【シナリオ】吸血鬼②

前回の話はこちら https://togetter.com/li/1405154
1
@akuochiken

「変な声出すんじゃないの。私があなたを犯しているみたいじゃない」 気付けば彼女は私の胸元から離れて顔を上げ、私の方をしかめっ面で見ていた。 「申し訳ございません」 全身は火照ったままだったが、そういう状態になった自分を恥じて彼女へ謝罪した。

2019-09-19 17:38:53
@akuochiken

「私としたことが迂闊だったわ。あなたを吸血鬼にすることで頭が一杯で……でも仕方ない。これはこれとして、あなたは早くその身体に慣れなさい。十分に動けるまでここでゆっくり寝てていいわ。時間は、これからは大量にあるのだもの」 彼女はゆっくりと立ち上がった。

2019-09-19 17:43:02
@akuochiken

「なに心配そうな顔してるの。完全無欠の吸血鬼の身体になったのよ? 多少食べなくても命に別状はないわ」 違うよね、あなたが私に言いたいことはそういうことじゃないわよね、でも、いまはこういうことを言わせて頂戴、と言わんばかりに彼女は憂いた顔をしていた。

2019-09-19 18:10:57
@akuochiken

「……私の血を飲みたくなったら言いなさい。もっとも、私の血ですら飲めないかもしれないけど」 扉に手を掛けた彼女に向かって、違います私は、と、私は声を掛けることができなかった。 「それと、私を呼ぶ時は『お嬢様』ではなく『御主人様』にしなさい。私があなたの主人になったのだから」

2019-09-19 18:16:38
@akuochiken

ギイィと扉が開く。 「呼び方もあなたの好きにすればいいわ。あなたの本能に従って、あなたの口から出てくる言葉を私は受け入れる。私はあなたの主人だけど、あなたには強制しない」 バタン、と部屋の扉が閉められた。 私の部屋に私だけの空間ができた。 相変わらずベッドの上の私の身体は動かない。

2019-09-19 18:21:48
@akuochiken

思えば淡々とお嬢様と受け答えをしてしまった。 普段なら不遜ということで処罰される失態であったが、彼女は別に気にしてはいなかった。 それよりも、彼女と主従関係を結んだのに、彼女に従い切れていない私自身に少々驚いていた。 こう……私の中に私でない何かが私の邪魔をしているというか。

2019-09-19 19:00:11
@akuochiken

彼女が言った通り、私という『人間』は消滅し、『私だった』吸血鬼がこの場にいるはず。 それなのにまだ、吸血鬼のことが理解できない、彼女の側により添えていない。 まぁいいか、彼女も時間を掛ければいいと言ってくれたし、ゆっくりと慣れていけばいい。 そう思って、私は再び眠りについた。

2019-09-19 19:14:43