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本作長義(以下略)の銘文から 銘の切り方考察

つるぎの屋@日本刀買取専門店 @tsuruginoyaさんのツイートをまとめました。 「本作」の話から銘のことまで
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つるぎの屋@日本刀買取専門店 @tsuruginoya

山姥切長義(本作長義)の茎には堀川国広の切付銘が長銘に切られています。 改めて見直してみると、いくつか気付いた点があるのでツイートしてみたいと思います。 ・「本作」の読みと意味 ・銘文のうち平地と鎬地(棒樋)での重要度の違い ・堀川国広が強く伝えたいメッセージ pic.twitter.com/mL7fNZujrs

2019-07-22 21:02:19
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・「本作」の読みと意味 「本作長義~」の「本作」の部分について ○「本作」(ほんさく)、この作(刀)という意味です。 →この刀は長義です。 ○「本作」(もとのさく)、または(もとさく) もと(元)の作(刀)とも解釈できます。 →元の刀は長義です。

2019-07-22 21:12:37
つるぎの屋@日本刀買取専門店 @tsuruginoya

磨上銘や切付銘でも「本作」と切られたものは他に類例があまりありません。 一方で時々に見られるものに「本銘」「古銘」があります。 「本銘」(ほんめい)(もとのめい)(もとめい) 「古銘」(こめい)(ふるいめい)(いにしえのめい) 現在は大磨上で銘を失ったが銘があったことを意味します

2019-07-22 21:18:50
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分かりやすい例えでは、「本歌」(ほんか)も(もとのうた)(もとうた)とも読みます。 元々(もともと)の歌、元歌を意味します。

2019-07-22 21:25:19
つるぎの屋@日本刀買取専門店 @tsuruginoya

本銘(ほんめい)(もとめい)の例。 現在は銘を失っているが、元々は銘があったことを意味します。 「本銘国宗然而祐定磨上之也」 本銘は国宗しかれども祐定が之を磨り上げる也 →本銘(ほんめい/もとのめい)は国宗であったが、祐定がこれを磨り上げた。 pic.twitter.com/7p2aNtd5S3

2019-07-22 21:34:36
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「本銘国泰」 →本銘(ほんめい/もとのめい)は国泰であった pic.twitter.com/MWFq9hKkWn

2019-07-22 21:36:55
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古銘(こめい)(ふるいめい)(いにしえのめい)の例。 現在は銘を失っているが、元々は銘があったことを意味します。 「古銘左」 →古銘(こめい/ふるいめい/いにしえのめい)は左(左文字)であった。 pic.twitter.com/ojdbRX1mNz

2019-07-22 21:41:24
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「本作」と「本銘」では意味が大きく違います。 本作(もとの作) →元は長義の作(刀)であった(と伝えられている)。 (しかし、既に国広が銘を切った時点で磨上げられており)長義の銘が無い。 本銘(もとの銘) →元は銘があったが現在は大磨上となり長義の銘が無い。

2019-07-22 21:57:12
つるぎの屋@日本刀買取専門店 @tsuruginoya

堀川国広がなぜ「本銘長義」または「古銘長義」と切らずにわざわざ「本作長義」したのか。 →山姥切長義(本作長義)は国広が銘を切った天正14年の時点で既に大磨上無銘となっており長義の銘を失っていたこと。 そして無銘ながら長船長義の作であると伝わっていることを茎に刻んだのだと解されます。

2019-07-22 22:03:16
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大磨上で銘を失った無銘の刀に磨上銘や切付銘を切る場合でも、後世に他の刀工の銘を入れるということは重大な責任が発生します。 下手をすると後で改竄されて、偽銘作りの一助をしてしまうことになるからです。

2019-07-22 22:11:48
つるぎの屋@日本刀買取専門店 @tsuruginoya

磨上銘は多くの場合「本銘長義」と刀工名の前に文字をいれます。 「長義本銘」とはしません。偽銘の製作防止をかねています → 「本銘長義」としておけば、長義の上の「本銘」は削除しづらいですし上に不自然な空白となります。 「長義本銘」ですと下の「本銘」のみ削除されて偽銘にされてしまいます

2019-07-22 22:17:10
つるぎの屋@日本刀買取専門店 @tsuruginoya

山姥切長義(本作長義)には長銘がかなり窮屈に切られています。 平地と鎬地(棒樋のなか)に別れている部分があり、 平地の方が大きい文字が使えますので、そちらに銘している内容の方が重要性が高いと思われます。 もちろん、長文であるので鎬地に小さい文字でないと刻めなかったとも言えますが。

2019-07-22 22:29:42
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(切付銘)水心子樋作之 文政五年正月吉辰日 水心子正秀が樋を掻いたもの。 大磨上無銘ですが水心子正秀が樋を掻いた時点では、既に磨上げあらており、正秀は樋を掻いたのみという意味になります。 pic.twitter.com/R0yovW46sB

2019-07-22 22:35:20
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(左)山姥切国広 (右)山姥切長義 山姥切長義には棒樋が茎尻まで掻き通しとなっていますが、これも国広が銘を切った時点には既にあったと思われます。 茎尻の棒樋の終筆がわずかに丸みを帯びています。これは古刀期の棒樋だと思われます。 山姥切国広は棒樋を掻き切っていてシャープな印象です。 pic.twitter.com/6ThFa2Cd5g

2019-07-22 22:48:09
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「本作長義」の部分拡大 「長義」と平地に大振りに堂々と切っています。 「本作」をそのやや上の右側の棒樋のなかに切っています。 掟通りに「長義」の上部に「本作」と入れています。 銘字を消す場合は樋中の方が削除しづらいので改竄されないようにこちらに「本作」と入れた意味もあるかもしれません pic.twitter.com/LDjDkLDpqT

2019-07-22 22:58:56
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(本作)長義天正十八年庚寅五月三日二(九州日向住)国広銘打 長尾新五郎平朝臣顕長所持 (天正十四年七月廿一日小田原参府之時従屋形様被下置也) 棒樋に切られた銘文を括弧で括ってみました。 通常は、平地に大きく切られた内容の方が重要性が高いです。

2019-07-22 23:08:23
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しかし、長文過ぎて棒樋のなかに窮屈に小さくしか切れなかったのかもしれません。 「本作」の部分は削除して改竄されないように棒樋のなかにした可能性も考えられますが。

2019-07-22 23:08:24
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国広は(太刀を除いて)あまり目釘孔の上に銘字を切りません。 (赤線)の第1目釘孔の間際まで 表は「本作」 裏は「天正」 と切っています。 これにより、第1目釘孔は国広が切銘した時点では既にあったということと。 そして「山姥切長義」の当時の打刀の目釘孔の位置ということを物語っています。 pic.twitter.com/e9aIGYetPa

2019-07-22 23:23:42
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(左)山姥切国広 (右)山姥切長義(本作長義) 「山姥切長義」の方が流暢となり、 「山姥切国広」の方は固い印象の銘字です。 以前には「山姥切国広」の方を慎重に銘字を切っているのかと思っていましたが、違う原因があったようです。 twitter.com/tsuruginoya/st…

2019-07-23 22:08:36
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(左)山姥切国広 (右)本作長義(山姥切長義) 本作長義(山姥切長義)の方は字数も多いのでかなり窮屈であり、掻き通しの棒樋の中にも切り銘しているので相当に難しいです。 しかし、銘字は流暢で伸びやかとなっています。 国広の銘字のなかでも最も名筆といえます。 pic.twitter.com/sbOli0zkzl

2017-02-17 23:07:49
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(左)山姥切国広 (右)山姥切長義 堀川国広が双方とも銘字を切っています。 天正18年の2月と5月、わずか3ヶ月しか期間に差はありませんが、 銘字は長義は流暢で、国広の方は固い印象です。 これは茎部分の鉄の硬軟の差だと思われます。 長義が軟らかく、国広が固いので違いがでているのでしょう。 pic.twitter.com/F3fR0U6r8t

2019-07-23 22:17:45
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「山姥切国広」 生ぶ茎の打刀。 茎部分は梃子鉄。 「山姥切長義」 元来は大太刀の大磨上となった刀。 茎部分は元は刀身であり、焼き鈍しもされていると思われます。 一般にも古刀の方(ここでは南北朝時代の方が室町後期より)鉄は軟らかいといわれています。

2019-07-23 22:27:26
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堀川国広が同じ鏨を使用して銘字を切ったとしても、茎部分の鉄の硬度が違えば銘字は異なってきます。 (逆に言えば全く同じ銘字は切れないでしょう)

2019-07-23 22:27:26
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切った銘字を例えるとすれば、 茎部分の鉄が硬い「山姥切国広」は 硬い鉛筆(Hくらい)やシャープペンシル 茎部分の鉄が軟らかい「山姥切長義」は 毛筆や、滑りの良い万年筆やサインペン でしょうか。

2019-07-23 22:33:52
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(左)山姥切国広 (右)山姥切長義 例えば「天正十八年」の部分では ○国広の方は横線が直線的であり、左右の両端の起筆と終筆の部分はキツめのアタリ鏨があります。 ○長義の方は横線に抑揚があり左側が下がり、右側に行くに従って上がり、曲線が美しく直線的ではありません。アタリ鏨は緩めです。 pic.twitter.com/kctfYhTe2a

2019-07-23 22:57:34
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本作(読み)ほんさく ① 名のある工人、作家などの本人がつくった作品。〔文明本節用集(室町中)〕 ② この作品。 精選版 日本国語大辞典 kotobank.jp/word/%E6%9C%AC…

2019-07-23 23:15:44