2018-10-28のまとめ
長期的に見て、人類は着実に進歩を遂げています。かつて、17世紀の思想家トマス・ホッブズは『リヴァイアサン』で、自然状態においては「人生は孤独で、貧しく、不潔で、野蛮で、短い」と述べました(Hobbes [1651]、図表1)。
2018-10-28 23:06:53この状況は、大きく変わりました。戦争、暴力、飢饉、疾病は劇的に減少し、人生100年時代の到来がいわれるほど寿命は長くなりました。貧困はまだ消滅していませんが、長期的にみれば減少傾向にあります(Norberg [2017]、Pinker [2011、2018]、図表2)。
2018-10-28 23:06:54ここで「エコン族の生態」(Leijonhufvud [1973])という、1973年に書かれた風刺論文を紹介したいと思います4。これは、経済学者を一部族に見立てた、文化人類学者の訪問記の形をとっています。
2018-10-28 23:06:54エコン族は極北の地に住んでおり、そこでの身分は、「専攻分野」でいかに精巧な「モドゥル」を作り上げるかによって決まっています。けれども、これら「モドゥル」の「大半はほとんど、あるいはまったく実際の役に立」ちません。この「モドゥル」は、経済学で使われる「モデル」をもじった言葉です。
2018-10-28 23:06:55「専攻分野」については、マス・エコン階級が上位にあり、デブロブス階級がその下にあるといった身分秩序があります。ここでいうマス・エコン階級とは数理経済学者のこと、デブロブス階級とは開発経済学者を指します。
2018-10-28 23:06:55デブロブス階級が下位の身分に位置付けられているのは、ポルスシス族、すなわち政治学者や、ソシオグス族、すなわち社会学者といった他の民族と接触したことと、「モドゥル」作りを放棄しているのではないかという疑いがあるからです。この論文は、「エコン族にとってその前途はきびしい。
2018-10-28 23:06:55いまや、かれらの社会構造および文化は、それらが永久に滅び去る前に研究されるべきである」と結論付けており、経済学が他の学問分野との協働に消極的で、現実離れした「モドゥル」作りばかりに注力していた当時の状況に警鐘を鳴らす内容となっています。
2018-10-28 23:06:56(´ω`;) こうした風刺が当時においても正しかったかどうかは別として、このような風刺が当てはまりうる時代は過去のものになりました。
2018-10-28 23:06:56現在では、計算能力の増大、インターネットの普及、データの蓄積・増大、そして計量技法の発達によって、経済学の実証科学化、データ・サイエンス化が進んでいます(Hamermesh [2013]、Angrist et al. [2017]、図表3)。
2018-10-28 23:06:56第3に、他分野との協働作業が進んでおり、経済学者は経済学部以外のビジネス・スクール、ロー・スクール、ポリシー・スクールでも研究教育に携わっています。また、経済学者はビッグ・テック企業でも重要な役割を果たしています
2018-10-28 23:06:57(´ω`) 2008年の金融危機の発生は、現代の経済学者に大きな課題を突き付けました。グローバル金融危機が発生した直後の2008年11月、英国のエリザベス女王は、ロンドン大学経済政治学院(LSE)を訪れた際、
2018-10-28 23:06:57経済学者たちを前に、金融危機について「なぜ誰も予測できなかったのですか」と尋ねられたといいます。そして、経済学者たちはその問いへの答えに窮したのでした
2018-10-28 23:06:58そもそも中央銀行という考え方そのものが歴史の産物です。現存する中央銀行で創設年次が最も古いのは1668年に設立されたスウェーデンのリクスバンクですが(図表5)、もともとは戦費を必要とする王室への貸付なども行う機関であり、
2018-10-28 23:06:58現在の我々が考えるような中央銀行ではありませんでした。現代の中央銀行は、その後に発生した大きな物価変動や金融危機といった経済問題に人類が対処する中で、変貌・進化を遂げてきたものです(Edvinsson et al. [2018])。
2018-10-28 23:06:59日本銀行法では、日本銀行の目的は物価の安定と信用秩序の維持(金融システムの安定)によって国民経済の健全な発展に資することと定められています。
2018-10-28 23:07:00この目的を達成するために、日本銀行は通貨の発行、金融機関の考査・モニタリング、決済システムの運営、国際機関との連携など多様な業務に従事しています。もちろん、経済学を用いた調査・研究も業務の重要な一環です。
2018-10-28 23:07:00(。 ・ω・))フムフム 第1に、資産価格のファンダメンタルズを超えた過剰な上昇、いわゆるバブルの発生とその破裂がもたらす金融危機は、経済に大きな負の影響を与えることが明らかになりました。ただし、第2に、資産価格の上昇に対して予防的に金融引き締め政策を取るべきかについては、
2018-10-28 23:07:01依然として議論のあるところです。資産価格の変動を全く無視してよいわけではありませんが、意図的なバブルつぶしを強力に進めれば、むしろ経済を深刻な不況に陥らせるリスクがあります。第3に、金融危機の発生にあたっては、事後的な政策対応が極めて重要です。
2018-10-28 23:09:08金融危機後には経済に下方圧力がかかりますので、拡張的なマクロ経済政策によって対応する必要があります。こうした対応が後手後手に回ると経済がデフレに陥り、そこから抜け出ることが難しくなります。
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