浪人生の俺が奴隷美少女を解放したら恩返しにおしかけ女房してきてどうなっちゃうのー?

美少女ってほど小さくない。 敦煌はクソラノベ。 素敵なイラストを描いてもらった! https://twitter.com/tsuchifuru_mifu/status/1172521055740542976
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帽子男 @alkali_acid

ロウロウは古布をしまい丁寧に辞儀をして寺院をあとにした。 まだ心ここにあらずといった風情。 懐の中の銀にすがるように指を巻きつける。 「…酒でも飲もう」 貴紳のたしなみとして学生には杯を上げるものもあったが、ロウロウにはそんな余裕はなかった。だから初めてだ。

2019-08-25 15:00:13
帽子男 @alkali_acid

「酒を飲んで、そうすればきっと…」 きっとどうなるかなど考えもつかなかったがともかくそうするのだ。 決めた。 また涙が湧いてくるのを今度は袖でぬぐい、よく周りも見ずに足を速めると、いきなり人だかりに頭から突っ込む。

2019-08-25 15:01:24
帽子男 @alkali_acid

「わっと…と!!?」 よろけ、石畳の床につっぷしそうになって辛うじてこらえる。 あたりからざわめきが起こり、野次馬が遠ざかる気配がする。 「おうおうおうおう!やっと買い手だな!よーしいくらだす!」 だしぬけに浴びせられただみ声が耳に痛い。

2019-08-25 15:03:03
帽子男 @alkali_acid

樽のような胴をした半裸の大男が、片手に大刀を構え、片手に鎖を持ってわめいている。鎖の先は、そばに立つ裸の娘の首につながっていた。 ロウロウはあわてて四方を眺めまわし、正面に視線を戻して息をのむ。

2019-08-25 15:05:35
帽子男 @alkali_acid

娘の年頃は、若者と同じかすこし下か。はっきりしない。 黄金の髪に黄金の目。浅黒い肌には奇怪な文字とも模様ともつかぬ黄金の刺青がある。瞳孔が縦に狭まり、唇から犬歯が覗く。 異人だ。書にある南方の蛮夷の特徴だ。獰猛で剽悍な民で、しばしば帝国の辺境を荒らす。

2019-08-25 15:11:20
帽子男 @alkali_acid

「…金目人…黥文は身分の高いものの証だ」 ぼそりと呟くと、大男は破顔する。 「ほーこの奴隷の値打ちが解るか。気に入ったぞ小僧!いくらで買う」 「買う?律令は首都での奴隷の取引を厳しく戒めております」 「やかましい!!俺は今すぐ金がいるんだ!城外の市場まで行けというのか」

2019-08-25 15:13:15
帽子男 @alkali_acid

ロウロウは咳ばらいをしていずまいをただした。 「お言葉ですが、そもそも律令の本意は、人が人を売り買いすることは徳を貶めるというところにあります。したがって城外ならよいという話ではなく」 「買うのか!買わんのか!」

2019-08-25 15:14:56
帽子男 @alkali_acid

「か、買いません」 「そうかそうか、ならこの女はここでさばいてやる!!生きた異人は売れんが!死んだ肉なら買い手もあろう!」 大男が刀をふりかぶる。金の娘は抗いもしない。浪人生は瞠目し、何か口を挟もうとして、はっと思いあたった。 「もしや…あなたは」

2019-08-25 15:16:44
帽子男 @alkali_acid

「南の辺境に出征された兵士では」 凶漢は得物を構えたまま、ロウロウを振り返った。 「どうしてそう思う」 さっき寺院でそういう話を聞いただけだが。しかし武器の扱いに長けたところ、荒んだたたずまいなどはいかにもそれらしい。 「…実は…僕の父と兄も兵士にとられ、南で命を落としました」

2019-08-25 15:18:32
帽子男 @alkali_acid

「先帝の頃で、もう十年も前になりますが、もしやご存じないでしょうか」 父兄の名前を告げると、向こうに通じたようすはなかったが、表情がやや和らぐ。 「ふん。そうか。俺はごく最近戻ってきたのだ。いいか!律令がなんと言ったか知らんが、皇帝は我等に何も報いん!」

2019-08-25 15:20:07
帽子男 @alkali_acid

「あの蛮夷の地で戦い、血を流し、死んだ男どもに、からくも生き残った男どもに、何をしてくれた?ええ?最も勇猛なる我が虎笛隊は…きゃつらの酋長を襲い、この悪鬼のような小娘を生け捕りにした」

2019-08-25 15:22:22
帽子男 @alkali_acid

「だが…!幕営は知らぬ存ぜぬ…我等の犠牲などなかったかのごとく…こうして証拠を突きけても…おのれ…ならばせめて金に換えてくれる。さあいくら出す!」 「いえ…律令を犯すわけにはまいりません」 「ああそうか!なら肉を買っていけ!」 大男がいきなり娘の乳房の上を浅く切った。

2019-08-25 15:25:50
帽子男 @alkali_acid

たちまち血が噴き上がるが、金目人のおとめは牙をむき、低くうなっただけで微動だにしない。 ロウロウは汗をびっしょりかきつつ、兵士くずれの荒んで熱病にかかったような面立ちと、奴隷の気丈な容貌とを素早く見比べた。 「まっ…まった。買いましょう」

2019-08-25 15:27:45
帽子男 @alkali_acid

懐から銀を取り出して突き付ける。 「これだけしかありませんが…」 「ふん。意外に金持ちだな小僧」 「ほかに何もありません。着ている服と靴ぐらいなものです」 「…よかろう」

2019-08-25 15:29:51
帽子男 @alkali_acid

兵士くずれは鎖を投げてよこす。宙を舞った持ち手が勢いよく浪人生の額を打ち、うずくまらせた。 「いた…」 「どんくさいやつだ。そら」 銀をもぎとると、大男はからからと笑って大刀を背に負い、歩き去ろうとし、振り向いた。 「ひとつ言い忘れたがな」

2019-08-25 15:31:35
帽子男 @alkali_acid

「その鎖は幕営づきの道士がこしらえた、たいそうな呪いがかかっている。掴んでおれば、そいつはたいていの言いつけには逆らわん。だが男女のことだけは…かかか!やろうとした兵士はかみちぎられてひどい最期だったぞ」

2019-08-25 15:34:07
帽子男 @alkali_acid

唖然とするロウロウを置いて、今度こそ大男は人込みを押しのけて消えていった。 「…え?」 今、奴隷の売り手がした話を整理しよう。 金髪金眼の美しい奴隷娘は、道士がこしらえた鎖で主に逆らえない。 ただし男女のことだけは別。もしことに及ぼうとすれば、かみちぎるという。何を?かみちぎる?

2019-08-25 15:37:00
帽子男 @alkali_acid

かみちぎる? かみちぎる?

2019-08-25 15:37:17
帽子男 @alkali_acid

「気の毒な若者だ」 「いささか毛色が変わっていても、たいした美人と思えば」 「まさかにそちらの役には立たない奴隷を買わされるとは」 「やはり皇帝の律令に背くような取引をした報いかね」 「こわ。近寄らんとこ」 野次馬は三々五々散ってゆく。

2019-08-25 15:38:58
帽子男 @alkali_acid

ロウロウはようやく立ち上がり、思わず空(から)になった懐に手をつっこみ、涙ぐみかけてから、若い女の前なのに気づいてこらえ、できるだけ厳しい顔つきを作る。 「あなたも、もう行ってください」 そう呼びかけると、奴隷はじっと山吹の双眸で見返してくる。 「首都で奴隷の取引は成り立たない」

2019-08-25 15:42:07
帽子男 @alkali_acid

「律令に照らせば、あなたはただ鎖をかけて連れてこられた気の毒な方です。したがって、どこへなりとゆけます」 「…いけない」 初めて答えを返し、奴隷娘は首の鎖を掴んで振った。何でできているのか、鉄とも銅とも異なる青みがかった艶を帯びている。

2019-08-25 15:44:01
帽子男 @alkali_acid

「…そ、そうですね…鎖が邪魔ですよね…ええと…では鍛冶のお店で外してもらいましょう」 「はずせない」 「…いえ、首都には腕のよい職人がいるそうです…僕は詳しくありませんが。きっとどうにかなります」

2019-08-25 15:45:05
帽子男 @alkali_acid

ぺちゃくちゃ話してから、ロウロウは急に赤くなってそっぽを向いた。 「すいません。着るものを…すぐ…ええと…僕の…でもこれしかないし…」 「いらない」 「え?」 「じゃまだから」 「いや。そうはいきませんよ」

2019-08-25 15:49:05
帽子男 @alkali_acid

ひとまず若者はいっちょうらの服の袖を肩から裂き、糸を歯で切って、二枚の布をこしらえると、なるたけ娘にまなざしを向けないようにしながら渡そうとする。 「これを身に巻いてください…」 「…命令か?」 「え?」 「私に命令しているのか」 「いや…決してそんな」 「ならいらない」

2019-08-25 15:56:48
帽子男 @alkali_acid

「いや、それはこまります!」 「どうしてもその汚いぬのをつけさせたいなら、命令しろ」 「…そんな…婦人というものは慎みをもって」 「私にはかんけいない」 「…あります!」 「ない」 「…うー!!じゃあ命令します!身にまいて下さい」

2019-08-25 15:58:24
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