ア㊙️イさんのお尻と学ぶドローン攻撃(更新中)
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開戦法規では合法な開戦事由が定められていて、現在合法とされている事由の一つが「正当な自衛行為」、すなわち「即座に、圧倒的で、手段選択の余地がない」場合を指すのだ。では中東諸国におけるアメリカのドローン攻撃は正当な自衛行為と言えるのか? (6/28)
2019-11-11 16:46:05これは(法)理論上の問題で、まだ決着が着いている訳ではないみたいだけど、「テロの脅威」への対処としてのドローン攻撃は、正当な自衛には当たらず、国家主権の侵害に当たるのではないか、という見解が法学者達から出されているのだ。 (7/28)
2019-11-11 16:46:05また、交戦法規のうちの陸戦法規では攻撃の実行に関して軍事/文民、軍事目標/民用物を区別し、文民や民用物への被害を最小限にする為にあらゆる措置を講じることが求められているのだ。ではドローン攻撃はこの規定を守っていると言えるのか? (8/28)
2019-11-11 16:46:06やっぱりこれも理論上の問題で、まだ決着が着いていないみたいだけど、ドローン攻撃によって生じている多数の民間人の犠牲を鑑みれば、ドローン攻撃は交戦法規に違反しているという意見が専門家から出されているのだ。 (9/28)
2019-11-11 16:46:06アメリカ政府はドローン攻撃の有効性や合法性を主張している訳だけど、人権団体や国際機関からは上記の点に関して批判されているのが実情なのだ。この研究では、そうした様々な見解がある事を利用し、サーベイ実験を行ったのだ。 (10/28)
2019-11-11 16:46:06この研究が提示しているクエスチョンをより具体的述べると、 市民は、 1)誰の(政府or人権団体or国際機関) 2)どんな観点からの(有効性or合法性) 3)見解(ドローン賛成or反対) を聞いた時にドローン攻撃に賛成/反対しやすくなるのか? と言った感じになるのだ。 (11/28)
2019-11-11 16:46:06この研究では、2013年にアメリカの成人の有権者約2400人を対象にオンラインでサーベイを行ったのだ(調査会社を通じているのでサンプルの代表性はある)。普通のサーベイ(社会調査)と異なるのは、そこに以前紹介したような実験的手法を組み込んだところなのだ。 twitter.com/bot99795157/st… (12/28)
2019-11-11 16:46:07この研究では、オンライン上で行われた世論調査の対象者(アメリカ人/白人)にランダムに2つのグループに分け、片方には「本物より白くしたオバマ」、もう片方には「本物より黒くしたオバマ」の写真をそれぞれ見せ、その後にティーパーティー運動への支持を聞いたのだ。 (3/6) pic.twitter.com/5LRhc2Qx8x
2019-04-30 00:08:57まず、調査対象者を計10のグループにランダムに振り分けたのだ。統制群(比較対象)以外の人々は、画像のように9つのグループに分けられ、それに応じた「見解」を事前に読み(これが実験刺激にあたる)、その後ドローン攻撃の賛否を問われたのだ。 (13/28) pic.twitter.com/e3LDTQ6b89
2019-11-11 16:46:10やや繰り返しになるけど、この実験から分かるのは、ドローン攻撃に関して 1)市民の意見を左右するのは誰か(政府/NGO/国連) 2)市民の意見はどんな「フレーミング(国際法/軍事的有効性)」に左右されるのか という事なのだ。 (14/28)
2019-11-11 16:46:11実験の結果まずわかったのは、政府による見解を読むと確かにドローン攻撃を支持する人が多くなるんだけど、その上昇幅はかなり小さかった(約1-2%)のだ。政府がドローン攻撃の合法性や有効性を主張しても、その結果としてドローン攻撃に賛成するようになる訳ではないみたいなのだ。 (15/28) pic.twitter.com/kZs0gBou4m
2019-11-11 16:46:13その一方で、NGOや国連によるドローン攻撃に対する否定的な見解を読むとドローン攻撃に反対する人が多くなる(6-8%)事がわかったのだ。また、図(再掲)からわかるように、ドローン攻撃の不支持により影響を与えたのは、有効性への疑義よりも国際法的な違法性だったのだ。 (16/28) pic.twitter.com/RjvE2kS6QA
2019-11-11 16:46:15ちなみに、「政府を信頼していないからこんな結果になったのでは?」という反論に事前に応えるため、この実験では各主体のドローン攻撃に関する情報源としての信頼度を聞いているのだ。図から分かるように、むしろ政府はかなり信頼されているのだ。 (17/28) pic.twitter.com/SKASN57qao
2019-11-11 16:46:16また、この研究では下記の手順で小規模なフォローアップのサーベイもやっているのだ。そこでは、「有権者がドローン攻撃のどんな側面に注目した結果、ドローン攻撃に反対しやすくなるのか」ということが問われたのだ。 (18/28) pic.twitter.com/mZ4i165iZD
2019-11-11 16:46:19実験の結果、人権団体によるドローン攻撃への見解を読むと、ドローン攻撃は ・道徳的に誤っている ・アメリカのイメージを損なう と回答する人が多くなる一方で、 ・ドローン攻撃は有効ではない ・代わりに特殊部隊を派遣すべき と回答する人が増えた訳ではなかったことがわかったのだ。 (19/28) pic.twitter.com/QsLMSBoyrp
2019-11-11 16:46:21加えて、最初の実験よりも実験刺激の効果が大きく、実験群ではドローン攻撃への支持が13%も少なかったのだ。単純な比較は出来ないけど、筆者達によれば実験群のワーディングを強めにした効果なのでは、と解釈しているのだ。 (20/28)
2019-11-11 16:46:21これら2つの実験結果をまとめると、有権者はドローン攻撃という軍事行動に関し、 ・政府の意見にはあまり耳を傾けず ・軍事的有効性よりも法的・道徳的な側面から その賛否を決定している可能性が示唆されているのだ。 (21/28)
2019-11-11 16:46:22ドローン攻撃とこうしたサーベイ実験を組み合わせた研究は他にもいくつか行われているんだけど、あえてこの研究を取り上げたのは、市民の犠牲とドローン攻撃の有効性に関する情報の効果を検証しているからなのだ。 (22/28)
2019-11-11 16:46:22これまで見てきたように、ドローン攻撃が対テロ作戦として有効かどうかは実証研究でも見解が分かれていて、未だ決着が着いているとは言い難い状況なのだ(新しいテーマだから多分まだまだ時間がかかる)。 (23/28)
2019-11-11 16:46:22もし一方の研究結果だけがフィーチャーされ、その結果としてドローン攻撃への支持/不支持が増してしまうとしたらそれはちょっと恐ろしいことなんだけど、この実験結果を見る限りはあまり影響しなさそうなのだ(じゃあ研究する意味は…?という疑問が生じなくもないけど)。 (24/28)
2019-11-11 16:46:23また、ドローン攻撃で生じた市民の犠牲の影響がフォーカスされるのは、現地での、つまり攻撃される側が大半だったけど、攻撃する側(の有効性)にも影響を与えうるというのはなかなか興味深いのだ。 (25/28)
2019-11-11 16:48:41つまり、ドローン攻撃による市民の犠牲は、新たなテロリストをリクルートしやすくさせる事でテロ組織を手助けすることになるかも知れないし、アメリカ国内での不支持の増加によってそもそも作戦の継続が難しくなる可能性が示唆されているのだ。 (26/28)
2019-11-11 16:48:41ただ、実験のデザインに関してはちょっと疑問があって、ドローン攻撃という文脈上仕方ないことだけど、政府/NGO/国連それぞれがドローン攻撃を支持/不支持するような情報を与えないと、情報の主体とその内容の効果の区別が出来ないんじゃないかなぁとも思うのだ。 (27/28)
2019-11-11 16:48:41今回の話は doi.org/10.1177%2F0022… からなのだ。 ちなみに著者の1人(Sarah Kreps)はコーネル大で教授をやってる女性政治学者なんだけど、 ハーバード(学部)→オックスフォード(修士)→アメリカ空軍→NATO→ジョージタウン(博士) という凄い経歴の持ち主なのだ! (28/28) pic.twitter.com/L0HOK2YMQF
2019-11-11 16:48:43「賛否両論のドローン攻撃:サーベイ実験による検証」として追加しておいたのだ〜。 ア㊙️イさんのお尻と学ぶ統計学 - Togetter togetter.com/li/1342003
2019-11-11 16:55:50