日向倶楽部世界旅行編第80話「決勝戦開幕」

ブルネイ泊地海上スタジアムオープン記念タッグマッチ、激闘に次ぐ激闘が繰り広げられた大会の頂点を決める戦いが始まった。
0
三隈グループ @Mikuma_company

「筑摩、もう安心じゃ、我輩がついておる!」 利根は筑摩を連れ、一時足柄から距離を離す。足柄との交戦、筑摩には少なからず被弾があった。足柄を足止めし続けるというのは、例え彼女が片手間であっても厳しいものだったのだ。 「姉さん…私、上手くやれた…!?」

2019-04-02 22:06:38
三隈グループ @Mikuma_company

飛甲剣を構えながら、筑摩は姉に問う。すると利根は、にこやかに笑って言った。 「ああ、よくやったぞ!これで相手は一人、我らが連携を阻む者はおらぬ、お主のおかげじゃ!」 彼女はそう言って筑摩を労う。優しい姉の言葉に、筑摩もにっこり微笑む。 「やった…私、姉さんの力になれたのね…!」

2019-04-02 22:07:33
三隈グループ @Mikuma_company

拙いものだが、姉との連携が取れた、筑摩はこの戦いにそういう手応えを感じていた。しかし満足してはいない、まだ、勝っていないのだ。 「でもまだ、あいつを倒せてないわ。姉さん…一緒にあいつを倒しましょう!」 筑摩は離れた足柄を指差し、巨大な飛甲剣を軽々と一振りする。

2019-04-02 22:08:50
三隈グループ @Mikuma_company

そんな妹に、利根は一瞬躊躇ってから口を開いた。 「…うむ!そうじゃな、奴を倒して優勝の栄冠を勝ち取ろうぞ!」 「任せて!私、絶対に上手くやるから!」 姉妹は離れた足柄に、溢れる戦意を向けた。 決勝戦の決着は近い。 〜〜

2019-04-02 22:09:53
三隈グループ @Mikuma_company

〜〜 「足柄さん…すいません…」 最上は浮き袋で浮きながら足柄に言う。手も足も出なかった、読みを完全に返された、完敗である。 (前に戦った時は、ここまで強くはなかった…逆転の芽があった。でも、あの人はボクの想像以上に、強くなっていた…!)

2019-04-02 22:11:03
三隈グループ @Mikuma_company

流石の最上も、この結果には悔しさを顔に滲ませる。艦娘は仕事であるが、それはそれとして負けるというのは嫌なものなのだ。 そんな彼女からの通信を、足柄は何も言わずに切ると、黙ったまま前を見つめる。 視線の先では、利根姉妹が言葉を交わしていた、強く結ばれている様な二人がいた。

2019-04-02 22:12:06
三隈グループ @Mikuma_company

それを見て、足柄は呟く。 「一人…ね。」 彼女は爪のついた二本の主砲、灰狼爪を構える。圧倒的劣勢、観客達の大半は、ここまでの試合、そしてこの試合と、圧倒的な力を見せつけてきた利根姉妹の勝利を確信しつつあった。 ただ一人、足柄だけが純然と闘志を燃やしていた。

2019-04-02 22:13:37
三隈グループ @Mikuma_company

(一人…そう、ここからは一人きりよ) 足柄は独白し、目を閉じる。 時が止まる、また、何も聞こえなくなった。聞こえるのは遠い記憶、忘れ得ぬ闘志が燃える音、それだけ。 目を見開く、強い海風が背中から吹き、長い髪が乱れる様に揺れた。

2019-04-02 22:14:33
三隈グループ @Mikuma_company

足柄は言う。 「…那珂、しっかり、見てなさいよ…!」 スタジアムに灰色の雲が迫り、空が暗くなる。海風は更に強まり、水面を激しく揺さぶり始めた。 嵐が近い。 空模様は、映し鏡。 第80話 「決勝戦開幕」 おしまい

2019-04-02 22:15:32