩れる」仰向けの私に砂の山を被せる藍は素足ではない。サンダルに踏まれた足が痛い。
2018-07-19 18:59:20