エルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系の話( #えるどれ )~6世代目・その1~

やあ…また…なんだ。 エルフの女奴隷を受け継ぐ家系なのに男と男?があれそれしているが気にしないでね! ハッシュタグは「#えるどれ」。適宜トールキンネタトークにでもどうぞ。
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帽子男 @alkali_acid

「りゅう…どうして…あなたのおなかのなかは…命が叫ばないの」 "竜の腹はこの世で最も死の強い場所。命の叫びなど死の静けさに比べれば何ほどもないでおじゃる" 「…死…」 "命など皆喰らってしまえば死に、苦しみも終わる" 「でも…楽しみも…おわるよ…」

2019-11-22 22:49:33
帽子男 @alkali_acid

"麿は美味なるものを食べられて楽しいでおじゃる" 「たのしい…でも…死んだものは」 "死んだものは何も感じぬの。麿が楽しいだけでおじゃる" 「食べられて…死んだら…苦しみはおわる…食べたほうは…楽しい…」 "おっほっほ、そち、なかなか筋がよいでおじゃる。竜になってみるかの"

2019-11-22 22:51:14
帽子男 @alkali_acid

五色の竜は釜ごと暗い肌の幼児を吐き出すと鉤爪の生えた前肢でそっとつまんで巣山に連れ帰った。 炎で溶かして広げた巨大な洞穴に、二頭の翼ある黒竜がそれぞれ五つの卵を抱いてとぐろを巻き、帝の帰還を迎える后のように、甘えた咆哮を発した。なお気の弱いものが聞くと死ぬ。

2019-11-22 22:54:11
帽子男 @alkali_acid

"おっほっほ、カラ、ゴン、元気なようだの。あとでまた遊んでやるからの" "私からだ。私から" "私からだぞ"

2019-11-22 22:55:46
帽子男 @alkali_acid

象、麒麟、鯨に何やら得体のしれない獣まであれこれの骨が積み上げてある山の奥に、煌めく虹色の河を思わせる蛇身は潜り込み、溜め込んだ財宝を引っ張り出す。四つの珠。 “ちっさきものよ。出て参れ”

2019-11-22 22:57:33
帽子男 @alkali_acid

やつれきった子供が釜から転げ出た。 「きこえる…また…たくさんのくるしんでるこえ…」 “よいよい。それよりこの珠を喰らうでおじゃる” 「いのち…」 “麿が大昔に殺した四柱の竜の王の首下に生えていた珠でおじゃる。それぞれ激苦、激辛、激渋、激酸”

2019-11-22 22:59:40
帽子男 @alkali_acid

「いのち…おおむかしの…」 “麿には向かぬ味でおじゃる。だがそちは下々のものゆえ、舌も肥えておらぬ。ただ…前に竜の力を身に着けようと珠を呑まんとしたちっさきものは…爆発四散したのだったかの?” 「ばくはつ…しさん…」

2019-11-22 23:02:28
帽子男 @alkali_acid

“そうなったらそうなったで、もう命のわずらわしさから解き放たれるでおじゃる” 「…命…わずらわしさ…ときはなたれる…竜の珠…ぼく…」 童は珠の一つに近づき、貝殻の裏地のような光沢を持つ表面に小さな指を伸ばすと、そっと撫でて、やがて唇を近づけ、舌を伸ばして味見をした。 「おいしい…」

2019-11-22 23:04:24
帽子男 @alkali_acid

ダウバは完食した。一つではなく四つとも。 “おっほっほ。その珠はのオズロウの仲間の小人が、東の果てに祀ってあったのを盗んできたものでの。用がなくなったとか麿によこしたが食べるに食べられぬ故そこに転がしておいたでおじゃる。さて四柱の竜王の珠を呑んだちっさきものはどんな味がするかの”

2019-11-22 23:07:15
帽子男 @alkali_acid

ダウバは震え、うずくまり、また泣き出した。いや鳴いた。いや呻いた。 違う。 吼えたのだ。

2019-11-22 23:08:06
帽子男 @alkali_acid

男児は竜帝の煌めく尾にとびかかり、噛みついた。 “痛いでおじゃる~” 「ぐるるるる!!!う、ま、い!!」 コワイ!!!

2019-11-22 23:09:13
帽子男 @alkali_acid

敖閃にとってダウバは、 人間にとっての異常に獰猛な蚤か虱のようなものになった。 飛び回り、鱗を食い破り、全身に血を浴び、肉を齧る。といっても大きさに差があるので文字通り蚊が刺したようにしか感じないが。 “痒いのは嫌いでおじゃる” 尾でべしんとやろうとしてもかわす。

2019-11-22 23:11:58
帽子男 @alkali_acid

雷を落とし嵐を起こしても洞窟の隅に隠れてしまう。 そうして収まるとまた竜を餌食にしようとする。 “どっかいってたも” 不機嫌になった竜帝が、あたりを鳴動させ、虚空に罅を入れ始めると、敏捷に退き、何と二柱の竜后のどちらかの腹の下に潜り込む。

2019-11-22 23:13:49
帽子男 @alkali_acid

“カラ、ゴン、血を吸うちっさきものがそっちへ行ったでおじゃる。ぷちっとするでおじゃる” “ラヴェインの子の子の子だ” “マーリの子の子だ” ところが翼ある黒竜は庇ってしまう。

2019-11-22 23:15:20
帽子男 @alkali_acid

しかも感じの悪いことに、ダウバはカラとゴンには噛みつかない。あくまで敖閃ばかり付きまとうのだ。 “どうして麿ばかり狙われるでおじゃる” “一番うまそうだからだ” “そうだ” ありますよね。蚊が入って来ても一家の誰かだけ狙うやつ。あれ。

2019-11-22 23:16:37
帽子男 @alkali_acid

だがとうとう竜帝は童児をつまみ出すのに成功した。 “おっほっほ、面白きものになったが、しばらくはよそにいっておれ。麿は痒いのは嫌でおじゃる”

2019-11-22 23:17:56
帽子男 @alkali_acid

親元に戻された童児は、拒食を脱した。 死の縁から抜け出ると、猛烈な健啖ぶりを示した。 「うめ…うめ!うんめ!!」 「ダウバ…何やちょこっと感じ変わったんとちゃう?」 「んだ…オラ…腹へるだ…おっどお…もっど…くいでえ!」

2019-11-22 23:19:32
帽子男 @alkali_acid

父が野に建てた竈で食事の支度をしていると付きまとい、やがてじれったくなって手伝うようになる。家系の特徴で実に器用だった。すぐ調理のやり方を飲み込み、なんと親よりも巧みになった。 「ほわー…ダウバ…むちゃうまいわこれ」 「うんめ…うんめ…だども…たんね…もっど!もっど!」

2019-11-22 23:21:12
帽子男 @alkali_acid

「もっとって何や?量?味?」 「どっじも…どっじもたんね…オラいっぺえ食って、いっぺえ楽しくなりて…おっどおも一緒に楽しくさせてえだ!」

2019-11-22 23:22:34
帽子男 @alkali_acid

ダウバはすぐにひとりで料理を始める。材料も調達する。 草木の類はむんずと掴んで引っこ抜き、鳥獣の類はとびかかって仕留める。 「…どないしよったん。命とるの嫌がっとったやんか…もう痛い、苦しいて聞こえんの?」 「…えへ…えへへへ…オラ…いっぺえ聞こえるだ…だども死ねば止まるだ」

2019-11-22 23:24:25
帽子男 @alkali_acid

ダウバはめちゃくちゃに食いまくり、ぐんぐん大きくなった。 縦にも横にも。竜の珠を呑む前は、やがては線の細い美童に育ちそうな趣だったが、今や父祖バンダに似た、いやバンダ以上にむくつけき怪物になりそうな気配だった。

2019-11-22 23:26:15
帽子男 @alkali_acid

しかし困ったことが起きた。 ゴブリンが悲鳴を上げてオズロウに泣きついてきたのだ。 「お世継ぎが…おいら達を捕まえて食おうとするんでさ」 「誰かも食われよったん?」 「まだ…でもすぐにそうなりまさ…何とかしてくだせえ!」

2019-11-22 23:27:46
帽子男 @alkali_acid

黒の渡り手は、息子を呼び寄せて話をした。 「あんな。ゴブリンやオーガやトロルは食うたらあかんよ」 「…?なんでだ?」 「…何でって…影の国…闇の同胞(はらから)やし」 「なんで?同胞は食っちゃ…だめだ?」 「…んー…なんでやろ…せやかて、ダウバはおとーはんを食わんやろ」

2019-11-22 23:29:54
帽子男 @alkali_acid

少年はよだれを垂らした。 「…おっどお…うまそーだな」 「ほわー…ま、ワテは食ってもええけど。ほかはあかん」 「ワーグは食ってもいいだか?」 「ワーグは…どーやろ。ま、やめといてや」 「蝙蝠は?」 「んー…なしやな」 「夜馬は?」 「…んー…場合によるけど…基本なしや」

2019-11-22 23:31:34
帽子男 @alkali_acid

「野猪や野鹿はええだか?」 「ええよ」 「なんで、おっどおは猪や鹿はよくてゴブリンはだめだ?」 「…闇の同胞やて」 「猪や鹿は違うだか?」 「まあ、せや」 「どう違うだ?」

2019-11-22 23:33:12
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