ぱすイカ二次創作⑥

オクトーくんはかわいいね 書いたもの:https://togetter.com/id/pascal_syan
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ぱすかる❄ @pascal_syan

クマサン商会の中へ入る。 薄暗い室内に、ずらりと並べられたブラウン管のモニター。漁業で使うような網や道具が、そこらじゅうに無造作に置いてある。クーラーボックスの上に、木彫りのクマの置物がぽつり。他に人気がない。スタッフが多数いると聞いたが……?

2019-09-09 12:07:15
ぱすかる❄ @pascal_syan

「お疲れさまでーす」 サキは、木彫りのクマに挨拶をした。 「やあ、待っていたよ」 なんとクマが答えた!置物なのに!よく見ると、細いアンテナが生えている。どうやらただの置物ではなく、無線のスピーカーらしい。 「あっちで着替えるよ~」 「は、はい」 状況をうまく飲み込めないが、ついていく。

2019-09-09 12:10:39
ぱすかる❄ @pascal_syan

「ロッカーに制服入ってるから、好きなとこ使ってね」 男子更衣室に案内される。ちらほらと人がいる。無言だ。その目付きは、鋭いとも鈍いとも言えるような、異様。 適当なロッカーを開く。緑のゴム手袋、緑のゴム長靴、オレンジ色のゴムエプロン。そして、商会のロゴがプリントされた帽子……

2019-09-09 12:14:10
ぱすかる❄ @pascal_syan

「この帽子は……」 サキが普段被っているものとよく似ていた。灰色のゴムバンドが、頭の上に通されている。一通り着替えたあと、鏡を見る。……まるで漁業関係者だ。過酷な漁へ出掛けていくような、そんな感じの。

2019-09-09 12:16:11
ぱすかる❄ @pascal_syan

「新入りかい?」 「!?」 突然、声をかけられた。自分と同じ格好をした男性だ。 「え、ええ、そうです」 「そうかぁ。がんばりなよぉ」 ぽん、とオクトーの肩を叩いてから、男性は更衣室を出ていった。 聞かずとも分かる。あの眼は、表情は……ベテランのそれだ。

2019-09-09 12:19:39
ぱすかる❄ @pascal_syan

「オクトーくん、着替えた~?」 隣の女子更衣室から、サキの声が聞こえる。 「はい」 返事をしながら男子更衣室を出る。サキが外で待っていた。 「じゃ、次はこっちね」 壁に、白い大きな浮き輪がたくさんかけられている。サキは、そのうちのひとつを手に取った。オクトーもそれにならう。

2019-09-09 12:22:27
ぱすかる❄ @pascal_syan

「こうやって、背中に背負うの」 「インクタンクみたいですね」 「そうそう~」 白い浮き輪の中身が、髪の色と同じオレンジのインクで満たされていくのがわかる。 「で、これ」 銀色のレトルトのパウチのようなものを、2つ渡された。 「ここに挟んでね」 帽子のゴムバンド、そうやって使うのか。

2019-09-09 12:25:09
ぱすかる❄ @pascal_syan

「準備オッケー?」 「はい、大丈夫です」 「じゃあ、さっそく船に……あ、待った!研修終わってる?」 「マニュアルを読んできました。内容については把握しています」 サキの表情が少しだけ曇るが、 「オクトーくん強いから大丈夫か!」 「えっ……?」

2019-09-09 12:27:31
ぱすかる❄ @pascal_syan

「じゃ、船に乗ってみよー、現場に行ってみよー」 ドアの向こうは、港。多数の中型船が停泊していた。晴天。日は、傾き始めている。もうすこしで、綺麗な夕焼けが見られそうだ。 「すいませーん、あと二人入れてくださーい!」 船の群れに向かって、サキが大声で呼び掛ける。

2019-09-09 12:30:40
ぱすかる❄ @pascal_syan

「いいよぉー」 遠くから、誰かが手を振っている。そちらへ走って向かい、船に乗せてもらった。自分達と同じ格好の若者が二人、船内の椅子に腰かけていた。 「お、サキじゃん」 うち一人は、サキの知り合いらしい。気だるそうな声の女性だ。

2019-09-09 12:33:00
ぱすかる❄ @pascal_syan

「なに、その子彼氏?」 「違うよ!!!!????」 「違いますよ……!?」 二人同時に反論する。 「チームメイト!ナワバリの!変なこと言わないでよ!?」 「はえ~、そいや、すごいところに入ったんだって?」 「そう、すごいとこ。彼も、めっちゃすごい人、ね?ね?」 「え、ええ、まあ…?」

2019-09-09 12:35:12
ぱすかる❄ @pascal_syan

「オクトーくんって言うの。知ってる?」 女性は、右の親指で帽子のツバを押し上げて、オクトーの顔をじっと見つめた。 「オクトーです。よろしくお願いします」 対して、オクトーは帽子を脱いで一礼した。何気ない所作から感じられる、彼の育ちのよさ。

2019-09-09 12:37:30
ぱすかる❄ @pascal_syan

「……キサラギ。よろしく、昨日のパラシェルターさん」 そう言われて、初めて気がついた。この女性を、オクトーは知っている。昨日対戦した、スプラチャージャーの使い手だ! 「こんなところで出会うとは、思ってもいませんでした」 「え、なに?なに?知り合い?」 蚊帳の外のサキが騒ぐ。

2019-09-09 12:41:09
ぱすかる❄ @pascal_syan

「昨日ナワバリでバトった。超、ボコボコにされたけどねえ」 「マジで!?世界って狭いねぇぇ~…」 サキの言う通りだ。 「でも、海は広い……」 窓の外を見つめながら、四人目の男性が呟いた。 「何が起こるか分からない……だから、面白いんだよ……」 ロッカーで声をかけてきた、あの人だ。

2019-09-09 12:44:14
ぱすかる❄ @pascal_syan

「あの人はゲンさん。超ベテランだよ」 サキが解説してくれた。ありがたい。 「よろしくお願いします」 「坊っちゃん、ラッキーだ……今日は、頼りになるのが二人もいる……あ、僕じゃなくて、あっちの嬢ちゃんたちのほうね」 「またまたそんなこと言ってぇ~」 「私は抜きにしてくださいよ、それ」

2019-09-09 12:47:24
ぱすかる❄ @pascal_syan

繰り広げられる謙遜のやりとり。これが物語ることはひとつ。三人とも、ベテランであるということだ。 船のエンジンが稼働する。出発の時間だ。 「今日もぼちぼち頑張りましょう~」 「えいえいお~」 「おー」 「お、おー……」 控え目に合わせておくオクトーであった。

2019-09-09 12:49:35
ぱすかる❄ @pascal_syan

サーモン・ラン。 クマサン商会での仕事を、そう呼ぶ者もいる。 手にはブキを、背中にはウキワを、頭にはスペシャルパウチを。 察しがつくと思うが、つまるところ、この仕事は「戦い」である。 敵は「シャケ」。海の中から襲いかかる「ヤツら」にインクをぶつけて蹴散らしていくのだ。

2019-09-09 12:54:59
ぱすかる❄ @pascal_syan

シャケを倒したときに得られる「イクラ」を集める。それが目的だ。だが、クマサンが真に求めているのは、イクラのなかでも特に上等な「金イクラ」である。 金イクラは「オオモノ」というシャケからしか採れないのだが、これがとても厄介な存在なのだ。

2019-09-09 13:14:55
ぱすかる❄ @pascal_syan

オオモノは全部で七種類。他のシャケとは形も大きさも攻撃方法も違う。それぞれの弱点も違うので、マニュアルをよく読んだり、研修を受けなければならない。勤勉なオクトーは、すでに特徴を頭に叩き込んでいた。

2019-09-09 13:17:54
ぱすかる❄ @pascal_syan

シャケと戦うことになる戦場は、全部で五種類。すべて海上にあるため、現場には船で向かうことになる。そして、サーモンランには、頼もしくも厄介にもなる要素がある。それは…… 「今日の編成、なんだっけ?」 サキがキサラギに尋ねた。

2019-09-09 13:31:41
ぱすかる❄ @pascal_syan

編成。これは、支給されるブキのことを指している。 ナワバリバトルで使われるものを対シャケ用にカスタマイズしたものだ。だいたい、ナワバリ用よりも性能が向上している。その代わり、インク効率が減少する傾向にある。 サブウェポンは、共通でスプラッシュボム。

2019-09-09 13:35:29
ぱすかる❄ @pascal_syan

スペシャルウェポンは、スーパーチャクチ、ジェットパック、スプラッシュボムピッチャー、ハイパープレッサーから、ランダムでひとつ装備される。 毎回4つブキが支給されて、その中から自分が使いたいものを選ぶ形式だ。それが「編成」。サーモンランにおいて、ブキは最も大切な要素だ。

2019-09-09 13:37:18
ぱすかる❄ @pascal_syan

※ストーリー進行に合わせて改変しています。ほんとは、4つのブキから「ランダムに」手渡されます。選ぶことはできないのだ!死にてえ。

2019-09-09 13:38:08
ぱすかる❄ @pascal_syan

「今日は、スシ、洗濯機、スクイク、キャンシェル」 順に、スプラシューター、スクリュースロッシャー、スクイックリン、キャンピングシェルターを指す。 いちいちフルネームを言うのも面倒なので、愛称で呼ぶ。イカ世界での鉄則だ。 「連射足りなくない?」 ガン萎え、といった表情だ。

2019-09-09 13:43:16
ぱすかる❄ @pascal_syan

確かに、スシ(スプラシューター)以外は、連射力の低いブキだらけだ。 シャケは大群でやって来る。連射力が高くないと、捌ききるのは難しい。 「あ、でもキャンシェルあるじゃん!オクトーくん、シェルター得意だよね?」 「はい。お任せください」 「シェルター使いかあ、渋いねえ……」

2019-09-09 13:45:39
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