[R-18]凄腕の女料理人とか女執事とかが、雇い主である美少年の責めに屈服するやつ下さい、その2
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前回の話
以下続き
とある辺鄙な場所にお屋敷がありました。 豪華な作りで敷地も広いけどちょっとさびれている。 昔は大金持ちの本邸だったんだけど、今は高齢で入院してしまっていて、交通が不便なせいで一族は誰も住まなくて、だいぶ荒れてしまった。
2019-08-11 21:00:41しばらく経ってから、大金持ちの財産を管理する財団が、せっかくの立派な建物や庭をほったらかしにするのはよくないと修復にとりかかった。 警備と管理の専門家として訓練を受けた執事を一人派遣し、色々な業者を指図して、まずどこが傷んでいるか、何を直すべきかを調べているところ。
2019-08-11 21:02:43執事は背が高く、引き締まった体つき。 目鼻だちは整っていて、少し堅苦しい印象を与えるが、よく見ればすごぶるつきの美貌なのは間違いない。 でも色気はない。夏でもタイトな黒いスーツを着こなし、烏の濡羽色をした髪をきちんとなでつけ、金属フレームの角縁眼鏡をかけている。
2019-08-11 21:06:02無口で不愛想で、仕事はてきぱきとこなし、出入りの業者を怒鳴りもしないが、優しくも扱わない。しかし評判は悪くない。いい加減な注文だとか、確認漏れだとかそういうのが一切ない。納期や予算についても相場を外したものはひとつもない。 できるやつなのだ。 名前はレン。ちなみに女性。
2019-08-11 21:08:42脱ぐと巨乳で巨尻。以前は体の線を隠すような強化補正下着をつけていたので目立たなかったが、今は外しているので、目にしてどきっとする調査員や作業員もいる。でも相変わらず浮ついたところはない。
2019-08-11 21:10:31いつも冷静沈着、木石のごときふるまいである。 であった。 最近のレンはたいへん不機嫌だった。 財団のお薬を飲んでるので生理痛みたいのはほとんどないのだが、しかしとても苛ついている。風邪とも虫歯とも魚の目ともにきびとも無縁な頑丈剛健な体質なのに。
2019-08-11 21:13:22恋人とうまくいっていない? そんなことはない。 相手の男はレンにべたぼれ。四六時中一緒にいたがってうざいくらい。 業務に支障が出た? そんなことはない。 屋敷の修復計画はほぼ完璧に仕上がりつつある。 ではなんだろう。
2019-08-11 21:14:47さまつなこと。 財団の都合で一時お屋敷に引き取られていた大金持ちの遠縁の子供が、またどこかへ引き取られていっただけ。 預かっていた猫が里親を見つけていなくなったようなもの。 ただそれだけ。
2019-08-11 21:15:47プロフェッショナルが気にすべきことではない。 「…」 だが執事は仕事の権化らしくない行動をとった。屋敷の通信設備を動かして、財団の理事の一人と直通回線を開き、談判したのだ。 「レン。あなたの要請は却下します」 「…」 「あなたの身分の問題もありますが」
2019-08-11 21:18:48「…」 「これは相続順位百七十六位、ジョウのプライバシーにも関係します」 「…」 「あの少年には治療と休息が必要でした。屋敷で使用人にかしづかれる暮らしには適応できていなかったのです」 「…」 「あなたらしくありませんねレン。財団の決定に異議を申し立てるなど」
2019-08-11 21:20:52「…花火を」 「なんでしょう」 「花火をする予定です」 執事はそう告げてから、所定の手続きに沿って会話を終了した。 花火が買ってある。手で持ってする小さな花火。 ジョウ坊ちゃまの健康診断が終わったら、アロハシャツとハーフパンツとサンダルで花火をしながら庭でご飯を食べる予定だった。
2019-08-11 21:23:15何かがおかしいことには気づいていた。 ジョウ坊ちゃまが、初めて屋敷に来た時から。 体には医療用拘束具の痕があった。特別心理療法のためと説明があった。子供が悲惨な状況で近親をなくし、大きな精神外傷を負いかねない場合に、衝撃を緩和する措置だと。
2019-08-11 21:25:58「えっと…よろしくお願いしま…す?」 そう挨拶する少年のぼんやりした表情は、何かがいびつだった。 ジョウ坊ちゃまはお屋敷に来る前から知っている。 とある文房具屋で何度か会っている。 レンの大先輩で引退した文具係メイド、ナヤが営む店だった。 財団の使いとして書類を届けに行ったのだ。
2019-08-11 21:31:05当時のジョウ坊ちゃまはどちらかといえば野良猫のように活発で好奇心旺盛な子供だった。お茶とお菓子を持ってきたときもきょろきょろとレンのようすを観察して、 「こんにちわ!どっからきたの?あつくない?おかしおいしい?」 とうるさく話しかけ、養い親の老婆に追い払われていた。
2019-08-11 21:33:42「もの覚えは悪くないけど、落ち着きがない子でね。文具係としちゃちょっと困ったもんだ。引き取ったときはもうちょと大人しそうだったのにねえ」 「…」 「あんたぐらい物静かならいいんだけどね」 「…」 「ほっときな。もの覚えがいいったって、財団の相続争いなんぞにゃ縁がないただの子供さ」
2019-08-11 21:36:09だが文房具屋の老婆が急死して、しばらくして執事の管理するお屋敷に引き取られた少年は、どこか借りてきた猫のようにおとなしく、おずおずした態度になっていた。 最もしばらく居つくにつれ段々と以前の活発さが戻ったようだった。 「花火!したい」 などの願いを遠慮なく口にするようになった。
2019-08-11 21:39:32屋敷の暮らしに適応できていなかったとは思えない。 レンは手袋を外して、虚空に長い指を伸ばし、何かを握るように動かす。 握手。 「握手!」 ほんのすこし前まで、そんな風に腕を差し出す少年がいた。
2019-08-11 21:43:24「あ。えっと。あ…あ…あの。あ。僕レンさんが好きです」 ジョウが告げる。手を握りながら。いつも高めの体温が伝わる。 「ふつう!ふつうに好き。あ。やっぱ…ふつうじゃないかも」 「…」 「やっぱふつう…」 だんだん声が小さくなっていく。でも手は離さない。
2019-08-11 21:46:17ふつうとは。 「やっぱ考え中…です」 「…」 眼鏡を直して、執事は坊ちゃまの手を握り続ける。 あと十秒。二十秒。もうすこし。もうすこし。 「好き」
2019-08-11 21:48:00言葉にこもっている意味を、受け止める勇気が出ない。 主人がお気に入りの使用人にかける厚情。 子が親を慕う思い。 いつも一緒にいるペットをかわいがる気持ち。 あるいはそれらがいりまじったもの。 きっとそんな何か。 「好き」 童の双眸をのぞき込むのが怖い。
2019-08-11 21:52:02