ギガベース日誌 ACT07「CREATED VICTIMS」08

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「マジで節操無さ過ぎだってあいつら！沈めた傍から浮かんでくるんだもん」 被弾も無く、普段の調子を保っている北上と大井だが、その表情には陰りが混じっている。 続いて、片腕を失った時雨を抱えた陽炎がハッチに駆け込んできた。　#ギガベース日誌

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「ほら！約束通り無事に連れてきたでしょ！しっかりなさいな！」 「うぅ……ごめんよ」 時雨はその顔から血色を失いながらも、陽炎の支えを借りどうにか立てている状態だった。 「こんな所でへたったらアンタのアカウント勝手に消すわよ！いいの？」 「それは、困るかなぁ……」　#ギガベース日誌

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「ほっといても勝手に凍結されるでしょーが。妖精は今さっき利根を連れてったから私が……」 陽炎から時雨を預かろうした北上だが、時雨の異変を察し咄嗟に身を引く。　#ギガベース日誌

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「パルヴァライザーDD-65807」 「はっ？しぐっ……」 時雨が陽炎の頭を鷲掴み、そのまま腕力に任せ千切り取る。 千切った生首はそのまま腹部に叩きつけられ、潰れた肉と脳漿と共に、きらきらとした粒子光が陽炎の腹部から漏れた。 「戦闘開始」 「……マジでぇ？」 「北上さんっ！」　#ギガベース日誌

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時雨だったものが北上に砲を向けるより早く、大井が丸腰のままに突貫。頭部に膝を叩き込む。 倒れた時雨を踏みつけた北上は、陽炎の死体から拝借したコジマライフルの先端を頭部に叩きつけ粉砕した。 「いよいよ味方殺しかぁ。この北上さまも流石におセンチになっちゃうかなぁ」　#ギガベース日誌

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時雨だったものの残骸を北上がハッチから蹴り飛ばすと同時に、スピーカーから大淀の声が響き渡る。 「全艦に通達します！上陸攻撃任務から帰投した艦は補給と修繕を完了次第即時の再出撃を願います！ギガベースは現在多数のflagshipクラスに包囲されています！全力の迎撃を！！」　#ギガベース日誌

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「大淀も焦ったりするんだね～」 状況が不利に傾いていく一方で、北上の口角は釣り上がっていた。 「言われなくても出るさぁ。こんな戦場、2度あるかわかんないもんね」　#ギガベース日誌

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「ポイントB-104付近の深海棲艦、長距離砲撃を開始！」 「新規の艦載機隊を捕捉！総数446機！」 「墜落したアンサラー型から発射された大型ミサイルを確認！フレアで応対します！」 混迷を極めるギガベース艦橋。大淀は血走った目を見開きながら、変化する状況への対応策を打ち出す。 #ギガベース日誌

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「大宮技術長ッ！！」 「はい、なんでしょう」 「新造艦の生産ペースは！！！」 「建造システムをフル稼働させても5分で6隻が限界です。一応簡易的なUNAC化措置を施した吹雪型と朝潮型が18隻出せます」 「自爆装置のタイマーを出撃後80秒に設定し出撃させて下さい！」 「了解です」 #ギガベース日誌

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「羽黒やビスマルクはこんな連中と殺り合ってたってのかよ！」 「いや……明らかに効率化しています」 「効率化だと？」 「奴等が本土急襲で行っていた深海棲艦化は艦娘を拘束し、専用の装置を埋め込む必要がありました。それが、今は被弾しただけで船体の侵食が行われる」 #ギガベース日誌

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「敵からすれば、こんな楽な戦いも無いでしょう。ただ殺していれば、味方が勝手に増えていくのだから」 ギリギリの所で現状を保とうとする大淀。彼女を含めた艦橋内の全員にとって、救いになる声が艦橋に響き渡る。 #ギガベース日誌

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「菊月さんからの通信です！」 「こちら菊月！通信が繋がらんので直接飛んできた！指示をくれ！」 「願ってもねぇタイミングだ！大淀！ここは菊月に深海棲艦の対処を……」 「……いいえ」 暫しの沈黙の後、大淀は隼鷹の提案を蹴った。 #ギガベース日誌

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「菊月さん。ここから敵AF上空まで、どれ程かかりますか」 「本気出せば1分だ」 「……現在、戦闘区域全域に張り巡らされたECMの影響により、近距離通信以外の情報伝達が不可能な状況です」 #ギガベース日誌

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「加え、降下した深海棲艦による深海棲艦化によって、我々は多大な戦力損失を被っています。現在、雪風さんと金剛型三隻が海域を駆け回りながら撤退指示の信号弾をばらまいています」 「三隻だと？ギガベースの金剛型が沈んだのか？」 「敵ネクストとの戦闘で、比叡さんが」 #ギガベース日誌

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「信じたくないな」 「悪いニュースを付け加えておくとな、降下した敵勢力の中に深雪がいた。アイツ、平戸島で死んだフリして私達を裏切ったんだ」 「成程な。奴があんな死に方をするわけが無いと思っていたが、納得だな」 「これらの状況を、上空で戦闘中の提督達に伝えてください」 #ギガベース日誌

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「そして、ギガベースへ帰投するように説得してください」 「あの戦争狂い共に帰投しろと説得しろだと？お前も奴に匹敵する無茶苦茶を言うな」 「提督と不知火さん、代理の長門さんがいない今、艦娘の指揮権は私にあります。これは命令です。急いでください」 「了解だ！」 #ギガベース日誌

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ヴァリアブルフライトユニットを変形させ、菊月は戦場のど真ん中へと駆けていく。 「良かったのか？アイツを言伝に使って」 「今提督達と接触するのは菊月さんにしかできない仕事です。それに……」 「深海棲艦、最終防衛ラインを突破！突っ込んできます！」 #ギガベース日誌

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「スナイパーキャノンとコジマミサイルで迎撃を！」 「やってます！！」 フレアによってコジマミサイルを無力化した深海棲艦は、PAでギガベースからの狙撃を阻みながら、巨船の懐へ潜り込んだ。 #ギガベース日誌

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「弥生ちゃん！駄目です！危ないって！」 ギガベースのAC用出撃ハッチのエレベーター前。ノーマルに乗り込み深海棲艦の迎撃に向かおうとする弥生を、巻雲が腕を掴み引き止めていた。 「止めないで。こうしてる間に奴等が来る」 「嫌です！絶対行かせない！」　#ギガベース日誌

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「ノーマルでどうにかなる相手じゃない！私達があれだけ調整を重ねたUNAC達が一瞬で！」 「だからやる！」 弥生は巻雲の手を振りほどき、機体のコアに足をかけた。 「弥生が実戦でデータを集めて、降下してきた深海棲艦共に対応したオペレーションを組む。巻雲にも手伝ってほしい」　#ギガベース日誌

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「無茶だよ……そんな……」 「今の建造ペースと保管のUNACじゃ、絶対に全艦の撤退まで間に合わない。だから、できることはしなくちゃ。弥生と巻雲なら、できるよ」 「弥生ちゃん……」 響き渡る警告は、防衛ラインを突破した深海棲艦の接近を2隻に知らしめる。　#ギガベース日誌

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「大丈夫。この機体構成は完璧だって知ってるでしょ。深海棲艦化されそうになったら、その前にコアから脱出する」 「……弥生ちゃん、笑うの下手くそ」 「今度練習する」 コアに乗り込み、機体を起動させる弥生。カメラアイが点灯し、追従型リコンが射出される。　#ギガベース日誌

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巻雲はその場でフォーミュラブレイン調整用の端末を広げ、弥生の機体から送られる戦闘データを処理する体勢を整えた。 「弥生、出撃し……っ？！」 海中から飛び出した2隻のイ級が、その勢いのままにハッチの内部へと飛び込んだ。 「巻雲……逃げてっ！」　#ギガベース日誌

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落下防止用ケーブルを食い千切りながら、イ級達は中途半端に生成された赤子のような手足をばたつかせ、弥生の機体に迫る。 「くそったれ……！」 機体を横に移動させ、巻雲の盾になるように位置取る弥生。機体肩部から飛び出したハイスピードミサイルが直撃するも、PAが爆風を阻む。　#ギガベース日誌

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チャージが開始されたレーザーライフルを狙うイ級の砲撃。着弾の衝撃でライフルが弾き飛ばされるも、弥生は臆さずに機体を前進させた。 「ギガベースから……出て行け！」 ハイブーストと共に前方に突き出された4脚の後部が、2隻のイ級をまとめて蹴りつける。　#ギガベース日誌