医療のインフォームドコンセントと契約のオプトイン・オプトアウト

最近(2018年末〜2019年1月)の様々な出来事を知り、医療のインフォームドコンセントと契約のオプトイン・オプトアウトについて、感じたことをツイートしました。
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MIZUNO Yoshiyuki 水野義之 @y_mizuno

何かの調査でオプトアウト(デフォールトで参加希望と解釈し、希望しない人は申し出る)と書いておく方法もあったと思う。 この逆がオプトインで、日本ではそれが暗黙の了解かもしれないが、最初からオプトアウトという方法もあったのだろうとは思う(例えば最高裁判所裁判官の国民審査みたいに)。

2019-02-04 21:03:10
MIZUNO Yoshiyuki 水野義之 @y_mizuno

私はここ18年ほど医療倫理の勉強会をやってきたし、京大医学部・附属病院の「医の倫理委員会」委員を最近やっているので、この間「インフォームドコンセント」の思想が急激に変化してきたことを、つぶさに見聞きしてきた。オプトアウトとオプトインの混乱と理解の難しさを知るにつけ、辛いものがある。

2019-02-04 23:08:26
MIZUNO Yoshiyuki 水野義之 @y_mizuno

少し解説。オプトインとオプトアウトの考え方の違いは、知っておいて損はない。オプトインとは、オプションでイン(やる)、デフォールトでアウト(やらない)。例えば、何かの登録で基本は追加サービスを受けない、しかし希望者はチェックマークを入れてサービス希望を明示する。これがオプトイン。

2019-02-21 22:59:27
MIZUNO Yoshiyuki 水野義之 @y_mizuno

承前)オプトアウトの分かりやすい例は、最高裁判所裁判官の国民審査。これはデフォールトでイン(認める)でオプトアウト(認めない場合だけ意思表示)。仮にこれがオプトインだと大変。つまりデフフォールトでアウト(認めず)、相応しいと思う裁判官だけ◯をつける方式なら殆ど誰も審査に通らない。

2019-02-21 23:12:02
MIZUNO Yoshiyuki 水野義之 @y_mizuno

承前)オプトインとオプトアウトは、何かの契約で必ず出てくる考え方だ。実施する側は一般にいいことをやっている積もりだから、オプトアウトつまり何も意思表示がない場合は認めていると思い込んでしまうことが起こりうる。オプトインとオプトアウトは、まったく異なる結果を招くので要注意だと思う。

2019-02-21 23:17:33
MIZUNO Yoshiyuki 水野義之 @y_mizuno

医療倫理にインフォームドコンセント(IC)という言葉がある。この言葉の理解は難しいと思う。ICの同意書は、下手すると、医者が医療訴訟を起こされないための念書と解釈されかねない。しかしまるで逆。ICは医者のためではなく患者のためのもの。患者が自分で選んだことの宣言の書が、ICの同意書だ。

2019-02-21 23:43:52
MIZUNO Yoshiyuki 水野義之 @y_mizuno

承前)インフォームドコンセント(IC)は患者のための考え方だ。それは自分の体に、医者の意図的な侵襲(手術とか切ったりとか)を許すのは、自分のことだからこそ自分で決める。患者の側に、その自己決定権の自覚が絶対に必要だ。この意識が日本では弱いので、ICの普及は遅れ、誤解も止まらない。

2019-02-21 23:48:37
MIZUNO Yoshiyuki 水野義之 @y_mizuno

承前)インフォームドコンセント(IC)を含む医療倫理が、医師の国家試験に必須問題として出るようになったのは、そんな前のことではない。だからICの意識は、年配の医師と若い医師とではまったく違うというのは、よく聞く話だ。だから例えば行政の方々が、ICの考え方に慣れていないのも無理はない。

2019-02-21 23:52:44
MIZUNO Yoshiyuki 水野義之 @y_mizuno

承前)インフォームドコンセントこそ、オプトインの考え方の典型で、明示的なコンセント(同意)を要求する。つまり医師が提示する治療の選択肢への、患者の明示的な同意が必要だ。昔はこんなものは不要で、医師が最善と信じる方法で治療していた。こういう考え方を医者のパターナリズムと呼ぶ。

2019-02-21 23:59:53
MIZUNO Yoshiyuki 水野義之 @y_mizuno

承前)パターナリズムとは、パパさん主義、つまりパパの言うことを聞いておきなさい、悪いようにはしないから。しかし1960年代のアメリカで増えた医療過誤や医療訴訟の結果、アメリカやカナダで出てきた患者中心の医療のあり方。これが、患者の自己決定権の自覚とインフォームドコンセントの考え方だ。

2019-02-22 00:03:30
MIZUNO Yoshiyuki 水野義之 @y_mizuno

承前)医師のパターナリスムは根が深くて、専門家たる医師の中には当然、自分の提案が最善だと信じる人々は多い。今も某医学部の医療倫理委員会でそんな方を見かける。専門家が自分の医療に自信があるのは当然だ。しかし複数の選択肢から悩んで選ぶのは患者である。なぜなら自分の体のことだから。

2019-02-22 00:10:01
MIZUNO Yoshiyuki 水野義之 @y_mizuno

承前)契約におけるオプトインとオプトアウトの考え方が、医療倫理のようなところにも関係するのは、ある意味で驚くべきことだ。しかしこの違いの自覚は難しくて、ついついサービス提供側は無自覚になりがちだ。なぜなら自分の提供するサービスが最善だと思うからこそ、それをやっているのだから。

2019-02-22 00:14:52
MIZUNO Yoshiyuki 水野義之 @y_mizuno

承前)インフォームドコンセントは、それだけでは成立しないことの自覚も重要だ。だからこれを説明する時は常に「患者の自己決定権の自覚と」インフォームドコンセント、という言い方を私はしている。実際には、お医者様にお任せします、という人が多いのが現状だが、その状況では、これは成立しない。

2019-02-22 00:21:10
NWA @rapperh8k

興味深い。この一連のツイートにある「パターナリズム」「患者視点(本人本意)」の対立と両者の間での揺れ動きってのは医療だけじゃなく世の中のいろんな所にありそう。 twitter.com/y_mizuno/statu…

2019-02-22 00:22:57
MIZUNO Yoshiyuki 水野義之 @y_mizuno

@rapperh8k コメントありがとうございます。その通りだと思います。

2019-02-22 00:40:49
MIZUNO Yoshiyuki 水野義之 @y_mizuno

承前)インフォームドコンセントの成立の前提には「自己決定権の自覚」、つまり近代的な自律的な個人の存在がある。しかし日本社会ではそれを常にどこでも期待するのは難しい。医者に任せる、行政に任せる、と思う人も多くいそうだ。医者の意識も、行政の意識も変わるのに時間がかかるという面もある。

2019-02-22 00:29:42
MIZUNO Yoshiyuki 水野義之 @y_mizuno

承前)日本社会はこの意味で、変化の途上にある気がする。その途上でサービス提供側が良かれと思って、明示的に意思表示しないサービス利用者を想定しても、契約文中の文言と齟齬を来たす事象が発生する可能性がある。こういう時は事前に、契約でのオプトインとオプトアウトの違いを思い出してほしい。

2019-02-22 00:39:58
NWA @rapperh8k

トゥギャっていただいた。「パターナリズム」はビジネスでもアカデミアでもプライベートでも現れるし、自分が陥っている時には気づかなかったりする。この一連のツイートは医療における重要な論点を突きつつも、社会一般に示唆を与えるものと思う。 twitter.com/y_mizuno/statu…

2019-02-22 01:14:33
MIZUNO Yoshiyuki 水野義之 @y_mizuno

@rapperh8k あなたのツイートをトゥギャりました。読んでいただけると幸いです。 togetter.com/li/1321613

2019-02-22 00:57:43
ブルーレット・ヨコハマ @anb10772

この一連のコメント拝見して、そういえば「インフォームドコンセントだとやっぱり医師主導の選択肢への同意になるので、医師は誘導せず選択肢のみを与え患者が選ぶことに重点を置くインフォームドチョイスにしよう」って話、あれ最近聞かなくなったな。 まぁ正直素人判断に限界あるのも否めないけど。 twitter.com/y_mizuno/statu…

2019-02-22 00:52:20
MIZUNO Yoshiyuki 水野義之 @y_mizuno

@anb10772 なるほど。インフォームドコンセントの法理も、おそらく拡張されていて、ほとんどインフォームドチョイスというべき想定を包含しているから、ではないでしょうか。例えば、選択肢の提示に加えて、患者の意思決定の撤回権も保証する考え方になる、あるいはセカンドオピニオンの機会を保証するなどで?

2019-02-22 01:05:47
ブルーレット・ヨコハマ @anb10772

@y_mizuno コメントありがとうございます。 おそらくそうですね。僕も専門家ではありませんし、インフォームドチョイスの概念を提唱されてるのを知ったのも古いのですが、おっしゃる通り患者さん側の権利を担保する環境が十分整った中で、すでに普及したタームを敢えて変えなくてもよいとなったかもしれません。

2019-02-22 01:09:56
ブルーレット・ヨコハマ @anb10772

結局のとこ、どちら主導がよいかというより、医療従事者と患者さん、ご家族が共通の問題を解決するためにチームとして機能するか、そのためのコミュニケーションや専門家の善意、患者の専門家への信頼は担保されてるかが本質なんじゃないかと。とくに個人主義を安易に適用できない日本ではなおさら。

2019-02-22 00:56:25
MIZUNO Yoshiyuki 水野義之 @y_mizuno

@anb10772 はい、そういうような気がしています。チーム医療のようなあり方は、最近の地域医療においては、ほとんど制度化されつつあるような。例えば、(これは医療ではないですが介護福祉の分野で)「地域包括」と俗に言われる地域包括支援センターの制度などのことですが。

2019-02-22 01:10:04
ブルーレット・ヨコハマ @anb10772

@y_mizuno 制度化が進んだことは評価したい一方、医療従事者の皆さんに過度な負担がかからない配慮(とくに人員配分)も欲しいですね。 福祉もそうですが、行政はえてして制度化し数合わせしたらそれで仕事をしたことにしがちですし(ハコモノと同じかと)。 医療と福祉のブラック化の解消と並行して欲しいです。

2019-02-22 01:15:14