編集部イチオシ

映画・アニメーションの編集術について

映画(アニメ)の編集の手法についてまとめました。
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

・会話の途中から(なんだって?や直前の相手の台詞を復唱する等聞き返しの形を取ることが多い) ・電話が鳴る、取る等外部からの報せから(電話+寝起きは王道) ・挨拶から(短い挨拶を入れ、次のカットではもう本題に入っている等) ・人物から少し離れた位置から(部屋の外から覗き見るような構図)

2019-11-27 23:42:43
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

次に「シーンの切り方」 ・人物がフレームアウトする(部屋から出ていく等文字通り退場する) ・ドアを閉める、シャッターを下ろす、カメラの前に物を置いて遮る(シャッター効果) ・特にきっかけもなく唐突に切られる

2019-11-27 23:42:43
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

次に最も重要な「補完的後説法」について。 これはレトリックでいう「奇先法」と同じ。 どういうことかというと、そのシーンで未解決事項をわざと残し、次のシーンでそれを明かすという「橋渡し」的な手法である。ルパンで例をあげよう

2019-11-27 23:42:43
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

銭形が一般人に聞き込みをする。 銭「この辺で怪しい者を見なかったか」 人「見たよ、アンタさ」 銭「?」 人「さっきも来ただろ」 銭「あっ」 そして次のシーンで、路地裏で脱ぎ捨てられた変装グッズを見つける銭形。 といったシーンのこと。

2019-11-27 23:42:44
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

前のシーンで観客に「ん?」と引っかかりを残し、次のシーンで種明かしをする。 観客の興味を引くのにとても有効な手法でこれが出来ているのと出来てないのでは面白さが全然違う。 シーンの切り方、始め方に連なったテクニックなので別にした。

2019-11-27 23:42:44
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

更にディゾルブ、ワイプ、白飛び、暗転といった処理も場面転換のムードに関わる手法だ。 男が夢を見て画面がホワワ~ンとなったり、銃で撃たれて真っ暗になったり、真っ白になったりといったこと。 「場面転換」は、物語の文脈を汲んで、適切な処理がなされなければならない。

2019-11-27 23:42:44
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

例えば、「#ゴッドファーザーでは「人物から少し離れた位置から」がいくつか見られる。 これは「近寄りがたい」という雰囲気を出すためのものだ。 ソニーの死をビトーが知るシーンは、部屋の外からトムを映し、カメラがゆっくりと入ってくる。 pic.twitter.com/jWTzuQusgG

2019-11-27 23:42:45
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

「あなたの息子が死んだ」という辛い事実をビトーに告げるための厳かな雰囲気が演出されている。 これが初めからトムの傍にカメラが居たらこの重苦しいムードは出ていない。#ゴッドファーザーPART2」でも、幽閉されて苛立ったケイをなだめるためにトムがやってくるシーンでこうした演出が見られる

2019-11-27 23:42:46
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

このように、場面転換は映画のムードを決めるのに非常に影響する要素だ。 そのシーンがどんな始まり方をするのか、終わり方をするのかに注目して見ると、演出の意図がわかりやすくなる。 #映画 #映画批評 #映画好きな人と繋がりたい

2019-11-27 23:42:46
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

また、単純に「シーンの前後でメリハリをつける」というテクニックがある。 街の喧騒から静かな部屋の中へ、明るい場所から暗い場所へ、昼から夜へといったことだ。 単純にこれだけで映画っぽくなる。それだけ映画の歴史で多用されてきたテクニックだからだ。

2019-11-27 23:42:47

「音」の編集

齋藤 雄志 @Yuusisaitou

#映画やアニメーションの編集について #映画 #映画批評 #映画好きな人と繋がりたい 映画の編集話、最後に「音の処理」について。 映画編集では映像の切り貼りとは別に、音をどう映像に同期させるか、ということも関わってくる。 本ツイートではその辺りを。 下のスレッドからの連続ツイート twitter.com/3mt84zj7jLIgWl…

2019-11-28 00:15:05
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

#映画やアニメーションの編集について #映画 #映画批評 #映画好きと繋がりたい 映画編集の重要な要素である「#場面転換」について、「シーンの始め方」と「シーンの切り方」の注目し手法を列挙し解説しようと思う。 下のスレッドも参照されたし twitter.com/Yuusisaitou/st…

2019-11-27 23:42:42
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

呼び方は色々あるが「音先行」「音こぼし」二つに大別する。 「音先行」は、場面転換の際に、次のシーンの音(会話等)が先に入ってくることである。 例えば「建物の画」に室内の会話が重なるといったこと。

2019-11-28 00:15:05
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

非常によく見られる手法なので「それって普通じゃないの?」と思われると思うが、考えてみれば、元々は「ビルを撮った画」「室内で撮った音声」別個のものなのである。 それをわざわざ被せて繋げる、これはスムーズに場面転換させるための編集者のテクニックなのだ。

2019-11-28 00:15:06
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

次に「音こぼし」 これは、そのシーンの音を次のシーンにも残すという手法。 分かりやすい例だとホラー等でよく見る女がアップで「キャーッ!」と叫び、その絶叫が次のカットの闇夜に響く・・・みたいなものである。

2019-11-28 00:15:06
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

音先行、音こぼしは当たり前すぎて普通に見てるとあまり効果が実感出来ないかもしれない。 が、実は非常に細かな処理がされているのが実情である。例えば #デビッド・フィンチャー の「#ゾディアック」のワンシーン

2019-11-28 00:15:06
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

殺人現場に到着した刑事が近所の家に聞き込みをする場面。 刑事が道路を歩いて家に向かって行く画に、既に「ノックの音」が乗っている。 次は「ドアが開くカット」。前述した「ドアを開ける」のシーンの始まり方だ。

2019-11-28 00:15:06
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

このように音の操作は他のテクニックと併用されて真価を発揮する。 ちなみに「#ゾディアック」は編集が非常に巧みな作品だ。ほぼ全てのテクニックが使われていると言ってもいい。上映時間がなかなか長く、派手な物語展開も特にないので、編集で興味を持続させる工夫を相当したことが伺える力作である

2019-11-28 00:15:07
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

#ゾディアック」の編集を担当したアンガス・ウォールはカーク・バクスターとタッグで歴代のフィンチャー作品を担当し「#ソーシャルネットワーク」と「#ドラゴンタトゥーの女」で二年連続オスカー編集賞を受賞した。 二年連続同じ人物が編集賞を獲るのは35、6年のラルフ・ドーソン以来二度目の快挙

2019-11-28 00:15:07
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

劇中で流れている音がどこから始まりどこまで流れているのか、他のテクニックとどう併用されているか、それがどういう効果を生んでいるのか。映画を見る時はそういったことも意識すると、より演出意図がわかる。 #映画やアニメーションの編集について #映画 #映画批評 #映画好きな人と繋がりたい

2019-11-28 00:15:07

実例分析「ノーカントリー」

齋藤 雄志 @Yuusisaitou

#映画 #映画レビュー 映画の編集技法の解説 をば。 #コーエン兄弟 の「#ノーカントリー」より。映画冒頭の殺害シーン。 掴まったシガーが警官の首を閉めスタスタと去るシーンである。 pic.twitter.com/tTaxNXYhkO

2019-11-28 03:35:22
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

まず本作の補足情報。 本作の編集はアカデミー編集賞にノミネートされ高く評価された。 編集者「ロデリック・ジェインズ」は、#コーエン兄弟 の変名である。つまり本作はコーエン兄弟自らが編集している。 これはハリウッドでは珍しい。

2019-11-28 03:35:23
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

このシーンは、極めて省略的に淡々と編集されている。 陰惨な殺害シーンをねっとりと見せた後に、後処理はサクっと済ませる「シーン前後のメリハリ」の技法だ。 まるで食器を洗うような理路整然とした血を落とすシーンで既にシガーの性格が表現されている。

2019-11-28 03:35:23