エルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系の話( #えるどれ )~6世代目・その4~

皆聞いて。ロズウェルは何かを隠してるんだよ。 ハッシュタグは「#えるどれ」。適宜トールキンネタトークにでもどうぞ。
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まとめ 【目次】エルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系の話(#えるどれ) 人間とエルフって寿命が違うじゃん。 だから女エルフの奴隷を代々受け継いでいる家系があるといいよね。 という大長編ヨタ話の目次です。 Wikiを作ってもらいました! https://wikiwiki.jp/elf-dr/ 21931 pv 167 2 users

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まとめ エルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系の話( #えるどれ )~6世代目・その3~ ※実際の人参と効果効能は異なります。 ハッシュタグは「#えるどれ」。適宜トールキンネタトークにでもどうぞ。 5728 pv 7

以下本編

帽子男 @alkali_acid

◆◆◆◆ この物語はエルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系のウハウハドスケベご都合ファンタジー。 今は六代目ダウバの話。いつでも腹ぺこの若者。 夢は一族に伝わるエルフの女奴隷を世界一おいしい料理にして食べること。 そのため世界一の料理人、料り手になる修行中だ。

2019-12-02 20:41:24
帽子男 @alkali_acid

世界中から腕利きの料り手が集まる東の果て、天子の国の大餐庁(グランドレストラン)で頂点を決める大会「味比べ」に参加し、見事優勝。 元始至尊厨師(アルティメットシェフ)の称号を得たが、まだ満足していない。

2019-12-02 20:43:05
帽子男 @alkali_acid

「オラ、まだ世界一の料り手になった気さしね。地の女王さみてえな料理さ作れるようになりてえ」 とこう来る。ダウバは竜が鎖につないでひっぱる船、竜曳船に乗ると、まだ見ぬ美味なるもの、そして料理の技を高める出会いを求めて東の果てのさらに先へと旅立った。

2019-12-02 20:45:33
帽子男 @alkali_acid

"おっほっほ、地の女王の料理とはどんなものでおじゃる?" 竜曳船の動力担当、竜の帝敖閃が頭上から尋ねる。 その気になれば世界を混沌に陥れるのもたやすい怪物なのだが、なぜかダウバとはうまが合い、二人旅、いや一人と一柱の旅には料理談義に花が咲く。 「オラが修行しとる時に聞いた話だど」

2019-12-02 20:48:06
帽子男 @alkali_acid

"聞かせるでおじゃる" 「天の国さ治めるおひさまの女王には、暴れもんの弟さおったど。暴れもんさ悪さがすぎで、国さ追ん出されて地の国さやってきただ。んで、腹空かしてうろうろしとったら、地の女王の家さたどりついただ」

2019-12-02 20:50:39
帽子男 @alkali_acid

「地の女王さ豆だの米だの麦だのいっぺこと出して暴れもんに食わせてやっただ。だども暴れもんさ、あんまり糧(かて)さ豊かなの疑ぐって、こっそり夜に女王の部屋さのぞいたら…そっだらことしてはいけねえとオラ思うだども…女王さ口やら尻やら何やらから五穀さ出しとっただ」

2019-12-02 20:52:54
帽子男 @alkali_acid

「暴れもんは汚えもん食わせたて怒って女王さ打ち殺したども…オラ、何も殺さねで誰かの腹いっぺえにできるなら、ええことだと思っただよ」 若者の言葉に竜は嗤った。 "おっほっほ。そうかの。麿ならその女王ごと食い殺すがの" 「んだか」 “美味なるものやもしれぬでおじゃる”

2019-12-02 20:55:38
帽子男 @alkali_acid

「だども、殺さねばずっと五穀さ出してくれるだ」 “飽きるでおじゃる”

2019-12-02 20:57:45
帽子男 @alkali_acid

そんなこんなおしゃべりをしていると腹が減って鳴る。 ダウバから奔雷のような音。敖閃から万雷のような音。 “何か食べさせたも” 「オラたちがいる雲の上さ命さあんましいね。おひさまさ強すぎるだ」 “太陽は鋭き矢を持つからの” 「んだ。草木も鳥も獣もたいていの命さおひさまがたよりだども…」

2019-12-02 21:01:39
帽子男 @alkali_acid

竜の帝は船が影を落とす雲海を覗き込む。 “おっほっほ。あそこには何か潜みおるがの。麿を怖がって姿を見せぬ” 「んだか…オラ行ってくるだ」 “おっほっほ。麿の分もちゃんととってくるでおじゃる”

2019-12-02 21:03:22
帽子男 @alkali_acid

暗い膚に尖り耳を持つ影の国の世継ぎ、黒の料り手は船縁に身を乗り出し、やけに気軽に雲の間に飛び込んだ。 「こんだけ腹さ減ってはろくに料理もできね…命さ奪って…命さつなぐ…オラさそういう生きもんだ」 若者の口が耳まで裂け、牙が覗く。滑らかな肌に黒い鱗が浮かび上がる。

2019-12-02 21:05:34
帽子男 @alkali_acid

幼少の頃、敖閃の気まぐれで、四つの竜の珠を呑んだダウバは、いざとなれば竜と人の間のようなかたちになることができる。 大変な力を発するが、代償がない訳ではなく、まずいつも腹が減る。 第二に、あまり長く変身していると激痩せしてしまう。

2019-12-02 21:07:43
帽子男 @alkali_acid

大餐庁で世界の料り手の頂点を決める大会「味比べ」に参加した際は、暴れて血を吸う人参のお化けを調理するはめになり、竜人となって皮むきや切り分け、煮込みなどの作業をこなさねばならず、結果としてかなり体重を失ってしまった。

2019-12-02 21:09:14
帽子男 @alkali_acid

したがって今のダウバは、長身痩躯。肌の色を覗けば、完全にエルフの公達、にしてはちょっと大きすぎるが、ともかく超絶美形である。 父オズロウは男らしい勇姿、曾祖父のラヴェインはどこか女らしい麗姿をしていたが、当代はどちらでもない中性の、夢幻のような面差しである。

2019-12-02 21:11:55
帽子男 @alkali_acid

だが黒の料り手の面差しはたとえ痩せている時でも、すぐ歪みを生じる。双眸の瞳孔は縦に縮み、額からは瘤が生じて、角が生える。髪は波うち、たゆたって稲光を発し、鼻から吐く息には火が混じる。 竜。 妖精と精霊に加え竜の力を宿した魔人は雲海のただなかで咆哮する。

2019-12-02 21:14:34
帽子男 @alkali_acid

厚い帳の中で何かがひきつったようにぎこちない動きをする。 烏賊に似たうねる肢を何本も持つ生きもの。竜曳船に劣らぬ大きさがある。 しかしダウバが虚空を突進するとまごつき後退しようとする。 怖いのだ。 捕食しようとする存在が。

2019-12-02 21:16:32
帽子男 @alkali_acid

大烏賊は恐らく、雲海の生きものでは最も強壮かつ獰猛で、より小さな命を貪るのに慣れていた。同族を除けば脅かすものなどいないはずだった。 とはいえ天のはるか高みを横切った竜の帝は、無敵のはずの生きものを怯えさせ、さらにずっと小さな、しかしよく似た何かも激しい畏れを齎した。

2019-12-02 21:19:23
帽子男 @alkali_acid

恐怖はある程度より複雑な命にとって、危険を避けるのに大切な感情だ。 故に多くの命が苦痛とともに恐怖を覚える心を持つ。 しかし過度の恐怖は、危険をかわすための行動を滞らせ、捕食する存在につけいる隙を与えてしまう。 だからこそ捕食する存在は吠える、脅す、力を誇示する。

2019-12-02 21:21:24
帽子男 @alkali_acid

竜吼(たつぼえ)は地上のほとんどの命を竦ませるが、雲海の命にとっても同様らしかった。 鈍い泳ぎ方をする大烏賊に追いついたダウバは鉤爪を伸ばし、牙を打ち鳴らして襲い掛かった。 やっと逃げるのを諦めた相手は船の檣(マスト)よりはるかに太い脚を蠢かせて応戦する。

2019-12-02 21:23:49
帽子男 @alkali_acid

決着はすぐについた。 「色々できっど。墨煮に、げそ焼きに、軟骨せんべいに…米さ欲しいだなあ…やっぱり地の女王みてえに尻から米出たら便利だど…」

2019-12-02 21:26:01
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