- Yuusisaitou
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「持続」と「順序」とは
#映画やアニメーションの編集について #映画 映画の編集というのは「本来あったコマを切り貼りして再構築すること」である。 「A→B→C→D→E」という直線的時系列で記録されたコマがあるとしたら、A→C→Eという風に中間の出来事を間引いたりする。 またはDE→ABCという風に順番を変えることもある
2019-11-27 21:56:48小説の技法を語る「#物語論」はご存じだろうか。 この中に「持続と順序」というものがある。 映像編集はこの持続と順序の観点で考えるとわかりやすい。
2019-11-27 21:56:48まず「持続」から。 例えば「朝起きて学校に行く」という出来事があるとする。 この流れの中には「目を覚ます」「服を着替える」「部屋を出る」「朝飯を食べる」「支度をする」「家を出る」「通学路を歩く」「学校に着く」という動作が想定されるだろう。
2019-11-27 21:56:48物語では、これらをいちいち全部描写する必要はない。 なんなら登校中の風景からでもいいし、教室に入る場面から始まってもいい。 前述した「ABCDE」は「A=目を覚ます」「B=服を着替える」といった相対関係になる。この場合「動作H」まであることになる。
2019-11-27 21:56:48「持続」というのは、このA~Hの流れを"どのくらいの早さで描くか"という観点である。 目を覚まし、朝食を食べ、家を出る。これは「A→D→F」といった感じ。これを逐一丁寧に描写するなら「A→B→C→D~」となる。 持続というのは「叙述の速度」という観点である。
2019-11-27 21:56:49次に「順序」 これは言葉の通り、「出来事をどういう順番で語るか」 時系列順に語るならABC~となるが、例えば 「登校してみて、教科書を入れ忘れていたことに気づく。朝行った行動を思い返してみると・・・」 という風な叙述をすれば「E→BCD」という流れになる。 これが「順序」だ。
2019-11-27 21:56:49映画の編集というのは、この持続と順序の操作のことである。これは脚本の領域にも大きく関わっている。 優れた編集とは、映画全体のペースや、そのシーンで伝えたいムード等によって、適切な編集が施されているもののことをいう。
2019-11-27 21:56:49ここで例を見てみる。テレビアニメ「#カードキャプターさくら」の第一話と、#ジブリ の「#コクリコ坂から」の「主人公の起床、身支度シーン」である。 まずはCCさくらから。 pic.twitter.com/qBvfhX9omd
2019-11-27 21:56:54この二つ、どちらが優れているだろうか? 後述するが、自分的には「さくら」のほうだ。 だが、この部分だけで言えば実はどちらが特別優れているということはない。 表現したいことが違うのである。
2019-11-27 21:57:03「さくら」は、一話30分のテレビシリーズである。尺に余裕がないのでテンポが非常に早い。テレビアニメなので、難しい作画も出来ない。 「コクリコ坂」は二時間映画で、テレビと違って映像表現が命なので難しい細かな芝居作画が描かれている。
2019-11-27 21:57:03「さくら」は非常に簡潔で明解。服を投げる動作、髪を梳く、リボンを結ぶ、帽子を取る、といった動作のアップをリズミカルに刻み、部屋を出る動作もない。 一方コクリコ坂は、布団の中で動く、起き上がる、髪をはらう、布団を畳む、部屋を出るといった動作が細かく描かれている。
2019-11-27 21:57:03ここで考えたいのは、「各動作を独立して見た場合」である。 例えば「服を投げる」動作だけでは、「着替えた」とはわからない。次のカットで誰かがその服を受け止めれば「ただ服を誰かに投げただけのシーン」になる。 映像編集とは、観客に暗黙的に了解された部分が大きいのである。
2019-11-27 21:57:03自分が思うに、コクリコ坂のシークエンスは少し不自然だ。起きる、布団を畳む、髪をはらう、結ぶといった動作は細かく、持続の飛躍もない(ほとんどリアルタイム的な描写)のに、「スカートを拾う→髪を結ぶ」のところだけ省略が大きすぎるのである。
2019-11-27 21:57:03「さくら」では服を投げた後に制服を着ようとしてモゾモゾしてる動作が入っている。これならちゃんと「着替えた」ということがすんなり理解出来る。
2019-11-27 21:57:04余談だが、コクリコ坂冒頭のこの場面は、制作中にジブリの鈴木Pがコンテをフィルムのように流して実際の観賞感覚をチェックし「長すぎる」と言って全体の再生時間を少し早めている。 プロの眼から見てもちょっとかったるい(描写しすぎ)なのだ。
2019-11-27 21:57:04「さくら」の第一話は、個人的に最も完璧な第一話の一つだと思っている。脚本も演出も全く無駄がなく、完成度が非常に高い。この起床シーケンスも、各動作は基本アップで映し、歯磨きで水をガラガラするというちょっとばっちい動作はカメラが引いてるところがメリハリも効いていてチャーミングで面白い
2019-11-27 21:57:04一方コクリコ坂のほうは、監督の宮崎吾郎氏が元々素人上がりでまだ監督二回目ということもあって、少しぎこちない(映画自体はそんなに悪くないと思うが)
2019-11-27 21:57:04あくまで一部分、「持続と順序」についてだけだが、映画やアニメにおける編集の技巧や良し悪しは、こういう観点で語られる。長い歴史の中で培われたセオリーがある。編集に意識を割いて見てみるのも面白い。 #映画 #映画批評 #映画好きと繋がりたい #アニメ好きと繋がりたい
2019-11-27 21:57:05「場面転換」
#映画やアニメーションの編集について #映画 #映画批評 #映画好きと繋がりたい 映画編集の重要な要素である「#場面転換」について、「シーンの始め方」と「シーンの切り方」の注目し手法を列挙し解説しようと思う。 下のスレッドも参照されたし twitter.com/3mt84zj7jLIgWl…
2019-11-27 23:42:42映画において、場面転換はムードや観客の興味を引く重要な要素だ。シーンの始め方、切り方次第で面白くもなるし退屈にもなる。まず「シーンの始め方」についてよくある手法を紹介する。
2019-11-27 23:42:42・建物、風景の外観から(状況設定ショット・エスタブリッシングショット) ・人物がフレームインする(部屋に入る、車で到着する等) ・ドアを開ける(ノックからの場合も) ・物アップから(テレビの画面のアップが多い、金魚のアップ等、その空間にある無機質なものも)
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