岩から美少年を掘りだしたらベタ惚れされてめちゃくちゃ尽くされたったww

ああ。俺はガンギマってる。 ガンギマってるが…別にクスリとかは使ってない。 脳が勝手にこうなるんだ。脳がな…。
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帽子男 @alkali_acid

親方に報告すると、ごつい顔が奉公に上がってから初めて目にするひきつりを作った。どうやら相好を崩したらしいが、ただ歪んだようにしか思えない。 「そいつはもしかすると、山の下のどこかにあるというとほうもなく大きな珍玉かもしれん!都の連中から聞いてた話と合うぞ」

2019-09-17 22:01:35
帽子男 @alkali_acid

珍玉を掘るなら、これこれの地形が有望、みたいな話をしてきた学のある役人がいるらしい。鉱書なる本に玉や珠の鉱脈がどのような場所に多く眠っているかを示す指針が載っているとかいないとか。 くどい話なので飛ばす。

2019-09-17 22:02:52
帽子男 @alkali_acid

鉱夫はラオの案内でくだんの地底の断崖までたどりつき、鶴嘴(つるはし)と鑿をふるって掘り出しにかかった。 ただめちゃ硬いのでいっこうに埒があかない。本当に珍玉がうまっているなら、中に水が入っている訳で、傷つけないようにせねばならず、乱暴はよくないが、でも皆荒っぽくなる。

2019-09-17 22:05:56
帽子男 @alkali_acid

すさまじいやかましさ。まるで岩が悲鳴を上げるので子供はそばにいたくないが、大人たちは小さな先導役がいないと復路も危ういのでそばから離さない。 がまんして聞いているうちにやがて鉱具があたってはねかえる音にくぐもった谺が混じるのが耳にとらえられる。

2019-09-17 22:07:34
帽子男 @alkali_acid

ラオは思わずちんまりした指で断崖の一点を指し示した。 「あしょこ」 ちょっと舌足らずになった。 最初は誰も子供のすることなど見ていなかった。 しょうがないので柄にもなく金切り声を上げ、飛び跳ねた。 「あしょこ!あそこ!そこ!」

2019-09-17 22:08:35
帽子男 @alkali_acid

鞭は怖かったし、饅頭をもらえないのは嫌だったが、でもとにかくうるさいのをやめさせたかった。 やがてひとりがラオのようすに気づいて拳骨を振り上げたが、遅れて親方が止めた。 「ガキの指してるところを叩いてみろ」

2019-09-17 22:09:36
帽子男 @alkali_acid

力自慢の鉱夫が思い切り鶴嘴をぶつけると、なんと断崖に縦横にひびが入って、大きな岩塊がごろりと転げ出したではないか。 やっと!! 美少年入りの!!珍玉が!! 出てきた!いやー大変でした。

2019-09-17 22:10:58
帽子男 @alkali_acid

ただそこからがまた大変。 なにせ家ほどもある岩塊。そいつを綱で縛って狭い坑道を引きずっていくにしても相当に手間がかかる。途中は人ひとりかがんで通るのがやっとの切通などもあるし。どうやって広げる。 「あ、あしょこ…あそこ」 でも珍玉にへばりついたラオが、おずおず指で示す。

2019-09-17 22:13:22
帽子男 @alkali_acid

くだんの箇所を鶴嘴で撃つとまた岩が割れて崩れる。 ずっといまいましいほど頑丈と思っていた壁や天井の意外なもろさにぞっとするものもいたが、親方は気色ばみつつまず仕事を進めろと合図する。 「まるで神がかりだが、とにかくたいしたお宝だ。暗がりに転がしといて鰐に食わせる訳にゃいかねえ」

2019-09-17 22:15:51
帽子男 @alkali_acid

やっとのことで地上に出すと、すぐ珍玉の話を聞きつけた役人がすっ飛んでくる。 「これはすごい!すばらしい!皇帝の宮殿にもふさわしい珍玉だ」 「間違いねえんでしょうね…三十人がとこで運んできましたぜ。見た目よりゃ軽いがね」 「うむ!この色…この斑の入り…しかし何という大きさだ」

2019-09-17 22:17:39
帽子男 @alkali_acid

さっそく首都に運ぼうという話になるが、また難渋する。 見た目より重くないとはいえ家ほどある岩だ。 車に乗せ十数頭の馬に引かせるにしても、相当手がかかるし、嵩のわりに軽いせいか置いた場所に落ち着かず、荷台からすぐ転げて落ちる。 だが何故かラオがそばにいると作業は順調に進む。

2019-09-17 22:21:35
帽子男 @alkali_acid

「この子供は何かな」 「へえ。鉱脈探りに使ってるガキですが、珍玉を見つけたやつで」 「ほう。珍玉と縁があるのか。ならば生贄にして岩肌に血をかければ災いは鎮まるかもしれんな」 役人が言いさしたところで、いきなりまた岩塊が転げて何人か人足を押しつぶす。

2019-09-17 22:25:11
帽子男 @alkali_acid

親方は愕然とするが、役人は眉をひそめただけだ。 「しっかりせんか。ふむ。いや皇帝への献上品になるやもしれぬものを血で汚さぬがよいか…が一応、生贄の備(そな)えとして子供も連れてゆく」 「いや、こいつは鉱脈探しとしちゃ約に立つちびで」 「この地において我が意は天朝の意も同じであるぞ」

2019-09-17 22:28:34
帽子男 @alkali_acid

ラオラオにはもちろん否やはなかった。 だいたい赤ん坊のころから聞いている岩の声の源にやっと辿り着いたのだから、側を離れるのも寂しかったし、親方が饅頭を三つもくれたのも嬉しくなって首を縦に振った。 「いってきます」 「おう」

2019-09-17 22:30:25
帽子男 @alkali_acid

もちろん大人は子供に生贄扱いなのだなどとはおくびにも出さない。 怯えて逃げられて面倒ごとになっても困るので。 かくしてラオは、あまたの馬に引かれた岩塊の上に乗り、生まれてこのかた一度も見た覚えのない景色を目にする運びとなった。

2019-09-17 22:32:41
帽子男 @alkali_acid

さて道中は長く、役人は次第に退屈してくるので、童児を招き寄せてあれこれ尋ねる。はじめはいくら話しても要領を得ず、岩の声だのなんだの言うので少し頭が弱いのかとも思ったが、だが受け答えにはちゃんと応じるのでまるきりの馬鹿でもなさそうと判断する。

2019-09-17 22:34:12
帽子男 @alkali_acid

「ずっと窖にいた割に肌はいささか黒いし、戎(えびす)の血が入っているようだが、しかしかかる山出しにも王化の風を与えてやるのも天朝に仕えるものの勤めではあろう」 くだくだしいが、要するにひまだから気晴らしをしようということ。

2019-09-17 22:36:56
帽子男 @alkali_acid

「子供よ。名を何と言う」 「ラオ…ラオ」 「ラオラオか。よいかラオラオ。これなる本は鉱書といって、士大夫たるものが修めるべき学問の一つだ」 「こうしょ」 「うむ。今日からお前に手ほどきをしてやるゆえ諳んじよ」

2019-09-17 22:38:37
帽子男 @alkali_acid

「私はこれでも文官採用試験の予備試験に二つ合格しているのだ。十五年ほどかかったが、同郷ではかなりの秀才として知られている」 「しゅうさい」 「その私から読み書きを教わるとは、戎の血が入った岳礫州の子供には過ぎた栄誉であるぞ」 「えい…よ?」 「さあさあ。まずは序からだ」

2019-09-17 22:41:25
帽子男 @alkali_acid

首都までの旅は一年ほどかかったが、幕営の駅がおかれた大路を通ったため、匪賊にも遭わず、役人もおつきも旅慣れていて、つつがなく終わった。 ラオは昼は揺れる馬車の中でこむずかしい書物を暗記させられ、夜は珍玉にへばりついて呪詛のような歌唱のような声を聴いて過ごした。

2019-09-17 22:44:16
帽子男 @alkali_acid

滅多にない宝をもたらした役人は出世の糸口をつかんだつもりだったが、しかし首都にはもっと老獪で狡猾な上役がおり、苦労してここまで岩塊を運んできた下端からあっさり荷を取り上げると、ていよくお払い箱にしてしまった。

2019-09-17 22:47:57
帽子男 @alkali_acid

「おのれ…許さぬぞ、私より予備試験を一つ多く受かったからと言って…く…く…」 「あ、あのー…きょうのがくもんは…」 おずおずと鉱書を取り出しつつ童児が問いかけると、役人はにらみつける。 「そんなものはもうよい!何が学問だ!くだらぬ!」 「ほん…」 「おまえにくれてやる!ふん!」

2019-09-17 22:49:50
帽子男 @alkali_acid

不機嫌な教師がいなくなると、生徒はどうしてよいか解らず岩塊のそばに寄り添っていた。 「えっと…?…」 新しい役人が来て、珍玉を石工の工房へ送ろうとし、おかしなちびがくっついているのを認めて、すぐ追い出そうとする。 「何だこの浮浪児は!」

2019-09-17 22:51:37
帽子男 @alkali_acid

だが人足頭があわててとりなす。あれやこれや厄介が起きる人足は、迷信深い。せっかく鉱山から首都までお守りがわりのように連れてきた子供をよそへやられては最後の最後で何が起きるか解らない。 「そいつはあっしの使い走りをさせてるんで」 「皇帝への献上品となるやもしれんのだぞ」

2019-09-17 22:53:24
帽子男 @alkali_acid

ぶつぶつ文句は漏らしたが、結局役人は人足頭から袖の下だけとって、ラオが珍玉のそばにいるのを許した。 岩と子供はそのまま石工の工房へ。 「災い封じのお守り?生贄?そういうばかげた話をされてもね」 都会ものの職人は田舎もの人足を笑う。

2019-09-17 22:55:48
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