日向倶楽部世界旅行編第76話「それぞれの想い」

三隈グループ @Mikuma_company

「私が前に行くの、切り崩すのよ。」 筑摩はそう言って、前に行こうとする。だがそれを今度は利根が止めた。 「やめんか、ここは我輩が行く、いつもそうしているではないか。お主は我輩の後に続いて、手伝ってくれれば良いのじゃ。」 利根は諭す様に、優しく言った。

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しかし、筑摩は声を荒げた。 「イヤよ！またそんなの！」 「なっ…」 彼女は眉間にシワを寄せ、驚く利根に向けて続ける。 「私だってもう、艦娘として戦えるわ！力もある！なのに姉さん、いつもいつも前に出て…」 「それはお主が怪我をすると困るからじゃ、たった一人の妹なのじゃぞ。」

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利根は筑摩を宥めるが、筑摩は止まらない。 「じゃあなんで、なんでいつも勝ったら私を褒めるの？姉さんいつも、筑摩のおかげ筑摩のおかげって、助けてるのはいつも姉さんじゃない！」 「それは真の事を申しておるだけじゃ、お主のお陰で我輩は…」 「ウソよ！私の事気遣ってくれてるだけだわ！」

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筑摩はヒステリーを起こしつつ叫ぶと、深く息をしながら言った。 「…姉さんだって、私にはたった一人の姉さんなのよ。このまま前に立つ姉さんの背中だけ見てたら、私はいつか後悔する…」 彼女はそう言って前を睨むと、巨大な飛行甲板型の武器、「飛甲剣」を構える。

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「姉さんの言う事、私いつも聞いてたけど、今は聞かないわ、何と言おうと私が前に行く。艦娘になって、晴嵐の波紋もある…負けるもんですか。」 筑摩は険しい顔をして言った。 今まで、筑摩は利根に声を荒げたりしなかった。姉の言う通りにして、とても仲良く過ごしていた。

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だから、初めて声を荒げたその姿は、利根にとって衝撃であった。故に、その意思が固いものである事も理解出来た。 「うむ…分かった。今日はお主が先陣を切る、それで良い。」 「えっ…？」 頷く利根に、筑摩は戸惑う。てっきりもっと、強く止められると思っていたからだ。

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そこへ利根は、優しく言った。 「何…声を荒げてまで伝えて来たお主の想い、無下にする事は出来ぬ。本当にお主は、強く優しい子じゃ。」 「姉さん…」 先程までと違い、筑摩は穏やかさのある表情で呟く。そんな彼女に、利根は優しく、しかし厳しくもある声で言った。

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「その代わり、何かあれば我輩はお主をすぐに助ける。そして、決して無理はしない、この二つは守ってもらうぞ？」 庇護の姿勢は崩さない、利根がそういう方針を伝えると、筑摩は微笑んで頷いた。 「うん、分かったわ。一緒にあいつらを倒しましょう！」 「うむ、そうしよう。」

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利根が笑って答えると、筑摩は嬉しそうに、彼女の前に立つ。 「任せて、私だって強くなったんだから…やってみせる！」 彼女は飛甲剣を構え、力強く言った。 「フフッ、頼りにしておるぞ。」 その背中を見守りながら、利根も両腕を構え、臨戦態勢を取る。

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そして筑摩は姿勢を整え、加速する。その後に利根も続き、姉妹は前方の敵を目指して突き進み始めた。 (見ててよ姉さん…もう、姉さん一人じゃないんだから…！) 意識を集中させ、筑摩は飛甲剣を強く握り締めた。 〜〜

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〜〜 「来るぞ伊勢、構えろ…」 利根姉妹の前進を察知した日向は、真剣な目つきで言った。それに伊勢も、低い声で答える。 「そうだねぇ…気合い入れて、頑張らないと」 日向と並走しながら、彼女は前を見据え、甲板と刀を構えた。

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(晴嵐の波紋…赤色ねぇ…。さて、横須賀はあれから何処まで研究を進めたのか、よーく見させてもらうよ…) 伊勢の刀が、淡く青い光を纏う。 いくつもの想いと思惑が交錯する中、準決勝第二試合が始まった。 第76話 「それぞれの想い」 おしまい

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【晴嵐の波紋】 扶桑と利根姉妹が操る未知の力。 正体は全くの不明で、エネルギーという事だけが推測出来る。 だがそのエネルギー、特に扶桑の操るそれは強力なもので、岩を粉々に砕く事から、桜のひと枝に花を付ける事まで出来てしまう。 赤く淡い光を伴うのが特徴。

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【瑞雲の鼓動】 最上と日向が操る未知の力。 正体は全くの不明で、エネルギーという事だけが推測出来る。 晴嵐の波紋と同質の力である可能性があるが、詳細は不明。日向達は甲板などをエネルギーで包み、頑丈にする様な使い方をする。 緑の淡い光を伴うのが特徴。

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【青い閃光】 伊勢の操る未知の力。 正体は全くの不明で、エネルギーという事だけが推測出来る。 瑞雲の鼓動と同質の力である可能性があるが、詳細は不明。伊勢はエネルギーを弾として放ったり、解放したりする事で衝撃を放つ使い方をする。 青く淡い光や、鋭い光を伴うのが特徴。