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ダークサイドミステリーから現在のクトゥルー神話へ

BSプレミアムの『ダークサイドミステリー』から、現在のクトゥルー神話の間を埋めることを試みた連ツイをまとめたものです。
クトゥルー神話 文化 ラヴクラフト
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幻楼斎/西野都 @genrousai
#ダークサイドミステリー のラヴクラフト回、面白かったですが、これだけでは今のクトゥルー神話に繋がらないので、ちょっと補足説明してみます。間違いとかあったら、指摘して頂けると助かります。あ、以降タグ付けしませんので。
幻楼斎/西野都 @genrousai
1937年にプロヴィデンスでラヴクラフトが亡くなりましたが、友人たちは彼とその作品を惜しみました。その一人だった若き作家オーガスト・ダーレスは、彼の作品が忘れられるのを恐れました。すでに言われている通り、彼の作品集はなく、雑誌に散らばって掲載されているだけだったからです。
幻楼斎/西野都 @genrousai
そこで、ラヴクラフトが没して2年後の1939年、友人のドナルド・ワンドレイと出版社「アーカム・ハウス」を立ち上げます。ここから出版されたのが、初の作品集『アウトサイダーその他の恐怖』でした。こうして、ラヴクラフトの作品集は最初の産声を上げました。
幻楼斎/西野都 @genrousai
また、ダーレスは自らも小説を書くかたわら、アーカム・ハウス社からの後進の育成にも熱心でした。『ファファード&グレイ・マウザー』のフリッツ・ライバーや『タイタス・クロウ』シリーズのブライアン・ラムレイ、『華氏451度』等のレイ・ブラッドベリなどが、ここから巣立ちました。
幻楼斎/西野都 @genrousai
さて、ダーレスは 「クトゥルー神話を卑小に歪曲した」(彼の作品には善悪二元論や四大精霊などの設定が投入されている) 「一部作品を抑圧し、参入に制限を施した」 という批判にさらされがちな人物でもあります。実際はどうだったのでしょうか?
幻楼斎/西野都 @genrousai
Q:ダーレスはクトゥルー神話の設定を卑小に歪曲したか? A:そうであるとも、そうでないとも言える 「クトゥルー神話」は、実のところ世界観の統一が取られていません。各作家がおのおの好きに小説のワードを使い回していたためです。ダーレスも例外ではありませんでした。
幻楼斎/西野都 @genrousai
実際、ダーレスは善悪二元論や四大精霊による邪神の分類を作中で行っています。しかし、彼が立場を利用しての設定の強要が行われた形跡はありません。実際、ダーレス存命当時にアーカム・ハウスでクトゥルー神話小説を書いた小説家たちの設定もバラバラで、作品間に整合性はありません。
幻楼斎/西野都 @genrousai
むしろ、出てくるのはラヴクラフト当人がダーレスの「旧神」(ダーレス作品で、邪神を封じた善の神とされる存在)に乗っかった形跡が見られることです。旧神の座すベテルギウスの異称「グリュ・ヴォ」はラヴクラフトの創案になると言われています。
幻楼斎/西野都 @genrousai
後者に関しては、よく言われる作品ではなく、別作品であからさまにラヴクラフトの筋をなぞった形だったために苦情を入れたのが実情のようです。 byakhee.hatenablog.com/entry/20120320… (こちらの記述を参考にさせて頂きました。なお、発端のまとめは私のツイートによるものです)
幻楼斎/西野都 @genrousai
ラヴクラフトと友人作家たちの、ワードの交換によるお遊びに始まり、ダーレスの布教による拡大を経て、「クトゥルー神話」は静かに広がっていきました。ダーレスの死後も、その流れは止まらず、神話のワードや登場人物を借りただけの作品から、本格的にその世界観を取り入れた作品まで多数です。
幻楼斎/西野都 @genrousai
そして、TRPGという分野において『クトゥルフ神話TRPG』が出版されます。実は、クトゥルー神話の設定やビジュアルの共有において、最も影響が大きかったのがこれではないか、という話もあります。TRPGを元にシナリオを作るに当たり、「公式」として設定やビジュアルが出されたためです。
幻楼斎/西野都 @genrousai
リン・カーター等、体系化を試みた作家がないではないですが、ここまで人口に膾炙した設定を作り出した作品を私は知りません。こうした設定を取り入れたり、一部を無視したり、更に新たに創案したりしつつ、クトゥルー神話は今日も拡大を続けています。
幻楼斎/西野都 @genrousai
日本における展開も少し触れておきましょう。1948年、雑誌『宝石』で江戸川乱歩が持っていた連載『幻影城通信』において、『ダンウィッチの怪』が紹介されたのです。これがラヴクラフト作品、そしてクトゥルー神話が初めて日本で紹介された瞬間でした。
幻楼斎/西野都 @genrousai
日本人における初の神話作品は、高木彬光の『邪教の神』(1956)と言われています。ホラーではなく推理小説で、彼の人気キャラである神津恭介が謎の邪神像を巡る殺人事件に迫る、という話でした。以降、山田正紀の『銀の弾丸』(1977)等、短編で細々と使われる時代が続きますが、80年代で一変します。
幻楼斎/西野都 @genrousai
風見潤の『クトゥルー・オペラ』シリーズや、栗本薫の『魔界水滸伝』といった長編作品が作られたのです。さらに、菊地秀行や朝松健といった作家も続き、山本弘の『ラプラスの魔』など様々な作品が作られるようになりました。90年代には文庫での原作の訳出もあり、知名度は更に広がりました。
幻楼斎/西野都 @genrousai
この辺りでクトゥルー神話に触れ始めた世代が、2000年代に入って、様々な媒体で作品を発表し始めます。中でもゲーム『斬魔大聖デモンベイン』や『這い寄れ!ニャル子さん』は大きなヒットを飛ばし、マルチメディア化も行われました。 こうした形で、サブカルチャーに浸透した所に動画群が現れました。
幻楼斎/西野都 @genrousai
動画投稿サイト『ニコニコ動画』において、前述の『クトゥルフ神話TRPG』のプレイに基づいた動画が現れ始めたのです。TRPGと動画投稿、そしてクトゥルー神話が物語を作るプラットフォームと化し、多くの動画が作られ、100万再生を超えるものすら現れるホットな場が出現したわけです。
幻楼斎/西野都 @genrousai
こうして原作などの関連書の需要が産まれ、そこから再生産として様々な作品が産まれ、訳出されるようになっているのが、現在のクトゥルー神話ブームであると思います。今や、本屋どころかガチャガチャにも邪神がいる、這い寄り、寄り添っている。そんな時代を我々は生きているのです。
幻楼斎/西野都 @genrousai
長くなってしまいましたが、これにて終了となります。TL汚し失礼しました。
幻楼斎/西野都 @genrousai
○参考書籍 ・クトゥルー神話 ダークナビゲーション(ぶんか社、責任編集:森瀬繚) ・クトゥルフ神話ガイドブック(新紀元社、朱鷺田祐介) ・クトゥルー怪異録(学研M文庫、菊地秀行・佐野史郎他)

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