山姥切ズと近現代刀剣本の記述いろいろ

国会図書館デジタルコレクションの個人送信でいろいろ見れるようになったので、もろもろの話をURL付きでご紹介します。 (片付けができていない関係で、自分が作ったまとめ本のうちNDLに入っている資料を参照している部分の話題を中心に載せております。)
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セツカ@更新情報 @waterseed_upd

これまで何度か発信してきたやつなのだけど、山姥切ズの本体について刀剣本で語られてきたこと色々について、具体的な出典付きでツリーにしてみましょうか。 国会図書館デジタルコレクションの一般宛送信が始まったから一番キモになる資料をURL付きにできることだし。 pic.twitter.com/n1oHy4tc4G

2022-05-26 19:22:25
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画像は当方発行の無配本「はくちゅうじつぶつのうすいほん」より。
ダウンロード版は今も継続して配布しています。

セツカ@更新情報 @waterseed_upd

一応書いておきますが、資料があるからといってそれを創作に使わないといけないなどと言う気はないです。 資料ネタをうまく使った創作は大好物なので読みたいですけども、毎回やるようなもんではないのです。 ちょっと変わった料理にのっかってるパクチーを提供するような感覚でございます。

2022-05-26 19:25:09

以下、ツイート上は、便宜上「本作長義」と表記してる箇所について、原文では銘を一通り書いてあったり、「尾張家の長義」「北条家の長義」など色々な表記がされています。

セツカ@更新情報 @waterseed_upd

①尾張家伝来の長義が刀剣界に知られたきっかけ:今村長賀氏の刀剣講義(明治三十一年~三十六年) 本作長義以下略~は、尾張家三代綱誠が買い入れて以降、尾張徳川家にありました。贈答などでの出入りがなく、広く世に広く知られた名刀というわけではありません。(続)

2022-05-26 19:35:35
セツカ@更新情報 @waterseed_upd

①続)明治の終わり頃、今村氏と別役氏というお二方が、刀剣に関して連続講義を行いました。 そしてその速記録は何バージョンも発行されるほど人気となりました。その中で、尾張徳川家伝来の長義について言及されています。 dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid…

2022-05-26 19:37:45

今村氏と別役氏の刀剣講義について、活字で参照しやすいものは明治45発行のもの
剣話録. 上 NDL
剣話録. 下 NDL

ガリ板と思しき手書き文字・全6冊のものもNDL公開されています。他にも、全4冊版とかもあるらしいとかなんとか。

口述されたものが元なので誤りも含まれるわけですが、明らかな誤りを修正してバックグラウンドを補足してという本が昭和53年に出ております。近所の図書館にある場合はこちらのほうが読みやすいです。
今村別役刀剣講話 ※カーリルローカル検索結果

セツカ@更新情報 @waterseed_upd

①続)本朝鍛冶考に、布袋国広の図があります。 それについて今村氏は猜疑を持っていた、けれどそこに国広がいたことの証拠が出た、それが本作長義である、というのが剣話録の該当部分の内容です。 dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid…

2022-05-26 19:45:41

本朝鍛冶考は江戸時代の刀剣書です。
新刀弁疑の著者として著名な鎌田魚妙によるものです。
本朝鍛冶考 NDL

セツカ@更新情報 @waterseed_upd

①続)「証拠が一つ出た」という書き方から、今村氏はどこかのタイミングで本作長義のことを知り、それまでは未知だったことがこの資料から伺えます。

2022-05-26 19:56:23
セツカ@更新情報 @waterseed_upd

①続)ではどこで知ったのか。 尾張徳川家の世襲財産についての調査が行われたときの監査状の中に、今村氏の名前があります。 こちらのpdfの161pですね。 表の番号「6598」の長義がそうだということです。(原氏論文) tokugawa-art-museum.jp/academic/publi…

2022-05-26 20:04:53
セツカ@更新情報 @waterseed_upd

(これ、私が最初に書いた文章の時点では表のそれでいいのか確証が持てず、監査状出してるなら見る機会もあったんじゃない、くらいの書き方をしたんですが、後で原先生の論文で確認がとれたやつでございます)

2022-05-26 20:06:57

上記のURLはH29「尾張徳川家における世襲財産附属物」香山里絵
該当品がそうだと確認したのは、R1「『刀 銘 本作長義(以下、五十八字略)』と山姥切伝承の再検討」 原 史彦
いずれもWebでPDF閲覧可能です。
金鯱叢書バックナンバー 

②戦前の国広論と山伏の災難

大正期前後の国広論

セツカ@更新情報 @waterseed_upd

②戦前の国広論と山伏の災難:刀剣雑話(初出:大正9年/単行本:大正14年) 刀工国広の足跡については、戦前の刀剣界では大きなトピックになっていたようです。 ただし、この頃の論というのは、今から見れば検証が不十分な文献資料を第一に、実際の刀剣資料をその次にするような順で参照していました

2022-05-26 20:15:55
セツカ@更新情報 @waterseed_upd

②続)その結果…不十分な文献を元に検討された国広の生涯と辻褄が合わないからと、立派な作品に対して猜疑が向けられるようなことも起こりました。 ええと、山伏国広に対して、猜疑が向けられました。 (今の感覚から見ると、なんてこと!となるやつですが、はい……) dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid…

2022-05-26 20:24:07

今回の資料は大正14年『刀剣雑話』室津鯨太郎
刀剣雑話 NDL
初出は大正9年の『刀の研究(6巻5号~8号)』(川口陟名義)

経緯として、日本刀研究会という会で行われた入札鑑定に、山伏国広が出題され、そこで従来の研究と合わないからと真贋の話になりました。というのが『刀の研究(2巻12号)』に掲載されています。
その状態から「今一度取り調べたし」といって刀剣雑話掲載の記事が書かれました

セツカ@更新情報 @waterseed_upd

②続)猜疑の理由は(現代から見れば不十分な)資料上、国広がそのとき日向国にいるはずないのに日向住と銘にあることでした。 これに対して著者の室津氏は、もし国広が日向国以外の場所にいて日向住と切った例があれば、これもそう解釈できるのではという内容を書きました。 dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid…

2022-05-26 20:32:46

この時期の評価として、山伏と同じ天正14年銘の他の作品についても、この時期には故郷にいないはずだから偽物に違いない、という言説があったことが確認できます。
『新刀名作集』中、高瀬真卿(高瀬羽皐)氏の説引用部(30p/29コマ のど側から6行付近) NDL限定送信
※もちろん今はそんなこと言われません。

セツカ@更新情報 @waterseed_upd

②続)いやまあ、日向国以外で「日向住」の例、本の巻頭に布袋国広(日州住信濃守国広作 天正十八年八月日於野州足利学校打之)を載せてるんだからそれ書いたらいいじゃんとなるんですけどもなぜか書かず。でもあと山姥切国広も該当するんですよね、これ。

2022-05-26 20:37:39
セツカ@更新情報 @waterseed_upd

②続)後続の章で、国広の天正十八年における足跡についてのものがあります。 ここで登場するのが布袋国広と本作長義。山姥切国広は出てきません。 ということで、この頃山姥切国広は広くは知られていなかったと解釈できます。既知ならこの並びで出ないと不自然なのですよ。 dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid…

2022-05-26 20:40:31

③④山姥切国広の登場と逸話

大正~昭和初期 杉原祥造氏の講演と押形

セツカ@更新情報 @waterseed_upd

③ちょっと惜しい山姥切国広の記述:日本趣味十種(大正13年) さっき大正14年の本で、広く知られてないって書いたじゃんかーとお思いかと思います。 でもでも、これめちゃくちゃ惜しいんですよ。 何がって、銘文の年紀の部分を間違って書いているのです。

2022-05-26 20:54:53

日本趣味十種 NDL限定送信

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