エルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系の話( #えるどれ )~5世代目・中編~
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「えー?小さい頃、おとーはんがしてくれたで。アンググもや」 「私は子供ではありません」 「せやけど、もーワテより小さいやんかー」 「そういう問題ではありません」
2019-10-14 16:59:36なお、風の司は大渠から船作りの長の館まで、ずっと船乗りの腕に収まったままで、すれ違う水夫や大工、船客の男女から慎み深い好奇の眼差しを集めた。 「ひょっとして…根に持っているのですか」 「なんのことか分からへんなー」
2019-10-14 17:01:50船作りの長は深き谷の領主を迎え、暗い膚の船乗りとともに晩餐をともにした。香り草で味をつけた魚や果実、すっぱい麺麭、白い葡萄酒。 妖精と半妖精はさほど手をつけなかったが、まだ育ちざかりの若者はおかわりをしまくった。 「…いよいよ発つのだなオズロウ」 「えろうお世話になりました!」
2019-10-14 17:05:39「ともに行きたいが、私はここを離れられぬ」 「ええて!ワテまた戻ってくるわ!」 「嬉しいことだ…ロンドー。そなたは」 「オズロウとともにゆきます。谷は親族に任せてきました。もともと影の国へ発つ前に、万事の引き継ぎは済ませてあったのですから」 「そなたの目はオズロウにとって得難い補い」
2019-10-14 17:08:34三人は名残りおしげによもやまを話し合う。 「まことを言えば、そなたにはこの港にとどまってほしいが…かなわぬな…世界の良き匂いを嗅ぐと言ったが、まずどこをめざす」 「南!ラヴェインみたく海賊と会うんや!」 「海賊…南寇か…」
2019-10-14 17:12:07船作りの長は紅玉の指輪をそっと反対の手で撫でてからまた口を開く。 「例の女船には心せよ」 「あれなー。よー解らんけどワテそんなも興味ないわ」 深き谷の領主は尋ねる。 「女船とは?」 「南寇のうち近頃最も剣呑な船として知られている。女だけの船よ」
2019-10-14 17:14:22「女だけの船。何やら優しげな響ですが」 「それどころか。自ら戦をしかけはせぬが、西方人の軍船が近づけば火だるまにし、同じ宝を狙う海賊も容赦なく沈め、男はフカの餌、女はさらってゆくという」 「…女だけの船が?」 「噂では頭目は、大海賊隼と鶚の子孫とか…男を嫌い、女のみに心を許すと」
2019-10-14 17:17:39「ええ男をフカの餌は、もったいないわー。ワテらにはかかわりない話やけど」 「何とも…海は奇々怪々ですね」 「せや!むちゃ楽しみやなー!」
2019-10-14 17:19:09ついにオズロウは妖精の港を船出する。 後に残す大渠の街に滅びとか災いとかは特にもたらされなかった。 もしかして。 もしかしてだけど。 暗い膚のものが来ただけで何か起きるというのは迷信では?
2019-10-14 17:20:40ともかく旭あけ丸は南へ。 船と船を板でつないでできた千の帆の都へ。 そこで巡り合う。幼馴染と宿命の好敵手。 こっちがイケメンハーレムなら、むこうはイケジョハーレム。 ええ女だけを船に乗せる女船長、鳶(トビ)。 水と油の二人は、どのように交わるのか。
2019-10-14 17:25:42次回、「オズロウの世界ええ男いい男」シリーズ。 「イケメンハーレム船って言ってるけど実は一人だけ女乗ってるよね」 に乞うご期待。
2019-10-14 17:26:38次の話
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