お嬢様の身がわりにバケモノに嫁いだメイドがひどい目に遭う話・前編

はーやでやで。後編もまとめました。 https://togetter.com/li/1400985
68

以下は関係あるようなないような

まとめ 浪人生の俺が奴隷美少女を解放したら恩返しにおしかけ女房してきてどうなっちゃうのー? 美少女ってほど小さくない。 敦煌はクソラノベ。 素敵なイラストを描いてもらった! https://twitter.com/tsuchifuru_mifu/status/1172521055740542976 12994 pv 32 1 user

ここから本編

帽子男 @alkali_acid

そばかすギザ歯で語尾が「っす」っていう背も胸も尻も大きくはないむしろガリな女の子はどうよ。 そんでさそんでさ。どっかのお屋敷のほわほわしたお嬢様にお仕えしてて仲は良いんだけど、ひまがあるとこっそり隠れて煙草吸ってる。ちな非処女。

2019-08-27 20:41:28
帽子男 @alkali_acid

病弱であまりお外へ行けないお嬢様のかわりにあちこちお使いにいって、「お嬢様はやく元気になってほしいっすねー」などとお参りもして、お守りだの薬湯だの買って帰る。 ええ子やんな。まあ出先でも煙草は吸うが。

2019-08-27 20:43:43
帽子男 @alkali_acid

「そんな強いの吸ってるとそのうち頭馬鹿になるぞ」 とか店の人に言われても 「いやー、あたしもともと馬鹿っすから」 などとへらへら笑ってる。

2019-08-27 20:45:42
帽子男 @alkali_acid

前の男とはもう切れたというか不倫だったし向こうが忙しくなったし世間体とかもあって呼ばれなくなった。 だから今は特に誰とも寝てない。 そういう娘。まだまあ、まあ少女。

2019-08-27 20:47:23
帽子男 @alkali_acid

いちおうお嬢様の恋の相談も受けたりして、お嬢様はお嬢様であるからして、ふつうに幼馴染の若様に切ない思いを抱いてたりして、初体験が割と年上でしょうもない関係だった召使としては、 「いっすねー」 みたいな気持ちで聞いてる。

2019-08-27 20:50:20
帽子男 @alkali_acid

まあいつもそんなのんびりでもなく、忙しいは忙しいでばたばたして。 なにせお屋敷の方も旦那様は偉いお役人であっちいったりこっちいったり。 出張が多い。 先日もかなり遠い土地で音信が途絶えてすわ事故かと思ったら、 なんとか帰ってきたし、役所の仕事にも穴は開かなかったんだけど。

2019-08-27 20:54:01
帽子男 @alkali_acid

やっぱ召使にはよう解らん心配ごとがあるみたい。 お嬢様も悩んでるっぽいけどさすがに話せる内容じゃないらしく、とりあえずなだめて寝かせたあとで、さすがに自分もへとへとになり夜中にこっそり台所の外で常夜提灯に群がる蛾を眺めつつ、煙管燻らせて、ぼーっとする。

2019-08-27 20:55:27
帽子男 @alkali_acid

名前はどうしようか。 ないと不便なのでリィリィとしようか。ちょうど外で虫がそんな感じで鳴いてるし。 「リィリィ」 お嬢様が呼ぶ。かわいい声でね。

2019-08-27 20:56:19
帽子男 @alkali_acid

「わ、ちょっ」 あわてて煙管を隠そうとする召使に、幼い女主は近づいてしゃがむ。 「それ、たばこ?お父様が吸ってるの見たことある」 「いやーお恥ずかしいところ見られたっす」 「お母さまはきらいだけど、私はへいき」 「忘れてくださいっす」

2019-08-27 20:58:14
帽子男 @alkali_acid

「つまんないの」 口をとがらせるお嬢様。それからうつむく。 喫煙具を片付けながらたずねる召使。 「なんすか?心配ごとがあるんすよね?聞くっすよ」 「…うん…」 「なんでも話してくださいっす」 「私ね…お嫁に行かなきゃいけないかも」 「え?おめでたい話…じゃないんすね」

2019-08-27 21:00:10
帽子男 @alkali_acid

「お父様がね…お役所で、御用金を運ぶ役目をいいつかって…西北の海のそばの…ずっと寒い土地でね…でもあそこは恐ろしい人達がいるの…それでね…泥棒にあって…死ぬところだったの…それでね…助けてくれた方がいて…」 「あー」 田舎の豪族に恩を売られたのか。

2019-08-27 21:02:11
帽子男 @alkali_acid

「お父様ははっきりおっしゃらないけど、お母さまはまともな人間じゃないっていうの…野蛮な…ばけ、ばけものだって」 「へ?」 「これ…」 一枚のぎらぎらした銀の羽をふところから出す。やたら大きい。 何か提灯の下で見ると、蛾の翅みたいなてかりがあって、きもちわるい。

2019-08-27 21:04:30
帽子男 @alkali_acid

「こんなものを…婚約の印に送ってくる人って…どう思う」 「そっすね…ちょっと怖いっすね…」 「…私ね…私…行く…だってお父様はそうしてほしそうだもの。上の姉様ふたりはもう嫁いだし、弟は男だし…ばけものみたいな人を怒らせて…何かあったら…私…お行儀もお裁縫もだめだけど…」

2019-08-27 21:07:42
帽子男 @alkali_acid

「そんなことないっすよ。お嬢様はちょっとぼやっとしてるだけでいざとなったらできるっす」 「リィリィったら!とにかく、おうちの役に立つなら…いく…でも…あの…」 「幼馴染の若様のことっすか」 「…うん。何度か手紙を届けてもらったでしょう」 「近頃はあんまり行ってないっすけど」

2019-08-27 21:09:56
帽子男 @alkali_acid

「しょうがないの。文官の採用試験がもうすぐだもの…今度はきっと最終試験まで残って合格する…そうしたら…迎えてくれるって…馬鹿ね。私、ほんとぼやっとして…待ってるあいだに…」 「お嬢様」 召使は頭を掻いた。 「あたしが…お役に立つっすよ」 「いいの…向こうにはお供も連れて行かない」

2019-08-27 21:12:18
帽子男 @alkali_acid

「行くなら一緒っすよ」 「だって…いいの?北の…雪ばかりのところだって」 「余裕っすよ。それより、お嬢様。若様に手紙書いた方がいいっすよ」 「…なんて…書けば…」 「正直に全部書いちゃうっすよ」 「そんなの…できない…若様がどれだけ悲しむか…」 「何も知らないうちにいなくなった方が」

2019-08-27 21:14:08
帽子男 @alkali_acid

「悲しいっす。きっと」 「…そうかしら…」 「そうっすよ!ほら!あたしが届けるっす!前みたく」 そんなこんなでリィリィはお嬢様を励まし、また使い走りを買って出た。 「あ、ところでさっきの婚約の印?借りてもいいっすか?」 「…私がもらったものだから…いいと思うけど…どうするの?」

2019-08-27 21:15:57
帽子男 @alkali_acid

「きもちわるいけど、きれいなんすよね。ちょっとだけさわっててみたいんす」 「リィリィったら。変わってる」 でもお嬢様は羽を貸してくれた。ひんやりと冷たい。まるで溶けない雪みたいだ。

2019-08-27 21:17:23
帽子男 @alkali_acid

変な品だがただ怪しげなばかりでもない。 懐に入れていると涼しいが、寒くはない。動き回って体が火照った際もすーっと鎮まる。途中休憩して煙草を吸う気にならないぐらい。 リィリィはまずお嬢様の手紙を預かってちょこまかと若様の住まいへ。 学業に集中するため、屋敷を出て学生街に居を構えてる。

2019-08-27 21:20:10
帽子男 @alkali_acid

「やあ…来たかリィリィ。相変わらず小鳥のように元気だね」 書生というのはだいたいむさくるしいものだが、若様は瀟洒なたたずまい。 「手紙っす」 「…おお…あの人からか…」 封印に接吻して受け取る。

2019-08-27 21:22:02
帽子男 @alkali_acid

「なんと…これは…本当か?」 蒼白になる若君に、リィリィはうなずく。 「あたしがほかの召使から聞き回った限りでは本当っす」 「しかし…僕はあの家と懇意だし…ちゃんと文官試験に合格すれば交際を認めると…あの人のお父上から」 「大旦那様の話はあんまり真に受けない方がいいっす」

2019-08-27 21:24:38
1 ・・ 5 次へ