山姥切ズと近現代刀剣本の記述いろいろ

国会図書館デジタルコレクションの個人送信でいろいろ見れるようになったので、もろもろの話をURL付きでご紹介します。 (片付けができていない関係で、自分が作ったまとめ本のうちNDLに入っている資料を参照している部分の話題を中心に載せております。)
55
セツカ@更新情報 @waterseed_upd

③続)この本は、各界に造詣の深い人たちが、それぞれのジャンルについて語ったものを書き起こした、あるいは人によっては執筆した、という性質のものです。 その中に、内容を追えば山姥切国広と本作長義のことだとわかる記述があります。二作品の関連性への言及たぶん初出これ dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid…

2022-05-26 20:58:13
セツカ@更新情報 @waterseed_upd

③続)ただ、それがどの程度伝わったのかと考えると…… もちろん愛刀家同士の横の繋がりで情報が流れることはあったでしょう。けれど人の移動が今より大変な時代です。 更に、掲載された本も、愛好家向けではなく一般向け。 研究をする人に情報が届いたかというと、一旦置いておいてよい資料かなと

2022-05-26 21:13:45
セツカ@更新情報 @waterseed_upd

④山姥切国広の物語:新刀名作集(昭和3年) ということで本命の資料一つ目でございます。山姥切国広が山姥を切った話の出所! 新刀名作集に掲載された、杉原氏(③の本で日本刀の話のパートを書いた人)が記録した押型でございます。 (画像は国会図書館デジタルコレクションと別のところから用意) pic.twitter.com/jPhasCggeP

2022-05-26 21:22:18
拡大
セツカ@更新情報 @waterseed_upd

④続)この画像、デジタルコレクション内のリンクも貼っておきましょうね。125コマです。 ただしめちゃくちゃ読みづらいので、頑張って読もうとしなくてよいです。原先生の論文内で活字化されております。 dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid…

2022-05-26 21:32:15

新刀名作集 NDL限定送信

活字化されたものは、金鯱叢書 R1年度 24p~(38コマ~)

セツカ@更新情報 @waterseed_upd

④続)押形には「山姥切由来」とあって、赤子を食った女を切ったから「山姥切」と呼ぶようになったという内容、その刀が渥美家に渡った経緯、渥美家が困窮して三居氏に渡った経緯、その内容は三居氏が語ったものであるということが書かれています。話の採取時期も、大正九年十月とあるのでわかります。

2022-05-26 21:45:56
セツカ@更新情報 @waterseed_upd

④余談) (ちょっと話はずれますが、この押形によれば関ヶ原~維新後まで山姥切国広は渥美家伝来ということで、刀ミュ江水の作中で山姥切国広の元の主として登場した方は、渥美家のお方が想定されているということになるわけでございます)

2022-05-26 21:54:27
セツカ@更新情報 @waterseed_upd

④続)押形の中には、長義っぽいけど長義写しなのかなみたいなことも書かれています。この場合の長義写しは作風模写的なニュアンスでよいかと。 ③の資料では「之は北条家の長義を写したものと思はれる」と言っているので、大正九年から十三年の間で資料か実物かわかりませんが長義も見たのでしょう

2022-05-26 22:05:56
セツカ@更新情報 @waterseed_upd

④続)さんざん押形と杉原氏の名前ばかりですが、この本の刊行時には杉原氏は故人、本の著者は内田疎天氏と加島勲氏です。 国広が生国以外で「日向住」と切った作品の例として山姥切国広をあげています。 dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid…

2022-05-26 22:25:23

ざっくりと見て、新刀名作集以降は、刀工国広の生涯を語る材料に山姥切国広の銘文が入ってくるようになります。

創作で、これはひょっとして、杉原氏から押形を見せてもらうか話を聞くかして要素を取り込んだのかなと思うものがなきにしも、ではあります。
大正15年、刀剣と歴史に掲載された福島靖堂氏の「戯曲 世乱直刃国広」の一場面とかがそんな具合で。
ただ、あくまで「戯曲」であって論ではないですし、要素を取り込んだ「かも」であって、そうとは言い切れないものでございます。

⑤山姥切国広の焼失誤認

戦後期 国広大鑑前後

セツカ@更新情報 @waterseed_upd

⑤焼失誤認の記録:国広大鑒 大正十二年の関東大震災では、多くの蔵が焼け、刀を含む宝物類が多数犠牲となりました。 いつからかわかりませんが、山姥切国広も「関東大震災で焼失した」と誤認されるようになりました。 dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid…

2022-05-26 22:42:02
セツカ@更新情報 @waterseed_upd

⑤続)あ、大鑑は昭和29年ですね。 関東大震災で云々の部分は、大鑑に記述があったかどうか覚えがないんですが、大鑑に先立って、研究のために国広の刀を集めたいというような内容が昭和28年の刀剣美術に掲載されまして…その中で書かれております。

2022-05-26 22:45:53
セツカ@更新情報 @waterseed_upd

⑤続)刀剣美術の19号では、その誤認に基づきこんなことが書かれています。 「山姥切と号する天正十八年作の長義写の刀も焼身でもよいから是非見たいと思うが、大正震災後はどうなったものであろうか」 (別刀剣クラスタさんたちから聞こえてくるのと同じような…いえ、銘ぶりとか見たいんだろうけど)

2022-05-26 22:49:02
セツカ@更新情報 @waterseed_upd

⑤続)ここでポイントになってくるのは、この国広大鑑の時点で「号 山姥切」が指すのは山姥切国広だということでございます。 昭和29年、佐藤貫一氏(寒山氏)ね。

2022-05-26 22:52:07

国広大鑒 NDL限定送信
当時の山姥切国広解説:49コマ
山姥切国広押形:99コマ

NDLの全文検索機能が実装された結果、他のバリエーションも見つかりました。
情報が錯綜していたことが伺えます。

セツカ@更新情報 @waterseed_upd

山姥切国広が、かつて焼失と誤認されてた話は「国広大鑑」&「堀川国広とその弟子」にあるからある程度知られてると思うんだけども……同じ寒山先生が昭和23年のときには「今度の戦火の為に烏有に帰したという」と書いてらっしゃるの見つけてしまった… dl.ndl.go.jp/pid/8799582/1/…

2023-01-30 19:04:30
セツカ@更新情報 @waterseed_upd

1ツイート目、言葉が足りなくて何いってるかわけわかんなくなってるわね…… かつて「関東大震災で焼失したと誤認されていた」です dl.ndl.go.jp/pid/2483062/1/…

2023-01-30 19:28:13
セツカ@更新情報 @waterseed_upd

これやっぱり、戦中戦後くらいのひそひそ話伝言ゲームで認識がひろまってっちゃったやつではないかな… 薄々そう思いつつ、原せんせーの論文のそのあたりの記述に対しては、その時点で反証だせなかったから言わなかったわけだけども。 (真面目な論に反論するなら根拠大事なのです)

2023-01-30 19:06:28

⑥山姥切国広の再発見と「山姥切」長義

堀川国広とその弟子(昭和37年)

セツカ@更新情報 @waterseed_upd

⑥山姥切国広の再発見と「山姥切」長義:堀川国広とその弟子(昭和37年) この本、出版者が個人名です。 コレクターの記念個人出版というわけです。 山姥切国広の再発見経緯が冒頭に掲載されています。 dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid…

2022-05-26 23:09:33

堀川国広とその弟子  NDL限定送信

セツカ@更新情報 @waterseed_upd

⑥続)再発見経緯については、日本名刀物語にももうちょい書かれていた…はずなんですが、再刊行されたからかデジタルコレクションになくなってますね。 たぶんこれです。 amzn.to/38qznBK

2022-05-26 23:11:26
セツカ@更新情報 @waterseed_upd

⑥続)はい、読んだ方「あれ?」となったでしょうか。「井伊家の蔵にあって」火災に遭ったという話になっております。井伊家拝領品を旧家臣が所持していたものの、処分したくなって井伊家を訪問したところから発覚した、というのがここに書かれた再発見一報です。

2022-05-26 23:14:07