ぱすイカ二次創作⑥

オクトーくんはかわいいね 書いたもの:https://togetter.com/id/pascal_syan
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ぱすかる❄ @pascal_syan

サキはそれに目もくれず、コンテナ周りに散らばった金イクラを、一心不乱に納品していた。 「急げ急げ!」 ゲンさんとキサラギもそれに続く。 雑魚シャケがコンテナへ迫ってくる。すかさずオクトーが迎撃する。 残り十数秒。サキの足元に、光るウキが迫る……!

2019-09-09 16:53:54
ぱすかる❄ @pascal_syan

「やば、……わーっ!?」 モグラが巨体を現した。打ち上げられ、宙に舞うサキ。落ちる先には、モグラの大きな大きな口が開かれていて…… やばい、死んだ。せめてボムを抱えて相討ちにしてやる! そう思った矢先。 鋭いインクの斬撃が、モグラを切り裂いた。間一髪、サキは食べられずに済んだ。

2019-09-09 16:57:03
ぱすかる❄ @pascal_syan

同時に、終業の合図が鳴り響いた。 「ノルマ達成した!帰るよ!」 「はい……!」 四人は、スーパージャンプでその場を離脱した。船へと雪崩れ込むように着地する。 「はあ、はあ、はあっ……」 四人とも、肩を上下させるほどの荒い息を吐く。命からがら、といった様子だ。

2019-09-09 17:02:26
ぱすかる❄ @pascal_syan

そして。 「やったーーーー!!!ナイスナイスナイス!」 「ひゅーーーー!!!」 「大収穫じゃん!!!」 ものすごい勢いで抱き合う。オクトーも無理やり引っ張られて、もみくちゃにされる。 「わわっ!?」 「お疲れお疲れお疲れ!!はあーーキツかった!」

2019-09-09 17:06:06
ぱすかる❄ @pascal_syan

大騒ぎしながら船内へ戻る。ハイカラスクエアがある方角へ、船が走りはじめた。 「いやーほんと、死ぬかと思った……サンキュー、サキ」 「えへへ、どういたしまして」 「助けていただき、感謝です。……何度も、申し訳ありませんでした」 「いいっていいって~!」

2019-09-09 17:11:24
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オクトーの真面目な謝罪を、サキは笑い飛ばした。 「でも、ナワバリだと立場が逆転しちゃうよね~。私が助けられる側になっちゃって」 恥じらうように目線を逸らす。 「オクトーくん以外にも、ナワバリで強い人達がよく来るんだけどね。だいたいが弱音吐いて逃げ帰っちゃうんだ」

2019-09-09 17:14:46
ぱすかる❄ @pascal_syan

「あれだけ過酷ですから、無理もないでしょうね……」 「坊っちゃん、一言も泣き言言わないから、感心したよぉ。素質……あるんじゃない?」 ゲンさんがニヤリと笑った。 「……そうかもしれませんね。怪物は見慣れているので」 そう、例えば、自分の主とか……

2019-09-09 17:16:26
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「時間さえあれば、通ってみたいです。生憎、スケジュールに空きが少ないのですが」 「暇なとき、気軽においで~。みんな待ってるよ」 「歓迎するよぉ」 まるで地獄への手招きのようだ…… 船が、港に着いた。 つかれたー、おなかすいたーなどと言いながら、四人は船から降りていく。

2019-09-09 17:21:24
ぱすかる❄ @pascal_syan

ゲンさんとキサラギは、建物の中へ入っていく。オクトーもそれに続こうとして、……サキがその場に留まったままなのに気づいた。 「サキさん?」 「ん?あ、オクトーくん、まだ時間あるの?」 「いえ、これから予定が入っています。……帰らないのですか?」

2019-09-09 17:26:02
ぱすかる❄ @pascal_syan

「うん。私、もう一回行くから」 「……は!?」 「まだ余裕あるしね。今日は10回くらい行っておきたいかなぁ」 「じ、10回?あの戦いを、10回も……!?」 「今日は少ないほうなんだけどね」 「ば、ば、化け物ですか!?」 「流石に途中で仮眠は挟むよ」 「そういう問題ではなくて……!」

2019-09-09 17:29:10
ぱすかる❄ @pascal_syan

なんという、驚異的なスタミナ!オクトーでさえ、1回行っただけで疲労困憊だというのに。 「……なるほど。ヨーコさんやボスがあなたを選ぶのが、なんとなく分かったような気がしてきました」 「よく分からないけど……なんか、ありがとう?」 「今日のところはここで。ありがとうございました」

2019-09-09 17:32:43
ぱすかる❄ @pascal_syan

「こちらこそ、ありがとう!あ、帰るとき報酬もらうの、忘れないようにね~!」 サキは、手を振ってオクトーを見送った。 オクトーは、建物に入る前に、振り返ってサキに一礼していった。 「……やっぱ、お行儀いいよなあ。ご両親、すごくお金持ちだったりして?」 サキは、見当違いの考察を抱いた。

2019-09-09 17:39:44
ぱすかる❄ @pascal_syan

帰り際。オクトーは商会の入口の隣にあるカウンターで、今回のアルバイトの報酬を受け取った。 多額の報酬金と、それから、レコード屋の店員のようなエプロン…… 「ああ……!」 サキがいつも着ているものだ! ショップで取り扱っていないものを、なぜ着ているのかも以前から気になっていたのだ。

2019-09-09 17:44:53
ぱすかる❄ @pascal_syan

そして、彼女の経済力の高さにも、合点がいった。これ以上のお金を、彼女は毎回受け取っているのだ。積み重ねれば、自分が所有しているものと同じ高級車を買うことだって、簡単にできてしまうだろう。 それから、あの驚異的なスタミナと生存力。状況を判断する力も高かった。

2019-09-09 17:50:25
ぱすかる❄ @pascal_syan

サキには、秘められた能力がある。いや、目に見える形で出てきてはいるのだが、本人に自覚がないのだ。それでは、100%の力を出すことはできないだろう。 何か、きっかけを作るべきだ。しかし、その方法について、気の利いた案はオクトーには出せない。

2019-09-09 17:54:56
ぱすかる❄ @pascal_syan

とにかく、ボスに報告だ。ボスならきっと、名案を出してくれるはず。 車を走らせ、自宅へ戻る。いつものように、使用人が出迎えてくれる。 「お帰りなさい、オクトーさん」 「ボスは、」 言いかけて、気配で察する。 「……お出掛け、ですか?」 「よくお気づきで」

2019-09-09 18:05:24
ぱすかる❄ @pascal_syan

ならば、迎えの車を出さなければ。戻ろうとして、それを使用人が止める。 「シグルイ様から言伝てをいただいております」 「何と……?」 「『疲れているだろうから、家で待っていろ』、と。迎えには他の者を行かせましたので、ご安心を。ゆっくりお休みください」

2019-09-09 18:09:57
ぱすかる❄ @pascal_syan

「……分かりました」 確かに、疲労困憊だ。今すぐにでもソファーに座ってくつろぎたいほど。こうなることを見越していたのだろう。 敬服するしかない。あの人は、何でもお見通しだ。気づかれないように、先回って対処してくれる。

2019-09-09 18:15:00
ぱすかる❄ @pascal_syan

自分は、その気持ちに応えたい。せめて、今日の報告は、仔細にしなければ。ソファーに腰掛け、ボスの帰りを待つ。 そして、二時間ほど後、シグルイは帰宅した。 「お帰りなさいませ、シグルイ様」 「ただいま。オクトーは?」 「二時間ほど前にご帰宅されました。今はお休みになられています」

2019-09-09 18:17:36
ぱすかる❄ @pascal_syan

「そうか。さて、報告を聞かねばなら……うん?」 広い広いリビングルーム、ソファーに横たわっているのは……オクトーだ。 年相応のあどけない寝顔で、すうすうと寝息をたてている。 シグルイは、使用人たちに向かって、人差し指を立てた。察した使用人たちは、音を立てないように立ち去っていく。

2019-09-09 18:20:41
ぱすかる❄ @pascal_syan

「拾ったとき以来だな、お前の居眠りを見るのは」 懐かしむように微笑みながら、上着を脱いで、オクトーの体にかけてやった。 「良い夢を」 オクトーの寝顔が、心なしか、少しだけ微笑んだ。

2019-09-09 18:23:46
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