ただの人間でも顔をエルフに整形したらモテモテになって大成功した話

整形というより特殊メイクかしら。 毎晩、半分寝ながら垂れ流したやつだから俺にも何が書いてるかはよく分からないぜ! 「魔法使いハウルと火の悪魔」は超面白いよ。 続きを読む
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帽子男 @alkali_acid

「そんなこったろうと思ったぜ」 「いちゃつくのは後でやってもらうことにして」 「俺達の呪いはどうなったんだ女王様よ」 そろそろよかろうと小人達が喚き出す。 仙女はにっこりした。 「もちろん解けたわ。あなた方は自由の身。人間の下働きをしなくてもよいの」

2019-01-24 02:05:40
帽子男 @alkali_acid

「やったぜ!くそったれなただ働きとはおさらばだ!」 「エルウィンデルの野郎もくたばったし…おっとあのいけ好かない方のな…俺達はまたたっぷり稼がせてもらうぜ」 小人達が跳ね回るのを見ていた妖精の女王は、不意にかがみこんだ。 「鋏を貸してもらえるかしら」

2019-01-24 02:07:40
帽子男 @alkali_acid

「何だと」 「また何か企んでんのか」 「俺達を切り刻もうってのか」 だが結局とんがり帽子の頭領がしぶしぶ仕事道具を渡した。 仙女はきらめく金髪をひと房断って巻くと、鋏に添えて差し出した。 「さあ。持ってゆきなさい」

2019-01-24 02:10:24
帽子男 @alkali_acid

「こいつは…」 「どういう風の吹き回しだ」 「畜生!なんてきれいなんだ!これで革を縫い合わせたら!」 「千年だって保つ靴が作れるぜ!」 はしゃぐ小人達に、女王はゆっくり落ち着かせるように話す。 「トムを助け七里靴をしあげた褒美です…それとかつてあなた方小人が妖精の名誉を守ったお礼」

2019-01-24 02:12:53
帽子男 @alkali_acid

小人達はさっと髪と鋏をひったくると、ぽかんとしている少年の背後に逃げ込んだ。 「何のことか分からねえな」 「飛脚のエルウィンデルの件はもう終わったんだ」 「蒸し返すのはやめようぜ」

2019-01-24 02:14:36
帽子男 @alkali_acid

女王は立ち上がった。 「そう。ここで話すべきことではないでしょうね。ところでトム。どう?妖精の国はあなたを歓迎するわ。素敵な靴を作ってくれるかわいらしい職人さんはきっと宮廷の人気を博するでしょう。おいでなさいな」

2019-01-24 02:16:24
帽子男 @alkali_acid

小人達は抗議の合唱を始めた。 「何を言ってやがる図々しい!」 「トムは俺達と地下の小人の国へゆくのさ!」 「お前はまだまだ半人前…いや四分の一人前ってとこだが」 「あそこで仕込めば、石工から船大工、金細工に銀細工、楽器作りまでなんでもこなせる本物の親方になれるぜ」

2019-01-24 02:18:22
帽子男 @alkali_acid

呪いの人形が蟻を押しのけて意見を述べた。 「ああ諸君。思うに、妖精や小人だの遅れた無知蒙昧な種族のもとに行っても、年少者の教育のためにはならん。トム。お前は俺の生徒としていちから本物の学問を修めるべきだ。隣国の都には錬金術を勉強する専門の学舎がある」

2019-01-24 02:20:40
帽子男 @alkali_acid

「そこなら俺をもう一度人間に戻す方法も…」 少年は貧乏ゆすりを我慢できず、ひたすら答えあぐねてもじもじした。

2019-01-24 02:22:32
帽子男 @alkali_acid

伯爵家の侍女が咳払いする。 「トム…その…そこで話している…ものたちは…なんだ」 「エルフ…ノーム…レイス…」 伯爵家の令嬢がかわって答えてから、新たな問いを発した。 「見える…聞こえる…あなたの…お友達ですか?エルウィンデル」

2019-01-24 02:24:27
帽子男 @alkali_acid

「あのう…多分…はい」 トムあるいはエルウィンデルが何とか返事をすると、ハイウーンはうなずいて立ち上がり、ふらつきながらそばへ寄ると、長いかいなを伸ばし、小さな体を抱き寄せ、しっかりと包み込んだ。 「素敵ですね…でも…私を置いてもう…どこへも行かないで」

2019-01-24 02:27:09
帽子男 @alkali_acid

「えっと…えっと…はい…」 小人達は鼻を鳴らしたが、文句は垂れなかった。 妖精の女王は煌めく金髪をゆすって、ゆっくりと薄れ遠ざかっていく。 「それではまたね」

2019-01-24 02:28:55
帽子男 @alkali_acid

侍女は一瞬息を詰まらせてから、すぐ口元をほころばせた。 靴屋は姫君の体温を感じながらじっとしていた。今度は一緒に七里靴を履いて、一角獣の住む氷の国や、鰐の住む獣の国へ出かけられたら、どんなに楽しいだろうと考えながら。 「たぶん…作れる…もう一足ぐらい」 「何ですか」 「ううん…」

2019-01-24 02:32:29
帽子男 @alkali_acid

エルフの血は引かないが、エルフの名を持つ貴公子は、答えの代わりに愛する貴婦人を抱き返した。

2019-01-24 02:35:21
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