ギガベース日誌 ACT07「CREATED VICTIMS」08

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装甲を大きく凹ませた2隻はハッチから叩き出され、海上を転がった末に爆散した。 弥生の機体もまた海上に踊り出て、ハンガーに搭載された予備のレーザーライフルを残存する深海棲艦へ向ける。　#ギガベース日誌

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蓄積された閃光が、独特の発射音と共に重巡ネ級に直撃。PAを突き破ったレーザーは圧倒的な熱でネ級の装甲組織を溶解させ、立て続けに放たれたハイスピードミサイルが味方の盾になろうとしたチ級ごと手負いのネ級を粉砕した。 「あと2隻っ……！」　#ギガベース日誌

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タ級が放った砲撃がシールドを掻い潜りコアに命中するも、耐衝撃を重視した追加装甲によってコックピットへの被害を免れる。QBの終わり際を狙ったレーザーとミサイルの同時攻撃により、タ級も海の藻屑と変わる。 「あと1機！」 「弥生ちゃん！艦載機が！」　#ギガベース日誌

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戦闘をモニターしていた巻雲からの警告。ギガベースの対空攻撃を潜り抜けた4機の球状艦載機が急降下で迫る。ミサイルが3機を叩き落とすも、残存した1機が対TEシールドを装備していた右腕部に特攻し、根本から吹き飛ばす。 「クソッ！何をっ……？！」　#ギガベース日誌

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モニターが映し出す光景に、弥生は強烈な違和を感じ息を呑んだ。 最後の1隻、軽巡ツ級のガントレットが、似つかわしくない蒼光を蓄え弥生の機体に向けられている。 直前の艦載機の行動の意図を理解した弥生は、恐怖に胸を潰され、声を上げた。 「まさか、装甲の耐性を理解しっ」　#ギガベース日誌

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ハイブーストで後退した機体をQBで追い詰め、ツ級はガントレット内に格納していたパルスキャノンを露出。拡散する電磁弾を、TE耐性に劣る弥生の機体へとぶちまけた。 機体を包む熱は脚部からコアにかけて、装甲とフレームを徹底的に焼き壊す。　#ギガベース日誌

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脚部との接続を失ったコアは、爆発炎上しながらハッチ内へ転がり込み、巻雲の真横を通りながら運搬用エレベーターに突っ込み静止した。 それから間もなく、中から燃える何かが転げ落ちた。　#ギガベース日誌

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「あがぁあぁあぁぁあああっ！！あだっ！あづぅあぁ！！！うがっ、いがあああぁぁあああ！！！」 「嘘っ、弥生ちゃ……弥生っ！！」 全身を焼き焦がされのたうち回る弥生。巻雲が駆け寄ろうとした直後、爆音と共に弥生の下半身が吹き飛び、残った部分が壁面に叩き付けられた。 #ギガベース日誌

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「なぁんダ。艦娘が、乗っテタんだ」 弥生のACを撃破したツ級は、既に開け放たれたハッチから内部に侵入していた。弥生の上半身を抱き抱え、ただ震える事しかできない巻雲に、ツ級はガントレットを向けながら呼び掛ける。 「貴女は、ちゃんと救ッてアげる」　 #ギガベース日誌

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幽鬼と成り果て味方に襲いかかる自分の姿を思い浮かべ、巻雲は弥生を抱きながら目を閉じた。 死すら救いに思える末路を前に、覚悟とも諦めともとれる決断をした瞬間、真後ろのエレベーターから砲弾と声が飛び出した。 「巻雲さん！伏せてっ！！」　 #ギガベース日誌

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「技術長！今です！」 「はい」 バズーカの直撃に怯むツ級の全身に、円筒状の物体が付着する。赤光と共に炸裂した内部の成形炸薬がツ級の全身を穿ち壊した。 「型落ちしたHEATミサイルを流用した雑な投擲武装ですが、妖精でも放り投げられるサイズが利点です。お気に召しました？」　 #ギガベース日誌

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既に物言わぬ汚泥へと分解しつつあるツ級に近づき、サンプルの回収を試みる大宮。彼のマイペースさに半分呆れながら、明石は蹲っていた巻雲に駆け寄った。 「巻雲さん、大丈夫で……っ！」 「明石、さん。弥生ちゃんが、弥生ちゃんが」　 #ギガベース日誌

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巻雲の腕の中で燻るそれは、そうと言われなければ弥生とは到底判断できないほどに焼き焦がされ、砕けていた。 既に息は無い。 「私、なにも、弥生ちゃんに、最後、何も言えて」 「あ～……これは酷い。弥生さんにとっては蒸発しなかったのが不幸中の幸いでしょうかね」 「技術長！」　 #ギガベース日誌

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いつの間に近くにいた大宮の無神経極まりない言動に流石の明石も声を上げるが、大宮はそれを意にも介さず続ける。 「いや、だってほら。弥生さんの右手」 「え……」 大宮の指摘を受け、巻雲は弥生の黒焦げの右手が、自分の服を掴んだまま固まっている事に気がついた。　 #ギガベース日誌

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まるで、苦痛に満ちた最期の最中、少しの安らぎを求めるかのように握られたその手を、巻雲は壊さないように握り返した。 「……巻雲さん。弥生さんを連れたままでいいので、この場所から離れ、右船体側への移動を。元々我々はそれを知らせる為に来たのです」 「何があったんですか」　 #ギガベース日誌

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「気づきませんか。警報が止まってるんですよ。弥生さんがここから出撃した直前ぐらいのタイミングで、左船体側の制御システムが軒並みダウンしました」 「それって……」 「今は妖精総動員で生産設備や重要物資を右船体側の工廠へ移動させています」　 #ギガベース日誌

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「巻雲さんには右側でUNACの調整をお願いしたい。我々のみでやるには腕も自我も足りなさすぎるので」 「……わかり、ました。でも、左船体側に何が？」 巻雲の問いに対し、大宮は針のような人差し指を下に向けながら返答した。 「食われてるんですよ。船底側から、じわじわと」　 #ギガベース日誌

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「深海棲艦、新たに8隻が防衛ラインを突破！」 「58！状況はどうなってる！撃ち漏らし増えてんぞ！」 黒く染まりつつある海は、海中にいる潜水艦達にも牙を剥き始めていた。 「うるっさい……！！」 「回天の供給が足りてないのね！敵艦が硬くなってるの！！」　#ギガベース日誌

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ギガベース艦底から射出される補給ポッド。次から次へと与えられる火力は、寄せ来る深海棲艦に叩き付けられる。 「それに……数が多すぎます！」 「奴等、どれだけ降ってきたのよ！」 回天の制御に集中する58を曳航・護衛しながら、潜水艦達は海底から浮上する敵へ魚雷を叩き込む。　#ギガベース日誌

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旧レイレナードの流体特性研究を引き継いだトーラスによって開発された潜水艦用フレーム。 水中において尚尋常ならざる機動力を発揮するギガベースの潜水艦達は、対潜ミサイルの類を持たない深海棲艦の本格的な攻撃対象にはなっていなかった。 この時までは。　#ギガベース日誌

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5隻のレーダーが一斉に動体反応を感知。海底側から発射されたであろうそれは、明確な殺意をその軌道に表出させながら58達を追う。 「迎撃急げっ！」 携行するカウンターガンからの攻撃がミサイルを迎撃する。他の4隻が対応する中、58はそれを放った張本人の姿を捉えていた。　#ギガベース日誌

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「あいつっ……！！」 黒ずんだ海には際立って異彩を放つ、純白の船体。 棲姫クラス特有のヒトに酷似したその身体から伸びるチューブは、10m以上はあろうかという鯨のような艤装から供給される緑光を通している。 海藻のように揺蕩う白髪の奥から、赤い光が58を刺した。　#ギガベース日誌

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「ハハッ……ハハハハッ、キタノ、キタノネェ」 「……っ！大淀！指定座標D-5に新型深海棲艦を確認っ！！棲姫級の潜水艦でち！！」 潜水棲姫。激戦の最中に誕生した水底の救済者は、展開した艤装の各所から一斉に対潜ミサイルを放出した。 「やっば……！」 「回天で仕留めるっ！！」　#ギガベース日誌

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一斉起爆した回天の群れが第一波を巻き込み、残った回天が潜水棲姫本体へ向け殺到する。 「そのまま沈めぇっ！！」 発生した地点から移動もせず、迫り来る特攻兵器を甘んじて受け入れる潜水棲姫。 「やった」 「流石58なのね！」　#ギガベース日誌