母マウスに3億7000万 Bq/Lのトリチウム水を与えた動物実験の論文の珍解釈

思いがけず1年前のまとめ「染色体異常を生じるトリチウム=三重水素の濃度ってどれくらい?」https://togetter.com/li/1262704 の続編を作るはめになりました。 発端の日本語論文は無料で読めます。 斉藤眞弘, 石田政弘. トリチウムの代謝と線量評価 - ヒトのモデル系としてのマウス新生児に取り込まれたトリチウムの代謝と各臓器における蓄積線量の評価 - 保健物理 1985; 20: 167-173. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhps1966/20/2/20_2_167/_pdf/-char/ja
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nao @parasite2006

twitter.com/parasite2006/s… 西尾正道氏がトリチウム濃度0.01μCi/cc(37万Bq/Lに相当)をBq/L単位に換算する計算を(過失か故意かいずれにせよ)一桁間違えた結果、トリチウム=三重水素の排水基準濃度最大値6万Bq/Lは安全圏内から危険領域に放り出されることになったわけです。

2018-09-05 13:57:03
nao @parasite2006

(続き)どうやら西尾正道氏の「3万7千ベクレルで染色体異常。」云々は朝日新聞記事が「(染色体異常の頻度が)普通(引用者注:トリチウムなしの場合の意味か?)と変わらない」と書いたトリチウム濃度0.01μCi/cc(37万Bq/Lに相当)をBq/L単位に換算する計算を間違えた模様 pic.twitter.com/1qANEE5H4O

2018-09-05 13:48:47

まとめ公開後の追加議論

(その1:1978年放医研論文)

nao @parasite2006

@TBDD_yahoo @GOFLNN @F1_ABS @ika_river_c つぶやきを使わせていただきました。問題ありましたら対応しますのでご連絡ください。togetter.com/li/1409438

2019-09-27 14:07:16
nao @parasite2006

@F1_ABS いえこちらこそ、いつもながら的確なご指摘をありがとうございます。おかげさまで確信を持って補足計算ができました。発端の論文は入手済みですが、中身をご紹介する必要があるかどうかは読んでから考えます。

2019-09-27 14:45:59
nao @parasite2006

@F1_ABS @TBDD_yahoo @GOFLNN @ika_river_c そもそも今回の動物実験で使われた水の中のトリチウム濃度は、排出基準濃度の上限値=6万Bq/Lと比べたらざっと4桁上ですし、培養容器中のヒト培養細胞(個体中の細胞と違って培養液中のトリチウムとの直接接触を遮るものがない)の染色体異常頻度に影響が現れはじめた濃度(37万Bq/L)の3桁上

2019-09-27 14:57:09
F1ABS @F1_ABS

@parasite2006 @TBDD_yahoo @GOFLNN @ika_river_c その染色体異常をみている論文なのですが、トレンドが出ているようなデータになっているものの、naoさんも書かれている通り低い所は未処理とほぼ値が変わらないのですね、しかも検体数が少ないから差に意味があるのかと。見ているのも染色分体の切断や欠損なので、DNA複製後に生じた未修復の異常。

2019-09-27 15:46:35

原論文の表1をみると、使用した培養液のトリチウム濃度別に調べた細胞の個数がまとめてありますが、最大が対照の2990個、トリチウム水またはトリチウム標識チミジン(DNAの構成部品)を使用した場合は数十〜数百個です。とはいえ細胞を1個ずつ顕微鏡観察して写真撮影し、染色体の数や形の異常がないかどうか探すのは大変な手間がかかる仕事であることは間違いありません。

F1ABS @F1_ABS

@parasite2006 @TBDD_yahoo @GOFLNN @ika_river_c 一般的にChromatid(染色分体)型の異常が、どの位低線量域まで線量応答が見えるかが問題ですし、この論文だけをもって低い所でも影響があるという議論をするのは難しいです。 また、gamma H2AXと同じように、低い所でも差が見えるからといって健康影響に結び付けて議論をすることに意味はないです。

2019-09-27 15:54:01

gamma H2AXはDNA二本鎖の切断のバイオマーカーとして注目されている物質です。DNA結合タンパク質ヒストンの一種で、DNA二本鎖が切断されるとその場所の近くにあるこのタンパク質がリン酸化され、DNA修復系の酵素に対してDNA二本鎖の切断位置の目印の役割を果たします。DNA二本鎖の切断の修復は、DNAの塩基部分の化学変化による損傷やDNA一本鎖の切断に比べると難しいものの、切断されたが最後絶対元には戻せないというわけではありません。また切断が即機能の異常、健康被害に結びつくとも限りません。

F1ABS @F1_ABS

@parasite2006 @TBDD_yahoo @GOFLNN @ika_river_c ちなみに染色体異常頻度を使った線量評価には、通常、二動原体染色体という異なった染色体由来の断片が誤って再結合した(修復済の)異型染色体の出現頻度を使います。これは0.1Gy以上の線量が推定できるとのこと。

2019-09-27 16:05:13
nao @parasite2006

@F1_ABS @TBDD_yahoo @GOFLNN @ika_river_c 二動原体に注目して染色体異常の出現頻度から線量を評価する方法は、浪江町のこどもの線量推定にも使われていましたよね(検査開始当時、線量200 mSv以上ないと検出できない方法だからひっかかる子はまずいないだろうと言われたものでしたが、最終結果もその通りになった)。togetter.com/li/569428?page…

2019-10-01 00:26:31
まとめ 浪江町のこどもの染色体検査をめぐって NHK仙台放送局制作 クローズアップ東北 2013年9月27日(金) 午後7:30-7:55「被ばくの不安をなくすために 福島・浪江町の染色体検査」 https://t.co/czlPdvm5io (動画なしですみません) NHK総合 ニュースウォッチ9 2013年9月27日(金)午後9:00- ピックアップ動画「被災地の子どもたちに染色体検査」http://bit.ly/1bhK5pg 番組全編の動画: http://www.dailymotion.com/video/x159qho_被ばくの不安をなくすために-浪江町の染色体検査_news (URL全体をブラウザーのURLウィンドウにコピーしてください) 22622 pv 543 14 users 30
nao @parasite2006

@F1_ABS @TBDD_yahoo @GOFLNN @ika_river_c この1978年の放医研論文(今の目で見れば技術的制約が大きい) twitter.com/parasite2006/s… を今読む意味の1つ目は「トリチウムの放射線(β線)の生物影響がこの時代から調べられていた」2つ目は「論文の原型の1974年の学会発表を伝えた記事を恣意的に切り取って著書で引用した広瀬隆氏を信用すべからず」

2019-10-01 00:57:10
nao @parasite2006

twitter.com/parasite2006/s… 元北海道がんセンター西尾正道氏meti.go.jp/earthquake/nuc… が振りかざしている切り取られた朝日新聞記事(1974年10月8日付)が取り上げた学会発表が、1978年に英語査読論文として公表されています(続く)sciencedirect.com/science/articl…

2018-09-04 13:46:22
F1ABS @F1_ABS

@parasite2006 @TBDD_yahoo @GOFLNN @ika_river_c 二動原体で解析できる期限の目安は、被ばくから一月以内。(PDFです) www-pub.iaea.org/MTCD/Publicati… ですので、安定型の異常である染色体転座を、染色体ペインティング(FISH)でみていたはずです。結果については、以前にnaoさんに教えていただき、「影響が認められず」にホッとした覚えがございます。

2019-10-01 07:12:39

染色体異常を指標とする放射線被曝の線量評価の標準法は、二動原体とよばれる形態異常の出現頻度を調べるものですが、この異常を持つ染色体は細胞分裂を繰り返す間に消失していくため(これを不安定型の染色体異常と言います)、被曝から時間が経っている場合には二動原体法による線量評価は使えません。浪江町の子どもの場合は原発事故から2年近く経った2013年1月から検体採取が始まったため、別の方法が使われたことを以前@F1_ABS さんから教えていただいていました。当時のツイート3件を記録として再録します。

nao @parasite2006

@F1_ABS @waremokou528 @F1_ABS ご教示感謝です。2014年公表の福島県立医大・津山先生の日本語総説jstage.jst.go.jp/article/bunsek… で「浪江町住民(事故時18歳未満)の染色体検査では,染色体の中でも大きい 1,2,4 番染色体をそれぞれ 染め分ける蛍光プローブを用いた転座型染色体異常解析が 用いられている」とあるのを確認しました。

2018-10-29 20:35:13
nao @parasite2006

@F1_ABS @waremokou528 これまで弘前大・吉田先生の科研費報告書や浪江町ホームページを検索してもどうしても方法を確認できず、困っていたところでした。今回ようやく判明し感謝に堪えません。浪江町の資料に残っている染色体検査情報(ページ番号086, 2016年3月現在)town.namie.fukushima.jp/uploaded/attac…

2018-10-29 20:43:12
nao @parasite2006

@F1_ABS @waremokou528 twitter.com/parasite2006/s… 浪江町の染色体検査は2013年1月29日から8月29日までの間に事故時18歳以下の浪江町民765名から採血し(申込は861名)、2016年7月31日現在で検査不可能3名を除く762名全員に結果通知。全員が「染色体変化は自然発生頻度の範囲で過剰な被ばくによる影響なし」と判定されました

2018-10-29 20:53:56

(再録ここまで)

F1ABS @F1_ABS

@parasite2006 @TBDD_yahoo @GOFLNN @ika_river_c ついでに言えば、Chromatid型の染色体異常は未修復のDNA損傷をみているので、正常細胞では細胞分裂を経たのちに残っているかどうか疑問です。(損傷応答機構や細胞周期チェックポイント機構があるので)

2019-10-01 07:21:02

(その2:2018年フランス・カナダ論文)

この論文のメインは、フランスのIRSN(放射線防護・原子力安全研究所)とカナダのCNL(カナダ原子力研究所、旧名AECL=カナダ原子力公社)が共同で行った、マウス(総数5300匹以上)にトリチウム(トリチウム水=HTOまたは有機結合型トリチウム=OBT)を含む水を飲ませる大規模な動物実験結果の紹介です。論文には投与期間が明示されていないものの、寿命への影響をみる実験が行われていますので、最大でマウスの寿命いっぱい(この論文で使われたC57BL/6系のマウスの場合、平均寿命は雄826日、雌766日だそうです)
http://www.tmig.or.jp/J_TMIG/j_research/C10/readme_1.htm
まではトリチウム入りの水を与えて飼育していたと考えられます。
カナダでは、中性子の減速及び燃料の冷却に水のかわりに重水(通常の水=軽水H2Oの構成原子の一部がより質量数の大きな同位体で置き換えられた水を多く含む比重の大きい水。自然界では大半が狭い意味の重水D2Oではなく、半重水DHO=2個の水素原子の1個を重水素=Dで置き換えた水として存在する)を使用するCANDU炉
https://atomica.jaea.go.jp/data/detail/dat_detail_02-01-01-05.html
を原子力発電と放射性物質、放射性医薬品の製造に使用しており、トリチウムの放出量が多いこの型の炉を稼働させる必要上トリチウムの生物影響に注目しています。

TBDD(モデルナ4回接種済) @TBDD_yahoo

@parasite2006 @GOFLNN @F1_ABS @ika_river_c 提示した論文ですが、簡単にまとめると、 HTOとOBTのいずれも、0.01 MBq/LのWHOガイダンスレベルで検出可能な生物学的影響はない。 0.01 MBq/Lでの影響の欠如は、線形線量反応ではなく閾値を示唆。 生物学的影響はγ線< HTO < OBTの順で大きくなる。

2019-09-27 16:58:25