ア㊙️イさんのお尻と学ぶ奴隷貿易(全16回)

最近出版された奴隷貿易に関する英語の実証論文の中からいくつかピックアップしてまとめたのだ。大量に出版されている研究の中のごく一部でしかないから、今後追加する可能性があるのだ。 史実・事実・法律に関する部分での誤りがあるかもしれないのだ。お尻さんは奴隷貿易研究の専門家ではないから、あまり鵜呑みにしないことをオススメするのだ!
80
前へ 1 2 ・・ 15 次へ
ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

部族間紛争と奴隷の輸出量そのものの関係はかなり弱いこと(その分析もやってる)を鑑みると、ここで示されたメカニズムはあくまでも示唆的なものでしかないことに注意なのだ。加えて、分析期間がちょっと短い(奴隷貿易の末期)のも気象データの制約があるとはいえ少し残念なのだ(今後に期待!) (16/17)

2019-09-12 22:34:53
ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

今回の話は doi.org/10.1016/j.jce.… からなのだ。 奴隷の供給側に着目したかなり血も涙もない研究だけど、歴史的なデータが整備された事で似たような分析が結構出てきているみたいだから、今後もバンバン紹介していくのだ〜。 (17/17)

2019-09-12 22:35:44

コロンブスのトウモロコシ:農業生産性と奴隷貿易

ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

コロンブスがアメリカ大陸に到達した後、様々なアメリカ大陸原産の植物が世界中に広まっていくのだ。農作物としてとっても優秀なトウモロコシはアフリカ大陸で瞬く間に広まっていき、そのおかげで人口も増えるんだけど、同時に輸出される奴隷も増加していたことを明らかにした研究があるのだ。 (1/17) pic.twitter.com/2G05h3Pkn4

2019-09-13 17:34:41
拡大
ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

アメリカ大陸原産の植物/食物といえば、キャッサバ・トウガラシ・ピーナッツ・ジャガイモ・サツマイモ・トマト、そしてトウモロコシ等々と色々あるのだ。そのなかでもトウモロコシはアフリカへの到達と拡散が早くて、17世紀ぐらいまでにはアフリカ各地で生産されるようになったみたいなのだ。 (2/17) pic.twitter.com/sDBnYr1lVo

2019-09-13 17:35:48
拡大
ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

その他、キャッサバやジャガイモ、サツマイモもアフリカに入っていったんだけど、全体に広まったのはだいたい19世紀ぐらいで、トウモロコシとは100年以上差があるみたいなのだ。 で、このトウモロコシが農作物としてすごく優等生だったというのがこの論文のポイントなのだ。 (3/17) pic.twitter.com/rDg8T3OpQF

2019-09-13 17:36:16
拡大
ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

アフリカで広く食べられていたモロコシ(ソルガム sorghum)やキビ(millet)よりもトウモロコシ(maize)は栄養価が高いだけでなく、ヘクタール辺りの生産量も多く、栽培も容易で保存も持ち運びもしやすくて、 食べてよし・育ててよしで農産物として無類の優秀さを誇っていたのだ。 (4/17) pic.twitter.com/0eswwegKLm

2019-09-13 17:39:17
拡大
拡大
ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

そんなトウモロコシがアフリカ大陸で広まったことで、アフリカ各地における農業生産性が上昇したことが予想されるのだ。食べ物が増える当然の帰結として、トウモロコシを栽培していた地域では人口も増えていたはずなのだ。 でも話はここで終わらないのだ。 (5/17)

2019-09-13 17:39:41
ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

アフリカにあった王国の王様達の気持ちになって考えてみるのだ。農業生産性が上昇すると、農業に充てなければいけない人の数は減るのだ。つまり、多少の労働力を農業に使わずに奴隷として海外に売っ払っても、充分な生産量を確保できるはずなのだ。 (6/17) pic.twitter.com/gimYytNFNV

2019-09-13 17:40:18
拡大
ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

話をまとめると、17世紀以後にアフリカで広まったトウモロコシの生産は、農業生産性を上昇させることで (1)人口を増大させ (2)ついでに輸出される奴隷の数も増やした という予測が導かれるのだ。 仮説が出揃ったところでいざ実証なのだ! (7/17)

2019-09-13 17:40:34
ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

この研究では、アフリカ各国から輸出された奴隷の数、各国の人口密度、そしてトウモロコシの生産に関するデータを収集・統合し、統計分析を行ったのだ。結果を示す前に各データについて少し説明をしておくのだ。 (8/17)

2019-09-13 17:41:12
ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

まず輸出された奴隷の数については、アフリカ各国の15世紀末から19世紀にかけて約100年毎に集計された大西洋/インド洋/サハラ/紅海ルートでの奴隷貿易の記録が用いられたのだ。分析にはあまり関係しないけど、ここでいう「国」とは現在の国境線に沿って再集計されたものを指すのだ(以後も同じ) (9/17)

2019-09-13 17:43:34
ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

次に、アフリカ各国の人口密度に関しては、1000年から1900年にかけて、これまた100年間隔(1750年以後は50年間隔)で推計されたものが用いられたのだ。 人口密度も奴隷の数も約100年間隔だからちょっと荒いけど、データと分析の制約上仕方ないのだ。 (10/17)

2019-09-13 17:44:25
ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

最後はトウモロコシの生産についてなのだ。アフリカ大陸でトウモロコシが広く栽培されるようになったのはひとまず1600年以後だとして(もちろん諸説あるけど)、問題はアフリカ各地での当時の(歴史的な)トウモロコシの生産量が分からないことなのだ。 (11/17)

2019-09-13 17:45:19
ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

ここで登場するのがFAO(国連食糧農業機関)が作成・公開しているGAEZデータなのだ。これは世界地図を0.5°×0.5°のセルに分割した上で、各セルがある作物の栽培に適しているかを地理・気象、そして各時点での農業技術レベル等々を加味して評価したデータなのだ。 (12/17) pic.twitter.com/WK9j3FgkjX

2019-09-13 17:46:03
拡大
ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

このGAEZデータから、各国のトウモロコシの栽培に適した地域の広さを算出したのだ。現時点で手に入る最も古い1961年時点の各国のトウモロコシ生産量とその適正値を見ると結構相関しているみたいだから、全く的外れな指標という訳ではないと思うのだ。 (13/17) pic.twitter.com/fmojpEv6zA

2019-09-13 17:47:03
拡大
拡大
ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

統計分析の結果、トウモロコシがアフリカ大陸に伝播した1600年以後、トウモロコシ栽培に適していた国ほど、 ・人口密度が上昇していたこと ・輸出された奴隷の数も多かったこと がわかったのだ。予測通りの結果なのだ! (14/17)

2019-09-13 17:47:29
ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

筆者の推計によれば、1600-1900年の間に生じた人口増のうち約22%、そして同期間に輸出された奴隷の約6%がトウモロコシの栽培によるものなのだ。奴隷への影響は小さく見えるかも知れないけど、それがトウモロコシのせいと言われると「マジ!?」となるのだ…。 (15/17)

2019-09-13 17:48:05
ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

この論文が検証した仮説は元はA・クロスビーとP・カーティンというレジェンドな歴史学者がそれぞれ半世紀近く前に提唱したものなんだけど、これまで誰も計量分析は行なっていなかったのだ。それをこうしてリバイバルするのはなんか燃えるし、歴史家へのリスペクトもめっちゃ感じるのだ! (16/17) pic.twitter.com/7Zh3wvwVmL

2019-09-13 17:48:48
拡大
拡大
ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

今回の話は doi.org/10.1016/j.jdev… からなのだ。 実は論文の後半ではトウモロコシ栽培と経済成長(都市化度を指標)の関係も分析していて、そこに相関はなかったのだ。つまり農業生産性が上がってもアフリカは「マルサスの罠」から抜け出せなかったということなのだ…。 (17/17)

2019-09-13 17:49:47

銃と奴隷のサイクル:大西洋奴隷貿易の時系列分析

ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

大西洋奴隷貿易でイギリスは黒人奴隷との交易品としてアフリカ大陸に大量に銃器を輸出していたのだ。じゃあ銃の輸出が増えれば奴隷の輸出が増えるのか?あるいは奴隷の輸出が増えるから銃の輸出が増えるのか?こうした銃と奴隷の複雑な関係をゴリゴリの時系列分析で明らかにした研究があるのだ (1/19) pic.twitter.com/lRBNtDGNSX

2019-09-14 20:26:47
拡大
ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

イギリスが行なっていた大西洋奴隷貿易は、いわゆる「大西洋三角貿易」の一部なのだ。アフリカ大陸で黒人奴隷を買い付け、それをアメリカ大陸や西インド諸島に輸出し、さらにそこで煙草・砂糖などを買い付けてイギリス本国に輸入していたのだ。 (2/19) pic.twitter.com/luiGp9V4MT

2019-09-14 20:27:23
拡大
ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

イギリスが黒人奴隷との交易品としてアフリカに輸出していたのは、繊維製品やラム酒、そして銃器をはじめとした武器なのだ。カトリック教会は最初は銃器の輸出を禁じていたんだけど、プロテスタント諸国が輸出を始めたことでなし崩し的にカトリック国も銃の輸出を始めるのだ。 (3/19) pic.twitter.com/W44Dnw2uXN

2019-09-14 20:27:52
拡大
ア㊙️イさんのお尻 @bot99795157

銃器の流入はアフリカの現地社会をどう変えたか?当時のアフリカの諸王国の軍事的な技術レベルを考えると、銃は超強力な武器だったのだ。そんな強力な武器があるなら、更に奴隷を狩りやすくなるのだ。つまり、銃器を輸入すればそれに呼応するように輸出できる奴隷の数も増えるのだ。 (4/19)

2019-09-14 20:28:17
前へ 1 2 ・・ 15 次へ