旧エヴァ+ユング・ノイマン的解釈-碇ユイの真の目的と初号機暴走のメカニズム-

戯れに、ユング・ノイマン的解釈による旧エヴァ考察とかやってみた。
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アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

ユングがこれを説明する時に特に強調しているのは、母子の関係が必ずしも母親自身の影響が直接、その子に伝わるものではないということである。母親は保護者として子に対する支配権を行使する。しかし実際には母親を取り囲む複数の元型構造を基にした多くの特徴を有している。

2010-04-14 02:27:10
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

それを当の子がその複数のイメージを自分の母親に投影するのである。太母における複数のイメージは大概対立的な概念となって描き出される。それは肯定的な側面と否定的な側面の両面的な顔を持っている。譬えば「子を優しく慈しみ育てる母親」と「意味もなく体罰を与える恐ろしい母親」といった具合だ。

2010-04-14 02:39:44
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

対立的な概念として表れるという性質は、元型それ自体が有する特徴であるが、それは表現形態(イメージ)によってのみ把握しうるもので、元型それ自体は仮説的な存在であるということにも注意されたい。ユングは、そのイメージは全てを見渡すことができないほど多くの側面を持っていると説明している。

2010-04-14 02:51:04
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

ユングが特に強調しているこの母子関係の中での説明を、エヴァ初号機と碇シンジの関係に置き換えることができる。既に述べたことであるが、碇ユイは初号機との接触実験においてSeeleないし集合的無意識に合一しその一部となったと述べた。

2010-04-14 03:12:35
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

行き当たりばったり的にパイロットに登用されたど素人の碇シンジは、使徒とまともに戦えるはずもなくしょっぱなから危機に陥ってしまう。そこから初号機の暴走となるわけだが、この暴走について、それは碇ユイの意志とか、彼女の母性が発動原因だとする説がある。しかしこれについてはどうであろうか。

2010-04-14 03:20:12
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

別にそれを完全に否定するつもりはないが、これまで説明してきたことを全て踏まえるならば、神秘的合一を目的とし、既に無意識のSeele(魂)となっているユイには、既に単純な母性本能やらは失われていたと仮定する方がうまく説明ができるとしたらどうであろうか。

2010-04-14 03:27:33
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

「ワケも分からず使徒との戦いの戦力として投入され、為す術も無く一方的にやられる」、この事からのシンジの、死への恐怖と危機感が、既に無意識Seeleとなり集合的無意識の一部となっているユイの、太母の元型周辺に投影されることで、暴走の起爆剤になったとした方が説明がつくのではないか。

2010-04-14 03:42:37
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

この事は再び交感神経の説明に戻り、なおかつ暴走し始めると共にシンクロ率が上昇するという展開と照らし合わせてみればさらに説明がつく。交感神経は「生の平衡を維持し、「ともに興奮する」という秘密の道を通じて、他人の生の内奥をうかがい知るばかりか、そこへ内的作用を放射していくものである」

2010-04-14 03:46:56
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

シンジの側からの死への恐怖と危機感が投影されることで暴走する初号機はまさに太母の元型的イメージにおけるネガティヴな側面、すなわち残酷極まりない虐殺、アルカイックな殺戮ショーをそのまま展開することになる。バール叙事詩の内容とほとんど一致しているかの如く。

2010-04-14 03:56:03
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

彼女が人間たちを打ち殺した時、人間たちの血潮は溢れ、彼女は膝まで血に浸った、いや首まで血に浸った。彼女の足元には人間の首が転がり、頭上には手首がイナゴのように飛び交い、彼女は喜びに溢れて、生首を吊るして自分を飾り、手首でベルトを飾った。

2010-04-14 22:34:37
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

アナトの腹は笑いで膨れ、心は喜びに満ち、腹は歓喜に溢れた。『バール叙事詩』

2010-04-14 22:36:31
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

実に恐ろしいインドの女神カーリー。ドゥルガーの命令を受けて魔神たちに襲いかかり、大殺戮ショーを展開する。ここでは陶酔・無意識化・死の狂騒とが互いに結びついている。http://twitpic.com/1f9pyl

2010-04-13 17:24:21
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アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

無意識のSeele、ないし元型について、ユングは、これらを過去におけるシンボル的なイメージの主要な源泉の一つといえる錬金術の理論と合わせて考察している。そこで、まず賢者の石についてそれがどのようなものであるのかを見てみよう。

2010-04-18 23:16:39
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

「賢者の石」は、「クィンタ・エッセンティア(第五元素)」+「第一質料(プリマ・マテリア)」という構成になっている。このクィンタ・エッセンティア及び第一質料には、千の名前をもつといわれるほどに多数の別名がある。たとえばアニマ・ムンディ(宇宙(世界)霊魂)を宿す「秘薬」とかである。

2010-04-18 23:30:11
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

この賢者の石=秘薬は、『エメラルド・タブレット』に記されているように、何らかの隠れた形で全物体に浸透しているとされる。世界霊魂は、旧約聖書における神の霊あるいは遍在する魂(シェキナー:神の臨在)と見立てられる。「宇宙は王の霊で満たされている」(『ソロモンの智慧』一章七節)

2010-04-18 23:47:33
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

錬金術師は「生きた宇宙エネルギー」であるこのアニマ・ムンディの不滅の火の光線、すなわち〈火花〉を迸らせることによって、賢者の石=秘薬を含んでいる肉体に生命の息吹を与えるとされる。この〈火花〉のうちには「悟性」も含まれている。

2010-04-19 00:02:28
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

「悟性「も」含まれている」といったのは、賢者の石の中に含まれているアニマ・ムンディは、複数のもので、それが一体化しているものだからである。この賢者の石をユングは無意識そのものとみなし、複数あるアニマ・ムンディの火花を、ヌミノースな性質を持っている元型と同一視している。

2010-04-19 00:12:09
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

「錬金術師が賢者の石のアニマ・ムンディの火花を迸らせる」=「肉体に生命の息吹を与える」とは、肉体の力と健康を回復せしめる〈細胞再生薬〉としての効能を効かせているともいえる。この事と、初号機が暴走した際に、驚くべき再生力を発現したことは元型論からしても、照らし合わせることができる。

2010-04-19 00:34:54
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

もう一度簡単にまとめるなら、ユングは、賢者の石とその中に含まれる複数からなるアニマ・ムンディを、複数あるヌミノースな元型から構成される集合的無意識(生命エネルギーの源泉)と見立てている。その火花の明かりとなって顕現する光こそが、意識の上で捉えることができる元型イメージだと言える。

2010-04-19 00:39:56
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

暴走時に描き出される青白い炎(赤い時もある)のようなイメージは、アニマ・ムンディの火花と見立てることができるだろう。初号機に取り込まれたことで、無意識のSeele、集合的無意識の一部となっているユイはそれ自体が既に「賢者の石」でもあるということがいえるのである。

2010-04-19 00:50:07
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

再度の確認になるが、ユングらは無意識のSeeleが元型のヌミノースな性質を持った心の内的な動きであると定義している。このSeeleは様々な元型的イメージをまとった人格像として浮かび上がってくる。したがってユングらはこれを「内的人格」とも呼んでいる。

2010-04-24 16:22:25
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

これに対して、人間が普段外に向けている人格的な構えを、ユングらはペルソナと呼んでいる。これはギリシア・ローマの仮面劇から転用された語であるが、ユング的には我々が外界と接触し、世間と関係する際の適応体系ないし流儀としてつける仮面、あるいは顔そのものを意味して用いられている。

2010-04-24 16:30:13
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

したがって、Seeleが内的人格と呼ばれるのに対して、ペルソナは外的人格と呼ばれるのだが、このペルソナが元型であるか否かということについては実はユング派の中でも諸説あり、統一の見解はだされていない。

2010-04-24 16:34:46
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

ペルソナの例は簡単に出すことができる。新聞に載っている公人の写真、テレビに映っている公人のパフォーマンスなどはいい例である。たいていの職業はそれ特有のペルソナを持っている。また、世間は一定の作法を強いる(≒ペルソナを被らせようとする)し、職業人はその期待に応えようと努める。

2010-04-24 16:42:27
アブラクサス・アイオーン @Abraxas_Aeon

このペルソナをエヴァの拘束具と照らし合わせることが可能だ。リツコは、ゼルエルを喰らった初号機が取り外していくものについて、あれは装甲板ではなく拘束具だといった。そもそもの設定からして、エヴァは鬼神的存在であり、それを人間の手で制御するために抑え込んでいるということになっている。

2010-04-24 16:53:16