『原子力の経済学 新版』の要点 〔その2〕 原発は化石燃料消費とCO2排出を加速する

『原子力の経済学 新版』(室田武、技術評論社、1986年、第1版1981年)の要点 〔その2〕 第5章から第7章のなかで注目すべき内容を抜粋したもの。ここでは〔原発が化石燃料の消費とCO2の排出を削減するという言説がほとんど捏造されたものであったこと〕に注目されたい。 関連テーマ: 〔その1〕 原発をめぐる粉飾会計の実態 http://togetter.com/li/141051 続きを読む
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Kaameen @kaameen

【原子力の経済学70】 …農協等の小水力発電所などの、いわゆる卸電気事業者から、製造業の原料にあたるものとして電力を独占的に購入して、自社発生分のものと一括して需要家に小売販売しているという意味で、典型的な需要独占である。

2011-05-29 03:12:12
Kaameen @kaameen

【原子力の経済学71】 具体的にいえば、自らの子会社や関連会社である諸共同火力や日本原電などからは、比較的高い価格で電力を買いあげ、公営の水力や火力、農協等の小水力発電所にたいしては、発電所ごとに相対的に安い価格を個々別々に設定し、そのもとで電力を買いあげて小売に回すのである。

2011-05-29 03:12:20
Kaameen @kaameen

【原子力の経済学72】 最も不利な立場に追いこまれているのは、全国約110ヵ所にあるといわれる農協・漁協・土地改良区・森林組合(ふつう略して、農協等、という)といった農林漁業団体の小水力発電である。特に中国地方には、こうした小水力発電事業が集中して74施設あり…(以下、具体例)

2011-05-29 03:12:30
Kaameen @kaameen

【原子力の経済学73】 公営水力発電や農協等の小水力発電は、無視しえない役割を果たしている。しかも、その幾つかは、巨大ダム式水力発電、揚水発電、大型の火力・原子力発電に比較して、環境への負荷がはるかに小さく、しかも遠距離送電の必要がないため送電ロスも少ない形でうまく機能している。

2011-05-29 03:12:38
Kaameen @kaameen

【原子力の経済学74】 公営水力の場合、毎年着実に利益をあげている。農協等の場合でさえ、幾つかの発電所については利益をあげていた。それにもかかわらず、諸電力会社が、約30年にわたって一度も累積赤字を消すことができていない。(具体的な数値を挙げて説明されているが省略)

2011-05-29 03:12:47
Kaameen @kaameen

【原子力の経済学75】 9電力はなるべく安価な電力を購入して、高く売ろうと待ちかまえているのであるから、買いたたかれるに決まっている。

2011-05-29 03:12:56
Kaameen @kaameen

【原子力の経済学76】 「地方の時代」などとスローガンが先行するだけで、需要独占者としての9電力の巨大な支配力の前には、地方自治体の実体はまったく姿を現していない。

2011-05-29 03:13:06
Kaameen @kaameen

【原子力の経済学■■】 今日はここまで。今日の主なテーマは原発と化石燃料消費の関係についてだった。ご一読戴けた方には、原発が石油・石炭の節約やCO2排出量の抑制になるという言説が、ほとんど虚構に近いものであったことがご理解戴けたかと。

2011-05-29 03:35:32
Kaameen @kaameen

【kaameenのコメント】 改めて整理すると、原発は稼働している状況のみに焦点を当てると、確かに少ない化石燃料消費やCO2排出で電力を生み出すことができるが、ウラン鉱石の採掘や精製、加工、輸送、管理・点検、廃棄・廃炉までの全てに視野を広げると、むしろ逆効果であると推定される。

2011-05-29 03:43:15
Kaameen @kaameen

【kaameenのコメント】 なぜならそれを裏付けるための計算は、楽観的と言うよりも、極めて非現実的な想定の下で組み立てられた架空のものであり、実績に基づく具体的データを保持しているはずの実施機関からは、具体的なデータがほとんど出てこない。ほとんど隠蔽されてきたといってよい。

2011-05-29 03:46:33
Kaameen @kaameen

【kaameenのコメント】 様々な団体が繰り返しこの情報の公開を要求してきた。公開される情報が、事実として推進派の主張を裏付けるものであったとしたら、原発反対派の重大な反対理由のひとつを崩すことができたはずだ。でも公開できなかった。公開すると推進派自身の主張が崩れてしまうから。

2011-05-29 03:49:29
Kaameen @kaameen

【kaameenのコメント】 放射性廃棄物の処理や廃炉を巡るコストについては、楽観的な前提を受け入れた筆者の試算においてさえ、推進派の主張には疑いが持たれることとなった。その後の技術開発で、環境経済的に望ましい修正が一部においては可能となった。

2011-05-29 03:52:36
Kaameen @kaameen

【kaameenのコメント】 しかし原発を巡り最も負荷がかかる作業は、資源採掘でも、輸送でも、発電でもなく、放射性廃棄物処理・廃炉に関わるものだ。そしてこの問題は今日に至るまで、何の解決もなされないまま、状況だけが悪化してきた。しかもこの問題が世界中で深刻化するのはこれからの話。

2011-05-29 03:58:24
Kaameen @kaameen

【kaameenのコメント】 私達は無責任に原発を導入することを通じて、その取り返しのつかないツケを子孫に先送りしてきたのであり、特に私達のなかの若い世代は、恐らく種としてその代償を負うことになる最初の世代となるだろう。そこには病気、遺伝障害、環境汚染、生態系破壊などが含まれる。

2011-05-29 04:01:24
Kaameen @kaameen

【kaameenのコメント】 この問題が私達の子孫に与える影響は、政府の財政赤字などとは比較にならないほど深刻で、解決困難なものだ。この状況を正しく想像することさえできれば、社会全体で電力需要を例えば半分や1/4などに減らしたとしても、取るに足らない問題であることがわかるはずだ。

2011-05-29 04:02:47
Kaameen @kaameen

【kaameenのコメント】 明日は〔放射性廃棄物の処分問題〕についてツイートします。もう馴染みのテーマとなりつつあるが、この問題が30年前からはっきりと危惧されていたシナリオがいよいよ現実となるなかで、私たちこの問題にが関心を向けてこなかったことが浮き彫りになるだろう。

2011-05-29 04:04:04
Kaameen @kaameen

【kaameenのコメント】 なお5章のなかで取り上げられていたチャップマンの文献を2つだけ挙げておく。これらの報告が刺激となり、世界中で様々な団体で、このテーマの調査に着手され、世界の原発論議に重大な影響がもたらされたのは文中で述べられている通りである。

2011-05-29 04:26:55
Kaameen @kaameen

【文献1】 P. Chapman & N. Mortimer, "Energy Inputs and Outputs for Nuclear Power Stations", ERG005, The Open University, Milton Keynes, UK, 1974

2011-05-29 04:39:11
Kaameen @kaameen

【文献2】 Peter Chapman, "Energy Analysis of Nuclear Power Stations", Energy Policy, Vol.3 (1975).

2011-05-29 04:39:19
kaameen @kaameen2

【kaameenのコメント】 「原発が化石燃料消費やCO2排出を加速させるのなら、どうして最初から化石燃料を燃やして発電しないのか?」と疑問を持つ人が多い。ここに抜粋した内容はごく一部なので、本書を通読し、また他の色々な資料を参照したうえでkaameenの受けた印象を補足したい。

2011-06-01 20:35:19
kaameen @kaameen2

【kaameenのコメント】 いかに馬鹿げたことであっても、そうした状況が成り立つだけの経緯さえあれば、その馬鹿げたことが罷り通るのが社会の現実だ。真実に迫るには、「社会は合理的なはずである」、「自分の知識は正しいはずである」といった先入観を捨てることが、しばしば重要となる。

2011-06-01 20:43:01
kaameen @kaameen2

【kaameenのコメント】 原子力工学がさほど進展していない初期の段階では、核エネルギーを電力に変えるというその画期的アイデアの元に、多くの希望的観測が抱かれたものと推測される。これはどんな技術においても科学者の持つ一般的傾向といっても差し支えないだろう。

2011-06-01 20:44:38
kaameen @kaameen2

【kaameenのコメント】 核兵器による世界の均衡の維持が図られた冷戦時代、特に米ソ両国においては、核エネルギーを利用する技術の開発が喫緊の課題であり、原子力発電の技術開発や実用化も、その国家的政策の一環として強力に推進された事情もあった。

2011-06-01 20:45:17
kaameen @kaameen2

【kaameenのコメント】 原発が日本に持ちこまれた経緯としては、日本人の反米世論や核アレルギーを抑え込みたいという米国の思惑に、日本側がうまく乗っかった形であったように説明されている。石油資源を持たない日本が経済発展を遂げるために有益であると期待されたこともあっただろう。

2011-06-01 20:45:48
kaameen @kaameen2

【kaameenのコメント】 だが研究開発が進むにつれ、環境経済的にも、経済合理性の面においても、割に合わないことが分かってきた。それゆえ1978年の時点で電力市場の自由化が行われたアメリカでは、それ以降新たな原発が作られなくなったのも自然の成り行きだった。

2011-06-01 20:46:16