[R-18]甘々ママドラゴンだあ?お前がママになるんだよ!!
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「やる…殺して…やる…犯して…糞ババア…ガキも……」 敗北の騎士バロールは全身から生えた牙のあるあぎとで、森の獣を、鳥を、虫を、意志を持って動く一切を貪り喰い、意志を失った屍をも齧り尽くしながら移動していた。 「竜どもを残らず犯して食い尽くしてやる…一匹たりと…」
2019-08-22 22:32:24「フフ…下手だなあバロール君。下手っぴさ。怨念の募らせ方が下手…」 異形と化し四囲のあらゆる骨肉を取り込まんとする男の目前で不意に誰かが話しかける。 いや、何か、と言うべきか。 騎士の全身で絶えず咀嚼を続けるあまたの口の、とめどない飢えを持ってしても、存在を気取れなかった、何か。
2019-08-22 22:37:18「バロール君が本当に犯したいのは…子供(こっち)の方だけ…帝国の騎士流に下の逸物でズンて“絆”して…発育途上のお腹の中ホッカホッカにしてさ……冷えた眼で見下ろしながら犯(や)りたい……だろ…?」 「…んだてめえは」 話しかけるのはもやもやした影のような頼りない姿。食欲をそそらない。
2019-08-22 22:40:58「フフ…。だけど……主敵のはずの雌竜をほっといて子竜だけ狙うのはあまりに筋違いだから....両方犯そうとするフリでごまかそうって言うんだ……。バロール君、ダメなんだよ……!そういうのが実にダメ…!せっかく冷えた目で犯した獲物を見下ろそうってのに…その妥協は傷ましすぎる……!」
2019-08-22 22:43:27貪食の化身は目にもとまらぬ速さであまたのあぎとを持つ腕を振るったが、しゃべり続ける奇態な亡霊を素通りしただけだった。 多弁なあやかしは気にもとめていないようすだ。 「そんなんで復讐のための凌辱をしてもうまくないぞ……!嘘じゃない。かえって慚愧の念がたまる……!」
2019-08-22 22:46:49「最後まで子竜に粘着していた相棒の顔がちらついてさ。全然スッキリしない……!心の毒は残ったままだ、仲間の仇討ちのし方としちゃ最低さ」
2019-08-22 22:48:20「バロール君……復讐ってやつはさ.…理屈を通しちゃダメなんだ……!やる時は気持ちのままにやった方がいい…!それでこそ絆でつながった人間の死も報われる」
2019-08-22 22:50:27騎士はたちつくした。どうすればうるさい幽鬼のたぐいを追い払えるのか思案しながら。 「バロール君はさ、小さな子供を“絆”するのが好き…そして相棒のコンラッド君は男を“絆”するのが好き…今バロール君は相棒のむくろを食らい一つになった。バロール君の中にコンラッド君は生きている」
2019-08-22 22:54:07歌うように亡霊は話し続ける。あやしく揺らぎ、内なる光を瞬かせながら。 「旦那が俺の中に…」 「そうだよ。だからね…二つの“絆”への想いを一つにすべきじゃないかな…」 「絆への…思い…だと…」 「そうとも」 「考えたまえ。もしコンラッド君なら、はたして雌竜を犯したかな」 「しねえな…」
2019-08-22 22:56:16「では子竜とは“絆”したかな?」 「…した…かもしれねえ…あ、どうかな…旦那はもうちょっと育った方が…でも匂い嗅いでたしな…」 「ほら、もう答えは出ている」 「待った…いったいお前、誰なんだ…」 「グググ、私のことは気にしなくてもよい。この世界のできごとはたまたま…」
2019-08-22 22:57:47「ググ…覗かせてもらっただけ…“煌気”とやらと竜の力の激しいぶつかりあいが…次元の壁を貫いて外へ漏れ、海にこぼれた血の匂いを嗅ぎつけた鮫の群の如く、わしのごときものどもを引き寄せたにすぎぬ…」 「答えになってねえ…」 「失われた“鉄棍”の補いを…くれてやろうではないか…“魔狼”よ」
2019-08-22 23:01:51人の形をしたゆらぎは、まるで魔術師が長衣の袖から品物でも取り出すように、虚空から躯を一つ投げてよこした。 緑の肌をした屍骸。まだこときれて間もない。小鬼(ゴブリン)に似ているがどこか異なる。より野卑で愚鈍そうだ。 「その血肉をお前のものとせよ」
2019-08-22 23:03:56「くせえ匂いがしやがる…」 「選り好みもしておれぬだろうバロールよ。所詮は異なる地より生じた体、たとえ取り込んだところで長く保つまいが…一時はその匂いに宿る、あらゆる雌を狂わす力を借りられよう」 「なんだと…だったらあの雌竜を」 「たわけ…成熟した竜を狂わせれば死あるのみ…」
2019-08-22 23:06:39「子竜の方は雄だろうが!」 「さてこそ…我等獣鬼(オーク)の蹉跌はそこにある…雌をいくら狂わせようと…鋼でよろえる雄の群…騎士には歯が立たぬ…なればこそ…わしの力が…ものを言おう」 「…てめえ…だんだん若作りがはげてきな…うさんくせえ年寄りが…」
2019-08-22 23:08:49「グググ、年齢も、種族も、性別さえ、何ほどの意味があろうか。万物は流転し変容するもの…証拠をくれてやろう」 緑の肌の屍骸の横にねじれた杖が転がる。 「そこにわしの力の幾許かを分け与えた。幼いとはいえ竜を狙えば、仕えるのはせいぜい一度か二度だが。獣鬼の血と二つながらに使えば」
2019-08-22 23:10:18「俺はこれでも…人間を守る帝国の騎士なんだよ…てめえはどう考えても人間じゃねえな…そういうやつの力を…借りると思ってんのか!」 「借りるのだろう?お前はそういう男だ。バロール君」 「…へっ、名前を聞いとくぜ」 「獣鬼魔道…そう呼ぶものもいる…だが時は来た」
2019-08-22 23:12:23「もはやこの次元の破れは閉じる…あとは…健闘を祈るよ。ググ、グググググ!!!!」 泥沼の泡立つような笑いをさせて、亡霊は掻き消えた。 単なる白昼夢だったかもしれない。
2019-08-22 23:13:58いや、夢を通じてやはりこの世ならぬなにものかが話しかけてきたのやも。 魔狼のバロールはあたりを見渡し、足元で異臭を立てる屍とねじれた杖とを交互に眺め、おもむろに腕を伸ばすと、両方へ同時に歯を立て、噛み砕いていった。
2019-08-22 23:15:17◆◆◆◆ 「いい加減参るな…ママにも…あ、あったあった」 子竜のリクはぶつぶつと独りごとを言いながら、丈高く生い茂る草を掻き分け、隠れた洞窟の入口を見つけた。中から湿った風が吹いてくる。 「ここなら…さすがにママも気づかないだろ」 いちいち母親について言及しながら這い込む。
2019-08-22 23:19:55中はだいぶ広くなっていて、立って歩けるぐらいだ。 「よし…一時間ぐらい大丈夫…多分」 少年はあたりをうかがってから、しゃがみ込む。
2019-08-22 23:22:01十代半ばぐらいか。赤髪から角を生やし、指には爪。肌にも随所に鱗があるが、かおかたちは人間に近い。愛くるしさと精悍さのあいまった、いかにも子供から大人へなりかけの面立ちだ。 もう一度周囲を確認してから、装束を脱いで几帳面に畳むと、壁際において、少し距離をとる。
2019-08-22 23:25:25