宮廷絵巻を紐解くSL(腐向け)

神聖ブリタニア帝国の歴史をセブン皇子で垣間見ツアーする、そんなギアス。
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白馬 @NotHAKUBA

頂上には小屋のようなログハウスがあった。セブンの手が扉を撫で、笑みを零す。「この彫刻もオデュッセウス殿下が?」紅茶を淹れようとしていた皇子が、いや…と表情を和ませた。「それはクロヴィス兄上だ」椅子を勧められればそこにも彫刻が。「これは別の兄上」「まさかこの机の縁も?」「姉上だ」

2019-08-12 22:20:06
白馬 @NotHAKUBA

「これを俺が」棚から木製コースターを出し、幾何学模様の彫刻を見せる。「オデュッセウス兄上に贈ったのがきっかけだった」アスレチックが完成してしばらくして贈ったのだという。「当時四歳だったナナリーも一刀入れた」「尊敬の気持ちを籠めて」「精一杯だったよ」コースターの上、二人の指が絡む。

2019-08-12 22:33:58
白馬 @NotHAKUBA

「スザク」「ん、何?」皇子の指が布越しを責めるように逃げて──連れ戻されて。「しないからな」「キスくらいは」「許す」兄弟たちの彫刻に囲まれ、唇を重ねる。「俺たちが」「うん」互いの吐息を交わしながら昔語りが続く。「贈ってから、我も我もと弟や妹たちまで」「皆、讃えたかったんだよ」

2019-08-12 22:51:59
白馬 @NotHAKUBA

この贈り物でお披露目が大分遅れたと、紫玉が照れ臭そうに瞬く。「こんな粗末なものを見に、皇族と貴族が集まった」「集まって?」茶を淹れるからと名残惜し気に皇子が離れ、許さないとセブンが追う。「スザク」「邪魔しないから。で?」「…見物だったよ」幽玄の、お粗末な第一皇子──その真の意味。

2019-08-12 23:05:55
白馬 @NotHAKUBA

「ナナリーとユフィがうずうずし出して」「わかるよ」「俺とコーネリア姉上で抑えている間に、弟たちがアスレチックに駆け出して」「ルルーシュは二人に恨まれなかった?」「着替えさせていたんだよ」きょとんと翠玉が皇子を映す。「母さんが絶対必要になるからって、ユフィたちの分まで」閃光の先見。

2019-08-12 23:20:39
白馬 @NotHAKUBA

「着替えた途端、ナナリーとユフィが走って」淹れたての紅茶が香を添える、幼い日々。「当然ルルーシュたちも」「ああ。コーネリア姉上が年長では唯一で、最初は恥ずかしそうにしていたが、すぐに弟妹の世話で忙しくなった」十代の皇子皇女は加わりたくても許さなかった。立場上、そして矜持が。

2019-08-14 22:38:19
白馬 @NotHAKUBA

「ルルーシュ」窓の外へ、思いを馳せる皇子の頬を擽りセブンが気を惹く。「ん…しないからな」「わかっているけど、少しだけ」思い出を汚したくないのはセブンも同じ、それでもこれくらいは許してよと甘える。「最後は豪胆な貴族の子も加わって、仲良くずぶ濡れになったよ」「さすがマリアンヌ様」

2019-08-14 22:53:50
白馬 @NotHAKUBA

『ルルーシュ、覚えておけ』『姉上』頂上から地上を見渡していたルルーシュに、コーネリアが声をかける。『見る者と動く者の差を』『お姉さま』『ユフィも、ナナリー…お前も』まだ幼い異母妹を抱き上げ、わかるか?と問う。『これが我々の生きる世界だ』『せかい?』『僕たちは目立つってことだよ』

2019-08-14 23:09:14
白馬 @NotHAKUBA

「居並ぶ皇族貴族どもの間抜け面は壮観だった」「オデュッセウス殿下はどうだったの?」後から母さんから聞いたんだが。「涙ぐんでいたらしい」「陛下は?」「父上は一言もなく早々に立ち去った」母さんいわく。「感動してあの人声出なくなったのよ、だそうだ」おかしそうに笑う皇子はまだ思い出の中。

2019-08-14 23:32:51
白馬 @NotHAKUBA

「ルルーシュ」十年、今も利用されているここに、一体誰が訪れているのだろうか。「僕はまた帝国が好きになったよ」「血迷ったか」「憎まれ口ばっかり言うんだから。ここは」言って、皇子の手に口づけを一つ。「皇帝陛下の秘密基地なんだよ」多分、きっと。「ルルーシュ、君のも」「ないな」「もう!」

2019-08-14 23:47:50
白馬 @NotHAKUBA

皇子皇女が皇帝命令で秘密基地を自作するっていっても、当然本当に一人で作るわけじゃなくって、お手伝いはある。オデュッセウス兄上は本当に一人でコツコツ作ったけど。ルルーシュも実は一人で作ったんだけど、政治的判断で嘘報告した。ナナリーは幼すぎて離宮の皆でお手伝い。そんな設定。

2019-08-08 23:35:19
白馬 @NotHAKUBA

シュナイゼル以下は大体作らせた。コーネリアでさえやりきれなかった。クロヴィスはデザイン頑張ったけど、十代の少年が自作するには凝りすぎた。ユフィ、無理。ルルーシュは力量をよくわきまえて、うまいことやりおったよ。

2019-08-08 23:39:11
白馬 @NotHAKUBA

オデュッセウスは自作したといっても、材料は少し齧ったくらいでほとんど用意してもらって、主に組み立てだけ。ちゃんと建築家がチェックしているし、助言もしているし、物持ち程度の手伝いもしているから、やわな造りはしていない。デザインもオデュ。

2019-08-12 23:30:46
白馬 @NotHAKUBA

ルルナナの秘密基地はちゃんと今もアリエスに。

2019-08-08 23:41:56
白馬 @NotHAKUBA

緑の迷路を抜けた先、木々に覆われた丘…と思っていたものが実は一本の木と言われて一体誰が信じるだろう。「嘘でしょう…」目の前にぽっかり空いた入り口、そこが皇子の秘密基地だと一体誰が思うのか。「これが帝国の…」「どういう意味だ?」「僕の秘密基地とのギャップが」「後で詳しく」「嫌だ」

2019-08-25 00:24:32
白馬 @NotHAKUBA

「これを…七歳で?」道成す植木に触れ、セブンが呆然と丘改め巨木を見上げる。「そのイチイは元からあったものだが、迷路は俺が地道に植樹した」「七歳のくせに…!」「もちろん庭師に相談したが?」今でこそ俺の背を超えたが、植樹当時は一抱えほどの苗を穴を掘っては植え掘っては──「七歳児!!」

2019-08-25 00:37:16
白馬 @NotHAKUBA

「道具は用意された。後は根気、だろ」大仰に嘆くセブンの胸を叩き、ふふんと得意げに皇子。「入れよ、もっとお前の鳴き声を聞かせろ」「どこでそんな言葉を」「異母妹の蔵書から」しれっと秘密を暴露する異母兄に、ユフィィィィッ!!とセブンが絶叫する。「刺激的だろ?」「初々しすぎて」「ほおう?」

2019-08-25 00:58:08
白馬 @NotHAKUBA

「お前、経験者だからって偉そうなんだよ!」「頭でっかちの君に言われたくないな」「実践もしている」火に油を注いで、注がれる情熱と熱情。「脳内で?」「実践の意味も知らないのか、ラウンズ様は」四方に枝張り地面まで覆うイチイへと入れば、そこは木漏れ日の空間──静かな時がかき乱され惑う。

2019-08-25 01:27:21
白馬 @NotHAKUBA

「…ベッドがある」ふいに口論が途切れた。「ああ、最初は藁で寝床を作ってみたんだが」頭が冷え見渡せば浮かぶ感覚…これは感動だろうか。「父上に壊された」「大人げない」「思えばあれが反抗期の始まりだった」ドーム状の中は静謐な空気を湛え、来訪者を包みこむ。これが第11皇子の秘密の私室──

2019-08-26 00:42:28
白馬 @NotHAKUBA

その私室に扉はない。迷路を長大なアプローチにしてなお入り口を秘し、偶然にも辿り着けない設計になっている。高級家具は場を乱さぬよう配置され、散りばめられた光が外界とを切り離す。天蓋付きの寝台も、父帝のこだわりか、その光をうまく取り入れる作りになっていた。「キッチンまで」「座れよ」

2019-08-26 01:03:38
白馬 @NotHAKUBA

ソファに腰を下ろし見上げれば、枝葉の隙間に空が広がり、目を奪われた。紅茶が冷めるのにも気がつかなかった。「戻ってきたか」「え…あれ?」向かいに座っていたルルーシュのカップはとっくに空で、しかも読書中で、こうなるとわかっていたよと表情が語っている。「父上も来る度にそうなる」

2019-08-26 01:15:15
白馬 @NotHAKUBA

「よくここに来るの?」淹れ直してもらった紅茶を一口、それでもまだ現実感が戻らない。「一人になりたい時にな」「そんな頻繁に」「…俺のことだよな?」セブン、何食わぬ笑顔でさらりと。「もちろん」それからベッドを見やり、夜もここで…となぜか呟かれた。声が低い。「俺一人だぞ?」「当然だろ」

2019-08-27 00:21:28
白馬 @NotHAKUBA

「ここは陛下の秘密基地の一つで、君の私室だ。陛下は宿泊なさらない」「あ、ああ」立ち上がるセブンに、なぜか腰を浮かせる皇子。「内装は君の趣味に合わせているけど、全て贈り物だ」「…そうだな」近づくセブンに後ずさる皇子、何が起きているのかわからない。「なぜ逃げるの?」「理由を言え」

2019-08-27 00:35:58
白馬 @NotHAKUBA

「ルルーシュ。君さ、自分が皇子だって自覚ある?」速足で追われ、本能が背を見せ逃げ出した。それでも返答はぎりぎりの余裕でまぜっ返す。「たまに忘れるよ」「嘘だ」「たまには忘れさせろ」幹を盾にの攻防戦。「僕のことも忘れたい?」「ああ、今切実にな」「へぇ…忘れたいのか」「信じるなよ!」

2019-08-27 00:55:57
白馬 @NotHAKUBA

根に足を取られた瞬間、体を奪われた。幹に拘束されれば木漏れ日を映した翠が不穏の影に引きつる紫を捉え、ほほ笑む。「護衛くらいつけろ」「ここも離宮内だ」「なら秘密の私室のセキュリティレベルは?」「低くはない」ルルーシュ?と殺気と紛う熱い囁きが。「もう一度言ってくれるかな」「…低い」

2019-08-27 01:20:36