スターウォーズは今見るとつまらない?「新たなる希望」レビュー

「スターウォーズ 新たなる希望」のレビューです。ネタバレ注意。シークエルとの比較もあり
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

「この岩だらけの星からどこかへテレポートしてくれるといい」 「もし宇宙に中心があるならここはその一番外れの惑星さ」 サラっとこぼすこの台詞の切なさたるや。 エネルギー有り余る青年を取り巻く「現実」僅かなシーン、台詞で見事に描かれている。

2019-12-23 19:45:58
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

そしてレイアの救援メッセージが流れる。 「世界の最も外れの場所」「世界の命運がかかった戦いに巻き込まれる」このメリハリ、ギャップ数々の冒険物語で何度も繰り返されてきた鉄板モチーフである。 小説も映画も漫画もゲームでも、今でも使われている。 pic.twitter.com/5vZmfQBbPN

2019-12-23 19:46:00
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

若きルークにレイアのメッセージが仄かな野心を抱かせる。「綺麗な人だな…」3POのくどくどした解説を遮って「映像の続きはないのか?!」と囃す。この辺りの「食いつきっぷり」も性格描写が非常に上手い。

2019-12-23 20:34:00
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

次いで、家族の夕食シーン。 ルークの質問を全て否定し消極的な義父「今年こそ大学に行きたい」というルークに『あと一年待ってくれ。刈り入れ時はお前が必要だ』と言うしかし 「去年も同じことを言ったよ」と言いたまらず席を外すルーク。 この会話の展開もうまい。こんな残酷な話はない。 pic.twitter.com/aOMuvrtrof

2019-12-23 20:34:02
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

そして後に何度も繰り返されることとなる伝説の「夕陽のシーン」である。 このシーンが何故こうも伝説的なのか。 それはここまででルークの置かれた環境、悲壮感がしっかりと表現されているが故であり、その「無言の発露」だからである。 pic.twitter.com/5xncEtxHyA

2019-12-23 20:34:04
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

ここで流れる「フォースのテーマ」があれほど壮大なのは、ルークの鬱積した感情の発散シーンだからである。 本作をつまらないと言う方々はこのシーンで涙しないのだろうか?正直私にはそれが信じられない。 この名シーンを見ただけで「ハイこの映画100点!」というくらいの名場面なのだが。

2019-12-23 20:34:04
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

「新たなる希望」の第一幕は映画脚本のお手本のような完璧な構成だ。 きっかけとなる事件(レイア捕獲)を提示し、主人公のバックボーンを描き、後の展開への布石(オビワンへのメッセージ)もしっかり描いている。 ブレイク・スナイダーも「新たなる希望」の脚本はよくお手本として挙げている。 pic.twitter.com/qrAaBdXof8

2019-12-23 20:34:05
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

最近の若者には「マーベル」のほうが面白いというがマーベル映画こそこの「新たなる希望」の第一幕を無茶苦茶参考にしている典型例だ。 「過保護すぎる両親に(愛ゆえに)抑えつけられた若者」というのは「スパイダーマン」「スパイダーバース」でも未だに現役の鉄板シチュエーション。 pic.twitter.com/wxZmvUhWPn

2019-12-23 20:34:07
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

R2の脱走からひと悶着ありオビワンの素性とルークの秘められた過去を知る。「何者でもないと思っていたら偉大な血族の息子だった」少年漫画で散々繰り返されてきたモチーフ。これでワクワクしないわけがない。 pic.twitter.com/JS2zHZCrYW

2019-12-23 20:34:08
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

本作で少し残念なのはこの後の「襲撃された実家を発見」の後の、ルークのリアクションが薄すぎる点だ。ここは今見ると違和感がある。しかしここでメソメソしても無駄な時間だし、マーク・ハミルの目を伏せる名演で目を瞑りたい。 そしてルークは新世界に足を踏み出す。

2019-12-23 20:34:09
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

この完璧な第一幕と比べると、どうしても「EP7」の駄目っぷりが際立ってしまう。 襲撃シーンから始まりドロイドが機密情報を持って逃げ主人公と出会い旅立つ、という同じ下りでも込められた感情の熱量が全く違う。 「走ってコントしてアクションしてるだけ」だ。 pic.twitter.com/V4qSH5bukM

2019-12-23 20:34:11
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

ちなみに「新たなる希望」は当時のアカデミー賞監督賞、作品賞、脚本賞に軒並みノミネートされている。 内容に大きく関わるこれらの賞に軒並みノミネートされるのは確かな面白さがなければ不可能である。 残念ながらこの年はウディ・アレンの代表作「アニー・ホール」が掻っ攫っていってしまった。 pic.twitter.com/78udu1YSCG

2019-12-25 09:59:37
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

モス・アイズリーに着いてからはまたまた「人外祭り」 奇怪なエイリアン語が飛び交う有名な酒場のシーンだ。 ここでハンソロと出会う。ソロのダーティな性格がまたいい純朴なルークとの凸凹具合が面白い。これもEP7にはなかったコンビの妙だ。 pic.twitter.com/3uyThrGrXJ

2019-12-23 20:34:13
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

ここの台詞回しも素晴らしい。有名な「宇宙の果てまで12パーセク」やスピーダーを売った時の「XP38が出て値が下がった」といった台詞から人物の背後に広がる世界観を感じさせているpic.twitter.com/q9fjT3QBU8

2019-12-23 20:34:14
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

タトゥイーンを脱出するまでにも帝国の執拗な捜索描写がしっかり挟まれてる点に注目したい。常に緊張感がある。何故ならこの話は「大きな戦局の最終局面」なのだから。捕まったら全てが終わり、という最後の幕なのである。

2019-12-23 20:34:15
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

その間にデススターの脅威が描かれる。今でこそ欠陥住宅として有名だが、本作は本作なりに実はわりとリアリティのある描写がされている。 「原子炉まで繋がってる排気口」流石にお笑いだが、『そもそも大規模攻撃用の防備であり、小型機を軽んじている』という設定がちゃんと説明されいるのである。 pic.twitter.com/TAsNZpav5e

2019-12-23 20:34:16
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

それに、圧倒的な戦力差で相手を軽んじているという構図もちゃんと描写されている。 相手の本隊を後少しで叩けるという帝国の慢心が故の大逆転と言える

2019-12-23 22:05:21
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

「スターウォーズの脚本はガバガバだ」というのはよく聞くし私もそう思っていたが、改めて見ると「新たなる希望」に関してはそうでもないと思った。 「原子炉直結排気口」くらいのものである。ブレイク・スナイダーも「大きな嘘は一つまで」としている。 pic.twitter.com/w7kO9TGoKK

2019-12-23 20:34:18
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

タトゥイーン脱出後、デススターに捕まってから30分間、ずっと敵艦内でのスペクタクルだ。 敵に見つからないように変装し、ドロイド達と連携艦内を捜索レイアを助け出す。 助け出したレイアが男二人より強気なおてんばなのがまた面白い伝説となったトリオである。 pic.twitter.com/wtjTzUY6wD

2019-12-23 20:34:19
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

この三人の掛け合いの面白さたるや、全く意に介していない美女一人にちょっとイイと思ってる男二人という構図は少女漫画にも影響を与えたのではないかと思う。 この三人のテイスト、構図はそれこそ今までどのくらいの物語で真似されたかわからない。 pic.twitter.com/mLwW1C54zX

2019-12-23 20:34:20
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

ダストシュートでの一連のシーンでお気に入りのくだりがある。 3PO達が遠隔操作で間一髪のところで粉砕機を止めたところルークが「スリーピーオー!スリーピーオォォ~!!」歓喜の声を上げるのを3POが「これは悲鳴か…」と勘違いするシーンだ。 笑いもしっかり忘れないサービス精神。 pic.twitter.com/Q6KaDiuH0f

2019-12-23 20:34:22
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

改めて見て感じたのは、ここでもリアリティをそんなに疎かにしてないという点だ。 デススターに潜り込む際にはファルコン号の床下に隠れて装備を強奪しているし、実は撃ち合いも無理なものはしていない。 pic.twitter.com/KNBmtR7tTm

2019-12-23 20:34:23
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

ソロが「ウオーッ」と大袈裟に言って敵を追い返して、大群に追われ返されるシーンを見ても、無茶苦茶な構図での撃ち合いは決してしてないことがわかる。 ルークがレイアと崖を飛び越えるシーンもちゃんと背後の扉を下ろしている。 この辺りの「細かなリアリティ」も、シークエルには無かったと思う。

2019-12-23 20:34:23
齋藤 雄志 @Yuusisaitou

この間にダースベイダーとオビワンの師弟対決メンターの喪失が描かれ、ルークの運命がますます過酷になっていく。 基地に帰還後、出撃前に逃げようとするソロに当たるのも人間味があっていい。師を失い初出撃を前に不安な心境が見て取れる。これもシークエルの人物達にはない人間味だ。 pic.twitter.com/ZAibkEMsNY

2019-12-23 20:34:24
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齋藤 雄志 @Yuusisaitou

ルーク達がデススターから逃げおおせられたのにもちゃんとリアリティのある理由が設定されている。「わざと逃がして敵基地に案内させる」というものだ。 決してご都合主義だけではない。ちゃんと敵の思惑が敷かれている。 pic.twitter.com/UeJl3yAFjT

2019-12-23 20:34:26
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