日向倶楽部世界旅行編第80話「決勝戦開幕」

三隈グループ @Mikuma_company

「晴嵐、波紋天衣ッ！」 水飛沫が上がり、赤く、淡い光が利根を包み込む！ 「…！何をしたんだ！？」 それは初めて見る行動、最上は警戒しながら主砲を撃つ。利根はますます接近している、腕の小手甲板で防がれる事を加味しても、十二分に命中が見込める攻撃！

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が！ 「何…！？」 弾丸は利根に命中するどころか、その前で爆発した！ 「言ったであろう、一気にカタをつけると！」 爆煙を突っ切り、無傷の利根が最上に迫る！ 「最上ッ！迎撃しなさい、何度も防げるものじゃないはず！」 最上を救援すべく足柄は横から撃つ、されどそこに筑摩が迫る！

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「姉さんの邪魔はさせないわ！」 筑摩は飛甲剣を盾に構え、連装砲を撃つ。そこへ足柄は舌打ちしつつ砲撃を返す、使っているのは片手だけだ。 「片手…！舐められてるの！？」 筑摩は憤る、足柄は片手で筑摩に応戦しつつ、残りで最上の援護を行なっていた、彼女にしてみれば屈辱である。

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だがそれは攻撃の手が比較的緩いという事、筑摩はこれに対し突撃で応戦する。 「ハァァァァッ！！！」 砲撃を避けつつ飛甲剣を振りかぶり、吶喊、突貫！足柄との距離を一気に詰める！ 「鬱陶しいわね…！」 足柄は眉を顰めつつ砲撃、位置取りに気を配りつつ対処する！

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複数を同時に相手取るのは慣れている、問題はない。だが一気に追い立てられている最上の救援を両立するとなると、筑摩の存在は大きなノイズだ！ 「姉さん、今のうちに！」 足柄を全速で追いながら筑摩は叫ぶ、僅かではあるが時間は確実に稼げていた、利根はその間に最上を攻める！

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「うむ…筑摩、すぐにそちらへ行くぞッ！」 最上の砲撃を完全に防ぎつつ間合いを詰めた利根は、そのまま最上を叩く！ 「捕まえたぞッ！」 「ヤバい…！」 「滾る血潮が我が身を揺らす、唸る波紋が汝を揺さ振る！晴嵐、波紋掌底ッ！」 波紋エネルギーを帯びた掌底打ちが放たれる！

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最上は咄嗟に甲板を構え、これを防ぐ！ 「パ、パワーが大きい…！」 だがその衝撃は凄まじい！最上の腕には強い負荷がかかり、彼女の身体は後方へと大きく押し出される！最上は必死に重心を動かし、なんとかバランスを保つ。 (退けられて少し距離が出来た…仕切り直すなら今しかない！)

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利根とほんの少し距離が出来た、しかし追撃はすぐにでも来るだろう、最上は反撃すべく主砲を構える！ 「使うなら今だろう…！」 彼女は目を細め、甲板で顔を覆いながら、利根に向けて砲撃をぶちかます！ 「無駄な足掻きを、今仕留めてやろうッ！」 そこへ、利根は飛び込む！

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だが最上の目的は、命中弾ではない！ 「ピンチはチャンスの裏返しだ…！」 最上の放った弾丸は、彼女と利根の間でまばゆい閃光を放つ！ それは改造された照明弾！予選からずっと最上が隠し通して来た切り札！一騎当千の猛者といえど、視界を奪われれば隙が出来る、単純にして強力な切り札だ！

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ほとばしる光を最上は甲板で防ぎ、視界の奪われた利根へと反撃の牙を剥く！ が！ 「…ッ！？」 甲板を退け正面を向いた最上の前に、利根が居ない！あるのは激しく舞い上がった水飛沫の跡、きらきらと輝く小さな虹だけ！ 「何処に…いや、上しかない！」 最上は素早く上に目を向ける！

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するとそこでは、跳躍した利根が笑みを浮かべていた！ 「ククク…窮地に陥ると目くらましを行う、上司と部下でよく似ておるわッ！」 「読まれてたのか…とっておきなんだけどな…！」 最上は息を呑む、完全にバレていた！それでも慌てない、すぐに迎撃に切り替える！

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最上の砲撃は利根を狙う、だが当たらない、空中を蹴り飛ばして跳躍し、利根は軌道を変えながら避け続ける！ その中で、利根はふと口を開いた！ 「最上よ！」 「何！？」 「目くらましというのは奥が深い！例えば如何にして相手の視界を遮るか、お主の得意とするところはそれじゃな！」

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話しかけてくる利根を最上は訝しむ、訝しみつつも、空中を飛び回り、いつ接近するか分からない彼女から目を離す事は出来ない。 「それがどうした！」 状況を打開したい、それには僅かでも時間が必要だ、最上は利根との問答に付き合うべく答える。 そんな彼女に、利根は言った。

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「いや…目くらましというのは、視界を塞ぐだけではない。視界が開けてるからこそ、上手くいくものもある。」 「…！？」 利根の言葉に、最上の表情が揺れる。そこへ利根は、ニヤリと笑って言った。 「例えば…"目を離せないものに目を向けさせる…"とかかのぅ…？」

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彼女がそう言った瞬間、最上に嫌な予感が走る！ 「なっ…！」 視線を利根から水平線に下ろした瞬間、彼女の視界には迫り来る赤い光弾が現れたのだ！ それらは最上を追尾する誘導弾！既に目と鼻の先、回避は間に合わない！ 「くそっ、いつの間に！」

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準決勝の録画を見ていた為、砲撃を加えれば落とせる事は知っていた、最上は砲撃を放ち迎撃する！ しかし光弾は一つではない、最上の背後からもう一つの光弾が迫る！ 「…ッ！」 間に合わないと悟り、息を呑む最上。だが次の瞬間、迫る光弾が砲撃によって弾け飛んだ！

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「足柄さん…！」 その砲撃は足柄のもの！筑摩の相手をしつつ、彼女は最上を狙う光弾を撃ち落とす！ そして足柄は、最上に叫ぶ！ 「最上ッ！奴から目を離すんじゃない！」 その言葉を受け、最上は再度視線を空へ向ける！ だが！ 「もう遅いッ！母なる大地よ、我に星の加護を授け賜う！」

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利根は既に最上を、捉えている！ 「晴嵐！波紋流星ッ！」 天空から降り注ぐ凶脚が、最上を襲う！ 「くそッ…だけど！」 最上もただでは倒れない、辛うじて甲板のガードを間に合わせる！ しかし波紋流星の衝撃は想像を絶する！甲板でのガードを衝撃が貫き、最上の左腕に激痛が走る！

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「く、くそッ…！なんてパワーだよ…！」 だが最上、仰け反り、大きく弾かれつつもなんとか防ぎ切る！ それでも利根の猛攻は終わらない！彼女は波紋流星を叩き込んだ衝撃で再跳躍、空に宙返りをし、そのまま！ 「集えよ蛍火！晴嵐、波紋光弾ッ！」 両手から赤い光弾を放った！

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「まだ来るのか…！」 最上は立て直し切っていない体勢のままなんとか回避、足柄の支援射撃もあってギリギリで粘る！ そこに希望を断つ一撃が迫る！空中を蹴って加速した、利根が迫る！ 「これで終わりじゃッ！」 しかし最上、ここに逆転の芽を見出した！よろめきながらも主砲を構える！

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「その攻勢は慢心だッ！」 高速で、それも真っ直ぐに迫り来る相手、ここまで砲撃を当てやすい相手はいない！見てからでは避けられない一撃、最上は渾身のそれをぶちかます！ が！ 「な…ッ！？嘘だろ…！」 利根は空中に手を付くと、そのまま勢い良く前転！最上の砲撃を避けた！

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「窮鼠猫を噛む…しかし、鼠が出来るのは"噛む"事だけ！それさえ読めれば、封殺は容易いッ！」 利根は既に、最上の裏へ回り込んでいた。 「唸る血潮が我が身を揺らす…唸る波紋が汝を揺さぶる…晴嵐、波紋掌底ッ！」 利根の波紋を帯びた掌底打ちが、最上の艤装に叩き付けられた。 〜〜

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〜〜 策というのは、しばし圧倒的な力に蹂躙されてしまう事がある。 「く…くそっ…！何がダメだった…！？」 展開された浮き袋にしがみ付き、最上は水面を睨む。戦闘不能だ、利根の奇襲とも言える強襲、圧倒的な実力、彼女は物の見事に捩じ伏せられてしまったのだ。

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「さあ開始早々試合は急展開、Wヴィーストの最上が脱落、Wヴィーストは足柄一人となってしまいました！対する横須賀利根姉妹、利根は無傷、筑摩は被弾が目立ちますがまだ戦えます、試合の趨勢が早くも決まりそうな展開です！」 実況は大きな声でマイクに向かう。

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彼の言う通り、いや、試合を見守る殆どが横須賀利根姉妹の圧倒的な優勢を判断した。 決勝戦、実力の拮抗した者同士の二対一、どう考えても二人が勝つ。 「筑摩、大丈夫か！？」 倒した最上に微塵の興味も示さず、利根は足柄と交戦する筑摩の方へと向かい、彼女を守る様に動く。