ギガベース日誌 ACT08「PHANTASMA BEING」01

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再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

DfJは、ブレードが振り抜かれるその瞬間に機体を回転させた。左腕部に装備するシールドの影に、機体のコアが隠れるように。 シールドは対実弾専用ではあるが、元々彼の使用する重量脚部は耐熱性が極めて高い。コアを火炎が包みこむその一瞬だけ、熱を側面へと逸らせば十分だった。 #ギガベース日誌

2020-01-14 04:33:12
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機体の全重量を乗せた蹴りをまともに受け、放射部を支える腕部が断末魔代わりの金属音を発する。 隙間を通すようにねじ込まれたバトルライフルの先端がコアへ向けられた刹那、ヒュージブレードの再噴射を推力として平石機は後方へ離脱する。 「萩原といい、お前といい……!!」 #ギガベース日誌

2020-01-16 02:21:25
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「どうして海軍にはネジが飛んだ奴が多いんだろうなっ!」 「貴様とて好みの筈だ!!」 重量二脚機からのブーストチャージの直撃を貰っているにも関わらず、平石の得物は未だ轟音と炎を巻き続ける。 「あぁ、本当に、本当にツイてるよ!!」 #ギガベース日誌

2020-01-16 02:28:04
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コックピットの中で、平石はかつてない満足感に支配されていた。 かの例外が、伝聞でのみ知る事しか許されなかった憧れが、自分という存在と平等に並び立っている。 何に使うのかと蔑まれながらも組み上げ続けてきた手製の狂気が、他ならぬ彼に脅威と見做されている。 #ギガベース日誌

2020-01-16 02:31:18
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打ち震えながら、追加の鎮痛剤を腿に突き下ろす。 コックピットの中の温度は人体が耐え得るボーダーを既に超えている。焼き尽くされた皮下組織が醜悪な芳香を放つ。 システムが落ちるのが先か。平石の命が終わるのが先か。一瞬過ぎった懸念を捨て去り、揺らぐ視界をモニターに戻す。 #ギガベース日誌

2020-01-16 02:38:27
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殺し合う2人が、まだ生きている。 だとすれば、命続く限り、相手の生命を終わらせる努力を続ける。戦場にそれ以上の礼は無い。 4度目の放射が始まった。これまでの攻撃で、DfJの生命線に成り得る遮蔽物の大半は焼き尽くされた。後退は、未だ活動中の艦娘を業火に晒す事を意味する。 #ギガベース日誌

2020-01-16 02:43:43
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「これでっ……!!」 「言っただろ」 迫りくる火炎放射から連続ハイブーストで逃れるDfJ機。それが突如、最大火力である筈のレーザーライフルを投げ捨てた。 「?!」 「終わってたまるかってよ!!」 #ギガベース日誌

2020-01-16 02:49:36
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負荷が低減され、僅かながら加速する機体。それでも、振り抜かれる刃はすぐそこまで迫っている。 DfJ機が放つライフルの弾丸。それが向かう先は平石の機体ではなく、地面を転がるレーザーライフル『LR-81 KARASAWA』だった。 #ギガベース日誌

2020-01-16 02:55:38
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ライフル弾によって弾き飛ばされ、地表を滑るKARASAWA。それが行き着いた果ては、今まさに旋回中だった平石機の脚部だった。 「まさかっ……!!」 尋常の手持ち武器ならば、地表を通過する際にブレードの放射による熱で融解していただろう。 #ギガベース日誌

2020-01-16 02:59:59
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しかし、その武器はまさしく例外だった。 それ自体が保持する規格外のエネルギーに滅ぼされないよう、耐熱に特化した特殊金属で組み上げられた名銃。 脚部に障害物をねじ込まれ、平石機の動きが一瞬静止する。既にブレードの可動域は使い果たしていた。 #ギガベース日誌

2020-01-16 03:03:18
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DfJを殺し切るための旋回が止まった瞬間、立て続けに放たれたHEAT弾が平石機の左腕部に直撃する。 容易く弾け飛ぶフレーム。コアへの狙いが外れたのか、平石がそう考えた瞬間、機体が平石のコントロールを離れ動き出した。 #ギガベース日誌

2020-01-16 03:07:06
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機体がヒュージブレードの出力を制御しきれていない。放たれ続ける蒼炎に踊らされ、反対方向へと回りだす機体。 そのまま自機が敵に背を向けた瞬間、平石はDfJが狙ったものと、己の敗北を理解した。彼は、姿勢制御用のバーニア側を狙ったのだ。 #ギガベース日誌

2020-01-16 03:11:13
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コアを狙える距離でそんな事をする理由は、ただ一つ。 彼は、自分を殺さずに、この死合を決着させるつもりなのだ。 曝け出された機体の背部から衝撃が伝わる。規格外の刃、その支えとなる遠距離エネルギー供給用の受信ユニットを撃ち抜かれたのだろう。 #ギガベース日誌

2020-01-16 03:14:14
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全てを焼き尽くす暴力の焔は、平石の夢と共にかき消えていった。 #ギガベース日誌

2020-01-16 03:15:39

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「あぁ、くっそ……コア回りの装甲が溶けかかってるじゃねえか……急げ!早くこじ開けろ!!」 「もう死んでるだろ絶対……よし、もうすぐだ」 外から彼の声が響く。 その行為の目的は明確だった。 #ギガベース日誌

2020-01-16 03:19:29
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狂宴は終わった。 平石を満たしていた熱は、死という冷たさへ平衡していく。 操縦桿を握る間は動き続けていた腕も、機体の停止に呼応するように、平石の意識から離れた。 「あぁ、やっぱりだ。バーベキューになっちまって……」 「よく見ろ。まだ呼吸してる」 #ギガベース日誌

2020-01-16 03:22:27
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ヘルメットのバイザーが叩き割られ、呼吸器系が平穏な外気に撫でられる。痛みも寒暖ももう感じられない平石だが、酸素の供給は発声を後押しした。 「あ、あ、ああ」 「よう平石。これから死ぬってのに悪いんだが、死ぬ前にアレの場所を教えろ」 #ギガベース日誌

2020-01-16 03:28:25
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「目一杯楽しませてもらったさ。だが、今の俺達はそれだけじゃ駄目なんだ。心底憎らしい状況だが、快楽の為の苦痛ってもんを受け入れなきゃならない」 ああ、やっぱり。 「侮辱と受け取ったか?でも俺は自分の為にいくらでも他人を踏み躙れる。俺より弱かった自分を恨んでくれ」 #ギガベース日誌

2020-01-16 03:36:35
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

「いい、さ」 人生の最期を最高潮で迎えられる程の人間が、どれほどいるのだろう。 企業。海軍。提督。全ての過去を捨ててまで見た短い夢は、これまでに得た何よりも素晴らしかった。 #ギガベース日誌

2020-01-16 03:40:22
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自分は死ぬ。 個人の死は本人にとって世界の終わりだと、死を目前にして実感が込み上げる。 ならばもう、何にも気を遣う必要はない。遅かれ早かれ、破滅は避けられない。世界に満ちる雰囲気がそう悟らせる。 #ギガベース日誌

2020-01-17 02:31:28
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でも、最後の最後で、この閉塞感を手放せるなら。 目の前の例外に遺せるものを押し付けてすぐ、男の人生は幕を閉じた。 #ギガベース日誌

2020-01-17 02:33:52

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「司令部より各艦に通達。う号標的の回収は完了し、リソースの回収量も今回の戦闘に際する消費を補填するに十分な量に到達した。展開中の艦は直ちに撤退せよ」 「グラーフ!誰かが居住区に攻撃してるぞ!!」 「おそらく鹿島だ。連れ戻せ」 #ギガベース日誌

2020-01-17 02:43:30
再す誕ふ者ん🍜🍬 @hfsm_ABIDING

既に落ちた佐世保から、新生ギガベース鎮守府の戦力が引き上げていく。 内陸側へ撤退していた佐世保の戦力は、艦載機隊とガングート率いる水上戦隊の徹底した攻撃により灰燼に帰した。 陸上で死亡した艦娘の死骸には例外なくPT小鬼群が植え付けられ、攻撃の証拠は消し去られた。 #ギガベース日誌

2020-01-17 02:51:38
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