園児RPGテキスト外伝「宵の流星と暁の詩」第四章
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騒ぎを聞きつけ店主も姿を見せる。「ちょっと待て、こんなに飲んだ覚えはないぞ」「お前さんの連れが持ち帰りのソーダ水二本とヘーゼルナッツ一袋、これで計算が合う、間違えた事はない」「ああ、連れか…奢りって言ったしな、これは俺が間違えた」彼は詫び、代金を払った。 #mmytxt
2018-09-21 22:08:15港に繋がれたボートの上でムメイとシカナが向かい合って座っていた。ムメイは羽織っていたローブを脱ぎ、膝上にカンテレを乗せている。「つまり、シカナさんが夢に見る蒼髪碧眼の少女がさっきの女の人だっていうことね?」ムメイは懐からソーダ瓶を取り出すとシカナに問うた。 #mmytxt
2018-09-21 22:10:46「…間違いない」ソーダ瓶を渡されたシカナが頷く。ムメイはもう一本ソーダ瓶を取り出すと、ヘーゼルナッツの袋を二人の間に置いた。「話を整理しましょ」「わかった」「つまり、イツキさんだったわね…あの人が語るポポースカ大爆発の話とシカナさんの夢の内容が一致する」 #mmytxt
2018-09-21 22:12:19ムメイはソーダ水を一口飲むと続ける。「それにあの人の語り口、まるでその場に居合わせたような…円卓十三席…七本槍…」「七本槍?」ヘーゼルナッツをつまんでいたシカナがムメイに訊ねた。「あぁ、ちょっと独り言よ…それより訊きたい事があるの」 #mmytxt
2018-09-21 22:15:08「…シカナさんはその夢をどこまではっきり覚えているの…?」ムメイは兜をずらし目元を露にする。その瞳は大粒の桃色真珠か南海の薔薇魚の鱗を彷彿とさせる。(…目も綺麗だ…)シカナは暫く見惚れていたが、やがて夢の事を詳しく語り始めた。 #mmytxt
2018-09-21 22:16:49「…確か、魔物が炎を吐いて…もうだめだと思ったら、次の瞬間あの人の戦いを遠くから見てるんだ」「あの人…『光』のクリナゴ?」「そう。でもあの人の剣が砕けて、その後物凄い爆発で森が焼け野原に…その後は分からない、いつもそこで目が覚めてしまうんだ」 #mmytxt
2018-09-21 22:20:01ムメイは奇妙な引っ掛かりを覚えた。「確認するわ。『…もうだめだと思ったら、次の瞬間あの人の戦いを遠くから見てた…』これは夢でよくある視点の切り替わりとかじゃないのね?」「それは違うはずだよ」「やっぱりね…」この部分はイツキにもはっきりとは話していなかった。 #mmytxt
2018-09-21 22:21:38その上でムメイは啓示めいた夢と吟遊詩人の伝承、過去の記録を線で結んでいく。(…イツキさんは黄色い髪の少女が「死んだ」とは明言していなかった…つまり…)(…ウィアドさんは前世の記憶と主張している…事実あれから110年も経過しているわ…ただ)再び兜を目深にした。 #mmytxt
2018-09-21 22:23:21(あの語りが真実で、円卓十三席の聖騎士の愛弟子ともあらば、あるいはシカナさんこそが110年の時を越え生きる本人かもしれない…)ムメイの頬を一筋の涙が伝った。 #mmytxt
2018-09-21 22:24:55「ムメイさん、どうしたんです?」「いや、ちょっと考え事してただけよ」シカナにこの事を伝える訳にはいかない。自分が『光』のクリナゴの愛弟子本人で、ポポースカ大爆発で記憶を失い吟遊詩人となったなどと言う推測を安易に聞かせても無用な混乱を呼び起こすだけだ。 #mmytxt
2018-09-21 22:27:20少なくとも今は、その時ではない…「ねぇ…」「何だい?」「シカナさん…さっきの女の人は『光のクリナゴは110年前に死んだ』って」「…うん…」その言葉にシカナは俯いてしまう。「いい事を教えてあげる。そのかわりこれはお姉さんとの秘密よ?」「面白そう!」 #mmytxt
2018-09-21 22:28:47シカナの表情に光が戻ったのを確かめ、ムメイは語り出す。「…わたしの名前は旧文明の言葉で『名も無きもの』って意味なの」「…えっ…?」「ほんとの名前があるはずなんだけど、未だに思い出せない…」「そんな事が…」シカナは過去の記憶がない事を自らと重ね合わせた。 #mmytxt
2018-09-21 22:31:35「名前には…特別な意味があると思ってる。真の名を、失われた過去の記憶を取り戻さない限り…わたしはムメイなのよ」「失われた…過去…」「…『光のクリナゴは110年前に死んだ』と言うのも、あるいはそういう意味かも知れないわね」 #mmytxt
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