ワクチン2回接種でも麻疹感染を防げない場合がある

2019年は年初から麻疹流行がそれなりに激しくなった。近年の流行では、ワクチン1回接種者と2回接種者の発症数に顕著な差異が認められなくなっているようだ。流行の推移を追いながら、ワクチン2回接種が有効かどうかを検討してみる。
IDWR速報 抗体保有状況 麻疹 2019年 ワクチン
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今井長兵衛 @medanjin
麻疹が大流行の気配で、2月17日までの届出患者数は全国で222人。 ワクチン接種歴と発症の関連を公表している東京、愛知、三重、大阪のデータの合計では、未接種75人、1回接種27人、2回接種24人、不明44人、合計170人。発症者の割合は、ワクチン1回接種者16%、2回接種者14%。
今井長兵衛 @medanjin
このデータを見る限り、ワクチンを2回接種しても感染・発症を予防できないこともあるということになる。感染・発症者との接触をできるだけ避けるなど、ワクチン以外の予防手段にも注力すべきだろう。
今井長兵衛 @medanjin
PA法では、抗体価≧256で発症予防に十分と評価されている(日本環境感染学会:2014 医療関係者のためのワクチンガイドライン第2版)。256倍以上の抗体保有率は0~5ヵ月児19.5%、6~11ヵ月児0%、1歳児60%、2歳以上77%(麻疹抗体保有状況2017→ niid.go.jp/niid/ja/y-grap…
今井長兵衛 @medanjin
岩田 敏(2014)特集:医療関係者に対するワクチン接種の考え方. Ignazzo(イグナッソ) Vol.10 によると、PA法による麻疹抗体価256以上は「感染を確実に防ぐことができる値を念頭に入れて定められたもので、発症した場合の周囲への影響が大きい医療関係者に適用される数値」とされている。
今井長兵衛 @medanjin
しかし、いまや麻疹清浄国たる日本では、海外からの入国感染者から国内感染が始まる。海港や空港を職場とする人や利用する人、入国後の感染者の行動範囲で接触する市民などが最初の二次感染者となる可能性が高い。結局、感染防御可能な256倍以上の麻疹PA抗体価獲得がワクチン接種の目標となる。
今井長兵衛 @medanjin
では、ワクチン接種で感染防御可能な免疫はどの程度獲得できるのだろう。北大病院の山下ら(2011) jstage.jst.go.jp/article/jsei/2… PDF によると、麻疹PA抗体価128倍未満であった20歳台~60歳以上の職員123人にワクチン接種したところ、256倍以上に上昇したのは70人(56.9%)であったという。
今井長兵衛 @medanjin
ワクチン接種後の抗体価が256倍以上に上昇したのは、接種前の抗体価が16倍未満で9人中5人(55.6%)、16倍で14人中5人(35.7%)、32倍で19人中10人(52.6%)、64倍で81人中50人(61.7%)。接種前の抗体価は、接種後の256倍以上抗体獲得率には影響しないようだ。
今井長兵衛 @medanjin
この結果は20歳台から60歳以上の医療従事者が対象なので、0~19歳で同様の結果が出るかどうかは不明である。現在の麻疹ワクチン定期接種の対象は1歳児と小学校入学前1年間の幼児であり、ワクチン接種による抗体上昇が20歳以上の大人より顕著であれば、それに越したことはない。
今井長兵衛 @medanjin
麻疹IDWR速報 2019年第8週2月18~24日 新規届出数/累積届出数 全国33/258、茨城2/5、埼玉2/4、千葉2/6、東京5/19、神奈川1/9、愛知5/25、三重1/50、滋賀2/4、大阪12/94、兵庫1/3。10都府県で新規届出あり。 21道県で新規届出0/累積届出あり。
今井長兵衛 @medanjin
速報から本題に戻ろう。感染研の麻疹流行予測調査から2017年の抗体価≧128倍と≧256倍の保有率データを抜き出して作図したものを示す。なお、抗体価128倍は発症抑制に十分な免疫レベルとされ、抗体価≧256倍は、記述のように、感染防御に十分な免疫レベルである。 pic.twitter.com/j7puT7rz8A
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今井長兵衛 @medanjin
生後半年までは母体からの移行抗体が次第に減衰する時期であり、≧256倍の抗体保有率の平均的な値が20%、6~11ヵ月児の保有率は0%、ワクチン接種第1期の1歳児の保有率は既接種者と未接種者が混在するので上昇途上、接種が終了した2歳児では91%に達している。
今井長兵衛 @medanjin
その後、抗体価≧128倍の保有率は6歳まで約95%で推移したが、≧256倍の保有率は10歳の約60%まで低下した。ワクチン接種第2期の1年後の6歳では保有率の顕著な上昇は認めない。むしろ、≧128倍の保有率は9歳の79%まで低下した。保有率の低下は自然感染が稀である結果かも。
今井長兵衛 @medanjin
抗体価≧128倍の保有率は20歳代以上で約90%を維持し、≧256倍の保有率は30歳代以上で約80%を維持している。これらの年代で長期間抗体保有率が低下しないのは、自然感染によるブースター効果によるものと思われる。
今井長兵衛 @medanjin
前々ツイで「10歳頃までの抗体保有率の低下は自然感染が稀である結果かも」と述べ、前ツイでは「30歳代以上の抗体保有率が長期間低下しないのは、自然感染があったから」と述べている。この違いは、ここ10年くらいの麻疹低流行と30年以上前の麻疹大流行によるのだろう。
今井長兵衛 @medanjin
ワクチン2回接種が始まった2006年以降の2歳児=第1回接種の次の年齢、6歳児=第2回接種の次の年齢、および20歳代における抗体≧256倍の保有率の推移を感染研のデータから作図した。なお、2008~2012年には2回(以上)接種率を高めるため、中学1年生と高校3年生への定期接種が追加されている。 pic.twitter.com/PyWbKQu7vV
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今井長兵衛 @medanjin
前ツイ図示12年のうち、2008~2011、2013年の5年は1回接種後より2回接種後の抗体保有率が高く、2016、2017年は低かった。2回接種後の抗体保有状況は、主に、1回目の接種で獲得した抗体価の減衰、2回目の接種率とブースター効果の強さで決まる。2016、2017年は抗体価減衰の影響が強かったのか?
今井長兵衛 @medanjin
まとめ 1.1歳児対象の第1期ワクチン接種により、256倍以上の抗体保有率は0.0%から90%に上昇。 2.小学校入学前1年間に実施の第2期接種は抗体価上昇にほとんど寄与せず、256倍以上抗体保有率は10歳児では60%まで低下。 3.30歳代以降では256倍以上抗体保有率約80%を維持。
今井長兵衛 @medanjin
これまで、麻疹ワクチンの2回接種がそれほど有効ではないのでは、という問題意識について述べてきた。もう少し考えてみたい。まず、接種回数別の人数が全国民の何%を占めるかを感染研のデータ(n= 7833~8616)から推定する。未接種と1回接種の割合がやや減少し、2回接種の割合がやや増加している。 pic.twitter.com/DKzbOVw3pb
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今井長兵衛 @medanjin
次に、感染研が公表しているワクチン接種回数別報告患者数の全報告患者数に対する割合を図示した。2015年の2回接種届出患者はゼロである。2016~2019年には、それ以前に比べ、2回接種したにもかかわらず届出患者となった人の割合が若干増えている。 pic.twitter.com/mYPAxOY9iu
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今井長兵衛 @medanjin
しかし、このままでは、人数割合の異なる接種回数の間の比較はできない。そこで、接種回数別に患者数割合を人数割合で除して罹患リスク割合(造語)を求めて図示した。この図から、未接種の人の罹患リスクが高いこと、2回接種した人の罹患リスクが2016、2017年に若干高くなっていることが分かる。 pic.twitter.com/F8EKpdBNmd
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今井長兵衛 @medanjin
麻疹IDWR速報 2019年第9週2月25~3月3日 新規届出数/累積届出数 全国26/285 茨城1/6、埼玉2/6、千葉2/8、東京7/26、神奈川1/11、静岡1/4、愛知2/27、大阪7/101、兵庫2/5、奈良1/3 10都府県で新患 三重0/50、滋賀0/4など11道県で0/+
今井長兵衛 @medanjin
ワクチン接種歴と届出患者数の関係     未接種 1回  2回  不明  合計 患者数  102  49  38  96   285 (2019年第1~9週、全国)  %   35.8 17.2 13.3  33.7 人数*  520 1958 1548 3807 7833 (*2017年感染研調査)  %   6.6  25.0  19.8  48.6
今井長兵衛 @medanjin
ワクチン2回接種した人からも、全体の13%の患者が出ている。 しかし、罹患リスク推定には、接種回数別の人数で補正すべき。 未接種  35.8/6.6=5.42・・1 1回接種 17.2/25.0=0.69・・1/8 2回接種 13.3/19.8=0.67・・1/8 不明   33.7/48.6=0.69・・1/8
今井長兵衛 @medanjin
補正後の罹患リスクは、ワクチン未接種を1とすると、 1回接種、2回接種ともに8分の1となり、 (1) ワクチン未接種の罹患リスクがおおきいこと、 (2) ワクチン2回接種は1回接種と同様に、低いながらも、罹患リスクがあること、 が推測される。
今井長兵衛 @medanjin
麻疹IDWR速報 2019年第10週3月4~10日 新規届出数/累積届出数 全国14/304 埼玉2/8、千葉1/9、東京2/28、神奈川2/14、愛知2/29、三重1/51、大阪2/106、和歌山2/9 8都府県で新患 13道県で0/1~8
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