【私的まとめ】雑誌 Fanroad の絵師「老師」さん

未識🐟 技術書典15 え03 @mishiki

伊藤剛先生（@GoITO）のご指名なので、「萌え絵が女性の搾取を目的のものではない」という話について、少し文化史的な目線でお話を。

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自分語りから行きますが、俺はもともとデフォルメ強めの絵が好きで（それは時々ロリとも混同されるんだけど必ずしもそうではなくて『ゆゆ式』とか『少女週末旅行』みたいな顔が好き）、1990年代にそういう絵を描く人達（の祖先）は、Fanroadという投稿誌や角川系の一部に巣食っておりました。

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1990年代初頭のFanroad常連の女性作家でデフォルメ強めというと現・こげどんぼ*先生が著名だが、私がすごーく好きだったのは「老師」さんという方の絵でした。大勢のファンがいたはずだが、彼女の痕跡はネット上に残ってないし、現況もない。失われた才能の一つである。 amzn.to/2zir9ps

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Fanrod常連当時は女子大生だったという老師さんの絵は今見てもかわいいと思う。マンガを描けば今でも1000・2000のRTは回るのでは。当時、こういうデフォルメの絵は少年マンガとも少女マンガとも少し距離を取っていて、おそらく一番近いのはゲームなどのちびキャラの系譜だろうと思う。 pic.twitter.com/CbkxDrk9EC

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ゲームとマンガを越境出来る出来る絵というのは、あまり整理されないまんま何となくズルズルとギャルゲー・エロゲー・ソシャゲの流れで理解されがちだが、老師さんの絵のさらに元としては巣田祐里子先生辺りになるんじゃないかと思うわけで、巣田先生もギャルゲー・エロゲーでは理解できない方だ。

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さて、10代・20代の女性達が、1円も報酬の出るわけではないFanroadになぜ少女像を描いて投稿し続けたのか。それはどう考えても「自己表現」以外になく、強制や詐取という線は考えられないだろう。若者の自己表現だから時々性も含むがそれは内面の発露と考えた方が自然である。

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なんでそう断言できるかというと、老師さんの絵を「萌え的な絵を強制する社会構造が間接的に女性作家へ絵柄を強制した」論で読み解くのは、時代的に無理だからである。いわゆる「萌え」の誕生以前、エロゲーすらあるような無いような時代なのである。

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老師さんの作品というのは、1990年代初頭に10代～20代であった女性が、自由に描いて自由に描くのを止めた、そういう作品群であろうと思われる。ある時自己表現としてそういう絵が選ばれそういう作品が産まれた。彼女の絵は何の搾取でもない。むしろ、こういう絵はエンフォースメントであったわけだ。 pic.twitter.com/upeb9n10Fe

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さらに言うならば、老師さんはマンガも巧かった。でもそれはビルドゥングスロマンなストーリーマンガなどではなく、香港旅行レポートなどの日常マンガであった。今のパッと見の絵は萌えでも、「やまもおちもいみもない」という自嘲を当てはめても違和感がないくらいの女性的エッセイでもあった。

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老師さんの表現において「搾取」など発生しうるだろうか。「他人の搾取を誘発する」などということもあり得るだろうか。本人は何ということもなくマンガを止めてしまているわけである。百歩譲って表現の影響論を過大に見積もったところで、「搾取の誘発」すらもあり得ないだろう。