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『ベーオウルフ叙事詩』の日本語訳本紹介(初心者さん向け)

ベーオウルフ叙事詩の日本語訳本を、初心者さん向けに紹介していくまとめ。 最後の方に意訳へのリンクなども。 まとめ内は全て敬称略です。 続きを読む
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@bgcaya

七五調なので頭に音で入って来ますし、しかも美しいから全編通して響きがひたすら気持ちいいのです。私の場合、音の心地好さで目がどんどん先に進んでしまい、内容の咀嚼の為に逐一立ち止まってブレーキをかけるところに気力が要りました。そのくらい文字を追わせる力、目を惹く力があります。

2019-01-23 03:25:10
@bgcaya

詩として読むには優れていても、初心者の“物語の読解”としては非常に難解。句読点の付け方(原詩のカンマやピリオドの位置をそのまま反映)で内容が整理されてはいるのですけれども、そもそも元の叙事詩の内容自体が理解に時間がかかるものなので……。

2019-01-23 03:25:40
@bgcaya

でも前書き内に三ページ弱を使っての物語のあらすじがあり、これは凄く分かり易いです。本編の内容がよく分からなかったら、この三ページで何となく掴んで、後は詩として堪能するのも良さそう。 美麗な翻訳、分かり易い翻訳、色々ありますが、これは化け物訳でした。

2019-01-23 03:27:47
@bgcaya

余談。私に宝くじが当たったら武蔵野書房と小川先生と青ニプロに連絡して中井さんに抑揚を抑えたやや低音でこの本を朗読してくださいって申し込むと決意しました。 あと心が思春期だから3072行の字面に目が捕まえられたのを許して欲しい。大人の型月ベオウルフクラスタさんここ読んで……。

2019-01-23 03:29:12
@bgcaya

⑧『古英詩大観』羽染竹一:編訳/原書房 今日残っている古英詩80編のうち43編の訳を収録。後半は『続』と銘打って刊行されてます。 特徴は、現代口語訳と頭韻。半行ごとにスペースが入っていますが、別に原詩との半行対訳ではありません。 pic.twitter.com/chTq5GHyzg

2019-02-06 08:09:48
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@bgcaya

半行ごとで見れば非常に分かり易い言葉を使ってくれている反面、頭韻の手法を重視している為、一文として読むとSVOC的な整理の意味で難解。初見さんに物語は飲み込み難いと思います。 しかし固有名詞補助がとてもしっかりしているので全体的なついていき易さはあります。二冊目、三冊目向き。

2019-02-06 08:18:59
@bgcaya

叙事詩6編(ベーオウルフ含む)、抒情詩(挽歌)7編、宗教詩10編。ほか、謎詩、動物寓意詩、学問と知識の詩、雑、のカテゴリ。 (これは図書館からの借り物でして、内容を訊かれても手元にないのでごめんなさい。いずれ購入したい所存。)

2019-02-06 08:22:00

3:書籍紹介・対訳本(原詩が収録されている)

@bgcaya

『原典対照『ベーオウルフ』読解』長谷川寛:訳/春風社 「ベオウルフ」が「蜂之敵」だったりと、固有名詞に独自の漢字をあてています。 巻末に註釈はありませんが、翻訳を更に分かり易く書き換えた文章のお陰で、読み手に与える物語への理解度は非常に高いと思います。 pic.twitter.com/fmAecrJhFe

2019-01-23 03:30:23
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@bgcaya

カバーから帯、栞紐や花布に至るまで、色使いと装丁がハイセンスで、個人的に内容とともにとても好きです。(写真が下手なので色の良さが全く伝わらなくてすみません。)

2019-01-23 03:31:35
@bgcaya

『ベーオウルフ 怪物破壊魔退治の巻(1)』長谷川寛:訳註/成美堂 1250行、第18節終了(グレンデル母の襲撃直前)まで収録されています。残念ながら(2)巻以降は発行されていないもよう。 ①と同教授の本ですが構成が全く違います。日本語訳も①→②で改訂されていました。 pic.twitter.com/nEGseYS1ro

2019-01-23 03:32:16
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@bgcaya

原詩側に色々書き込まれているところを見ますと、古英語のテキストとしては別の見方が出来るのかもしれません。ただ、物語を追うならば、訳文の読み易さと最後まで読める点でも①の一択。

2019-01-23 03:32:28
@bgcaya

『古英語叙事詩ベーオウルフ 対訳版』苅部恒徳、小山良一:編著/研究社 原文の横に半行ごとの日本語対訳を並べ、原文各語の現代英語での語彙解を下段に置いた構成。 小説的な文章形式を取らないので、「誰のどんな解釈でも良いので、まあ物語を一通り読めたら良い」という方には不向きです。 pic.twitter.com/jzTdXWWcnY

2019-01-23 03:33:11
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@bgcaya

しかしこの本があれば、読者側は訳者解釈の一方的受信をするだけに留まらず、能動的に読み幅を広げる事が出来る(気がする)優れもの。註解も豊富。ついでに、訳者さんがベオウルフの人格に関して高潔、清廉、というイメージで説明しているのが所々に窺えますから、そういう解釈が好きな人にも一押し。

2019-01-23 03:34:16
@bgcaya

『クレーバー第4版対訳 古英語叙事詩『ベーオウルフ』』吉見昭徳:訳/春風社 日本語訳部分が半行ごとにスペースを挿入している為に、原文との半行対訳かと思いそうですが、実際は原詩のピリオドやセミコロンごとの一文区切りでの訳になっています。 pic.twitter.com/bvglrYBJfW

2019-01-23 03:34:59
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@bgcaya

日本語訳自体は分かり辛い部類です。一人の人物が同場面で同じ相手に話し掛けている括弧内でも口調の統一がなかったりします。そもそも原詩が文構的に日本語に落とし込むには無理がありますから、敢えて直訳を重視したのかなと。

2019-01-23 03:35:40
@bgcaya

註釈は、社会背景や当時の常識など、これもまた他の訳本で得られない情報がたくさん。特に歴史背景がありがたかったです。 ①に続いて装丁の凝り方が好みな本その2。黒×赤×紺×金×銀で鉄板の格好良さ。入手されたらいそいそとカバーを捲ってみて欲しい。

2019-01-23 03:36:29

4:書籍紹介(番外)・二次創作小説 ※訳本ではない

@bgcaya

『ゲルマン英雄伝説』ドナルド・A・マッケンジー/東浦義雄:訳/東京書籍 叙事詩からで言いますと、冒頭のシュルド(スキュルド)の辺りと、ヘアルドレードの死因に伴うスウェーデンとの諍いの二点が大きな改変を受けています。前者はちょっとドラマチックに書かれ、後者はがらっと内容自体が変更。 pic.twitter.com/F3GtmDhe3K

2019-01-23 03:38:47
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@bgcaya

省略は……フィンの挿話が概略のみとなったり、ヘレモード&シイェムンド、モードスリューゾ、フレーアワル姫などの挿話類はごっそり削除。後はウィーイラーフが取りに行った竜の財宝の描写がないのと、ウンフェルスはフルンティングを貸す場面にしか登場しない、くらいでしょうか。

2019-01-23 03:39:14
@bgcaya

文章を綴る順番に入れ替えがなく、原詩に忠実な描写が非常に多い為、一部の改変を除けばほぼダイジェスト版。初めて読む“小説”ならまず推薦します。ここから訳本に入れば違和感は少なさそう。家系図もあって手厚いです。

2019-01-23 03:39:40
@bgcaya

『サトクリフ・オリジナル7 ベーオウルフ 妖怪と竜と英雄の物語』ローズマリー・サトクリフ/井辻朱美:訳/原書房 『ゲルマン英雄伝説』同様、初心者に理解難易度が高い部分(国家間の関係や戦争、各種挿話)を省いてあります。削りっぷりはこちらが上。 pic.twitter.com/0sLDobidP7

2019-01-23 03:40:22
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@bgcaya

更に導入部分は完全オリジナルで書き換え、オリジナルキャラクターを出したり、オリジナル要素の加味・改変を多数加えて再構成し直されています。グレンデル退治と竜退治に的を絞り、読み易く胸熱な英雄譚仕上げという感。オリジナル色は比較的強めでも味付けが非常に巧み。広く万人向けの面白さです。

2019-01-23 03:41:41
@bgcaya

『ベーオウルフ』ローズマリー・サトクリフ/井辻朱美:訳/沖積舎 こちらは②の旧版。原書房版はこれから改稿(固有名詞が忍足版に寄せられている)がなされての再出版。表紙絵担当が山田章博という点を大きく推したいです。絵を楽しみにする方の為に、あえて表紙は映していません。 pic.twitter.com/O8NU3vDLXJ

2019-01-23 03:42:24
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@bgcaya

③『カラー版名作全集 少年少女 世界の文学 イギリス編3』小学館 (※多数収録されている物語のうち、『ベオウルフ物語』の担当は、文:内野富男/絵:柳柊二) 基本の流れは原作を踏襲しつつサトクリフ版より細かく改変という感じ。 pic.twitter.com/xgotES6HCk

2019-02-06 08:30:17
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