地方自治体の表現ガイドラインを外部の議論で引用する意味 ~『宇崎ちゃん』論争を題材として

日本赤十字社の『宇崎ちゃんは遊びたい!』コラボキャンペーンへの批判を皮切りとした一連の論争で、 地方自治体のガイドラインを引用した一部主張がポスター批判側に見られる。 こうした主張がどこまで妥当なものか検討する資料として、関連するツイート群を各種資料と共に収録。
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弁護士 吉峯耕平 @kyoshimine

七原則の中で、一番重要なのは人道原則です。人道的活動のために赤十字が設立されたわけですから。他の原則は人道原則の手段として形成されてきたものでしょう。 献血事業も、まさに人道原則の具体化として営まれているわけです。平たく言うと、十分な血を集めないと、人が死ぬということです。

2019-10-17 21:39:16
弁護士 吉峯耕平 @kyoshimine

最初に挙げた、 ①社会一般の共通利益を目的とする(公益) ②金儲けを目的としていない(非営利) ③私有されておらず、公的な規律に服す(非私有) という3つの側面でいえば、これは①の公益性です。この公益目的の重要性には誰も異論がないはずで、私企業より手段を制限する方向は出てきません。

2019-10-17 21:45:23
弁護士 吉峯耕平 @kyoshimine

また、②非営利については、もちろん日本赤十字社は非営利の法人ですが(奉仕原則)、献血事業の性質とも関係します。 昔は日本でも売血だったのですが、金銭を介在させない献血に切り替えたという経緯があります。売血は安全性を確保できなかったのです。

2019-10-17 22:16:24
弁護士 吉峯耕平 @kyoshimine

なので、献血事業は徹底的に商業性が排除された世界です(おそらく渡すグッズの予算なんかにも上限がある)。 太田弁護士が引用する埼玉県GLは、性的表現を回避する理由として「性を商品化することにつながる」(曖昧だなぁ)ことを挙げていますが、献血に関しては商品化を考える必要はありません。 pic.twitter.com/TjtBEqUb7P

2019-10-17 23:39:51
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弁護士 吉峯耕平 @kyoshimine

以上要するに、日本赤十字社の「事業の公共性」とは、赤十字の基本七原則に沿って、人道支援事業(この場合献血募集)を全力で遂行するということです。 そこから、通常の私企業と比べて取るべき手段が制限されるような方向性は出てきません。 赤十字は役所じゃないのです。 twitter.com/kyoshimine/sta…

2019-10-18 00:13:05
弁護士 吉峯耕平 @kyoshimine

それから私がとても気になったのが、太田弁護士の「公益」の使い方なんです。 太田弁護士のいう「公益」は、彼女の言うことを聞くべき主体だというラベルに過ぎなくて、赤十字社の活動の意義とか、政府や自治体の「公益」との違いなんかについて、全く考慮がないのですね。

2019-10-17 19:35:01

以上、ガイドラインに関連する吉峯弁護士のツイートを引用。
詳細は次のTogetter記事を参照されたし。

まとめ 日本赤十字社は役所でも医療機関でもありません 「宇崎ちゃん」献血ポスター② 前回の続きです。 論点ごとにまとめたので、このまとめの中の時系列はバラバラです。 33191 pv 213 24 users

地方自治体のガイドラインをなぜ外部の議論で引用するのか? 吉峯弁護士らの疑問提起

献血ポスター騒動以前、遅くとも2018年10月には、埼玉県の表現ガイドは、公共の場における表現をめぐる議論で引用されていた。たとえば……

まとめ キズナアイに関する太田啓子さんと千田有紀さんの発言を切り取らずに全部まとめてみた 特定の発言だけ切り取られて批判されている印象はあるので、全体としてどういうことを言っているのかちゃんと確認してみました。足りない発言があるという指摘があれば追加しますのでおっしゃってください。 243830 pv 614 28 users 356
弁護士 太田啓子 「これからの男の子たちへ」(大月書店) @katepanda2

全く同感で、キズナアイを使うにしても違うイラストにする等の方法をとれたはず。なぜそうしなかったかというサイト制作者サイドの問題 t.co/wu30BH2Jbn

2018-10-04 08:45:18

弁護士 吉峯耕平 @kyoshimine

これ、みなさんどうして埼玉県のガイドライン(左)を引用するのか謎だったんだけど、国のガイドライン(右)と比べて、厳しくて都合がいいからなんだね。 国のガイドラインは「むやみに」アイキャッチャーにすることを戒めているに過ぎないし、結論は「効果的な表現を工夫しよう」という穏当なもの。 pic.twitter.com/z4uZxmDr0g

2019-10-21 13:13:39
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内閣府では,性別に基づく固定観念にとらわれない,男女の多様なイメージを社会に浸透させるため,公的機関が広報・出版物等を策定する際に,男女共同参画の視点を自主的に取り入れるよう,平成15年3月,「男女共同参画の視点からの公的広報の手引」を策定した…。

  • 内閣府男女共同参画局『男女共同参画の視点からの公的広報の手引』(2003年3月)

    単に目を引くためや親しみやすさを持たせるために、内容とは関係なく女性の姿や身体の一部を
    ポスターなどで使う場合がありますが、それでは伝えるべき内容が十分に反映された表現とは言えません。
    安易に女性をアイキャッチャー‥‥として起用せず、訴求内容と訴求対象に合った、より効果的な表現方法を工夫しましょう。

なお、この資料は内閣府HPで閲覧できないため、宇都宮市HPからの孫引きとした。

弁護士 吉峯耕平 @kyoshimine

埼玉県のガイドラインは、女性をアイキャッチャーにすること自体が「女性の尊厳を傷つけ、性を商品化することにつながります。」と非常に否定的。 女性をアイキャッチャーにすることを全面的に禁止すると取れる内容。 pref.saitama.lg.jp/a0309/hyougenn… city.utsunomiya.tochigi.jp/_res/projects/…

2019-10-21 13:20:44
弁護士 吉峯耕平 @kyoshimine

誰かガイドラインの内容比較しておいてくれないだろうか。 たくさんありすぎ……。こういうのに予算を重複して使うの、意味あるんかいな。 ilya.hatenablog.jp/entry/20151203…

2019-10-21 13:23:44

Agano 💫 while(1); @Agano

『第2-10-1表 「男女共同参画の視点からの公的広報の手引」の概要』 平成17年版男女共同参画白書 | 内閣府男女共同参画局 gender.go.jp/about_danjo/wh… pic.twitter.com/ui0iOHClpm

2019-10-20 09:50:35
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Agano 💫 while(1); @Agano

「男女共同参画の視点からの公的広報の手引」は、アイキャッチャーとして内容と無関係に女性を使わないように、という観点が示されているに過ぎず、「宇崎ちゃんは遊びたい」コラボレーションポスターはキャラクター本人なので当てはまらないとしか言えない。

2019-10-20 10:53:22
Agano 💫 while(1); @Agano

「男女共同参画の視点からの公的広報の手引」は、アイキャッチャーとして内容と無関係に女性を使わないように、という観点が示されているに過ぎず、「宇崎ちゃんは遊びたい」コラボレーションポスターはキャラクター本人なので当てはまらないとしか言えない。

2019-10-20 10:53:22
Agano 💫 while(1); @Agano

「男女共同参画の視点からの公的広報の手引」では、同時に『そうかといって、無難な表現で済ませてしまうと、印象には残らず、広報効果が十分あるとはいえません。』とも述べており、無難な表現とせず広報効果を狙うように促している。

2019-10-20 10:56:00
Agano 💫 while(1); @Agano

「男女共同参画の視点からの公的広報の手引」では、続けて『安易なアイキャッチャーに頼ることをやめると、「訴求内容は何か、訴求対象は誰か」という原点に立ち戻って効果的な広報表現を工夫する努力が必要になります。』と、ジンテーゼを提示しており、訴求対象に刺さる広報を肯定している。

2019-10-20 11:20:32

以下、まとめ編集者による私見。
太田弁護士をはじめとするポスター批判者からの説明がない以上、彼らが内閣府『公的広報の手引』を引用しない理由は憶測によるほかない。
吉峯弁護士が疑っているように、自らの論証に有利な資料だけを抽出したチェリー・ピッキングの一環である可能性は否定しない。
ただし、

  • 『公的広報の手引』は上述の通り2019年11月現在ネット上ではアクセスしにくい資料である点
  • 同資料は15年以上前に策定されたもので、内容が2019年現在の社会状況に対応しているか精査が必要と思われる点

以上の2点は、公平な検討・議論を期して念のため指摘しておく。

表現ガイドラインは女権擁護論の根拠たりうるか? 再び『宇崎ちゃん』論争から抜粋